「パッチギ!LOVE&PEACE」(2)
パッチギ!LOVE&PEACEに関する出版物が充実している。
映画鑑賞の余韻も覚めやらぬ中、いくつか読んでみた。
- 大谷 隆之, 佐藤 ヒデキ
- パッチギ!LOVE&PEACE ANOTHER STORY
登場人物のポートレート写真とサイドストーリー集。
とにかく具体的!
主要キャストの詳しい生い立ちはもちろんのこと、
キョンジャと交際中の先輩俳優、
所属芸能事務所社長、
かの大物映画プロデューサー、
果ては、江古田の居酒屋の店長(!)の細かい経歴まで出ている。
ディテールに徹底的にこだわっており、非常に面白い。
(CQN有楽町の壁に貼ってあったのはこの本だったか!)
また、作家の木村元彦氏、元Jリーガーの金鍾成氏を迎えての、
伝説の枝川サッカーについての対談も興味深い。
マニアックな一冊!
- 井筒 和幸, 李 鳳宇
- 愛、平和、パッチギ!
「パッチギ!」の世界をより深く知るため最適。
物語のモチーフとなったプロデューサー・李鳳宇氏の波乱万丈の半生の自伝的紹介、
井筒監督の作品へ託した熱い想いを綴ったモノローグ、
音楽担当の加藤和彦氏を迎えての対談等、実に盛り沢山な内容。
映画から、さらに奥へ踏み込んで、
1974年の時代背景、当時の在日を取り巻く状況をリアルに解説。
東大教授・姜尚中氏と李プロデューサーとの対談も機知に富んでいる。
特に、李氏の映画にかける情熱に感銘を受ける。
「意味のある涙を届けたい」というフレーズが心に残った。
非常におすすめ!
つづく。
「パッチギ!LOVE&PEACE」
日曜の午後、シネ・リーブル池袋にて鑑賞。
本日は、トークショー付き。
席は最前列、期待が高まる!
実は今日で二度目の鑑賞。
前回は、封切り当日有楽町で見た。
一作目も良かったが、今作も期待通り力のある映画であった。
むしろ今作の方が、強烈なメッセージ性を感じる。
不条理な差別・偏見・憎悪・暴力、過酷な運命。
在日コリアン受難の歴史・・・。
大体これまで、枝川を描いた映画があっただろうか?
枝川に朝鮮部落があったことさえ知らない人も多いだろう。
もっと早く、日本映画はこれをやらなければならなかった。
「痛みをともなう」などとは、こういうことを言うのである。
知らなければ、このまま歴史の片隅に埋没する道をたどっていた。
果敢にタブーに挑戦したシネカノンに拍手を送りたい。
それだけでも十分な価値がある。
ただ先日は、キョンジャ役の中村ゆりは日本人だと思って見ていた。
その翌日、新聞記事で、彼女自身も在日であることを知った。
カミングアウトには、おそらくは葛藤があったことだろう。
「ウチら何で朝鮮人なん?」
「朝鮮人なんかに生まれたくなかった!」
健気なキョンジャの、悲痛な叫びに胸が締め付けられる。
彼女は、どんな気持ちでこのシーンを演じたのだろうか?
そして、これは在日だけでなく、
決して出生を選ぶことのできない、全ての人間に向けたメッセージでもある。
日本人とは?国家とは?民族とは?人間とは?
考えずにはいられない。
笑わせて、泣かせて、考えさせる作品・・・。
井筒監督の真骨頂だ。
実に良い映画を観た。
上映後、主演二人の撮影裏話等あり、
最後にアンソン役の井坂俊哉氏と固い握手!
熱い一日であった。
