「患者本人と家族との話し合いが何より大切! しかし、家族の負担は想像以上に重い!


 昨日の続き。
この事件について、二つの問題点が考えられるのだが、まず、一つ目について述べたい。


 まず考えなくてはいけないのは、「患者本人と家族とはよく話し合ったのか」という点である。

 朝日の記事では深くふれられていないが、忘れてはいけないのは、「精神病院に入院させる家族」の負担は想像以上に重いということだ。

 精神病患者はその病気の性質上、「自分の病状を正確に把握したり、複数の治療方法の中から選択する」ことが難しいことが多いはずだ。
 そんな状況の中、患者の調子のよい頃合いをはかって、なんとか病状を客観的に説明しようとすることの辛さはご理解いただけるだろうか? 精神病は調子のよいときと悪いときの波が多少なりともある。

 悪い状態が長く続くから入院が必要となるのだろうが、悪い時ほどこちらの本意は患者本人には伝わりにくい。
 だから、本人が少しでも落ち着いている時間帯を狙って話をしようとする。
 しかし、家族は患者の元気な姿を知っているだけに、「きっとこの調子で明日にはよくなるはずだ。家族の愛情があるのだから、治せる。入院の話などして逆に悪化させては大変だ」と考え、口を閉ざしてしまう。

 私が家族の入院を医師や保健所に相談したとき、繰り返し念を押されたのが「本人の意思を確認してください」ということ。本人が納得して入院しなければ、治療効果が上がらないという話だった。

 でも、本人が病気でやられてしまっていて、発症前のような冷静な判断ができない状態である中、どうやって「本人の意思」を確認すればよいのか!

 私の場合、結局は、「あなたの病気は家庭で対応できる範囲を超えている。このままでは家族全体が壊れてしまう」と正直に打ち明けるしかなかった。「本人の意思」というよりも、「本人に納得」してもらうだけで精一杯だった。


 この記事では、両親が荒れ狂う28歳の息子とどのような話をしたのか明らかではない。
 家庭内で暴力が伴う状況では、まともな話ができる状態だったのではないかもしれない。だから、私は被告の父親を責めることなどしたくない。

<まだまだ、つづく!>