Q 業務災害により労災保険給付を受けた社員から、慰謝料を請求されました。応じなければならないでし | SUPPORT SOURCING

Q 業務災害により労災保険給付を受けた社員から、慰謝料を請求されました。応じなければならないでし

Q 業務災害により労災保険給付を受けた社員から、慰謝料を請求されました。応じなければならないでしょうか。


 労働基準法では、労働者の業務災害について一定の災害補償義務を使用者に負わせています。これは使用者の無過失賠償責任主義によるもので、業務災害である限り、使用者は災害補償をしなければなりません。

 しかし、どの会社も経済的に補償できるわけではありません。そのため、上記の無過失賠償責任の履行を担保する目的で、労災保険が存在するわけです。

 労働基準法第84条は、労災保険法に基づいて労災給付されるべき場合には、その価額の限度において使用者は民法による損害賠償の責を免れるとしました。つまり、民法の損害賠償と労災給付がイコールであれば、労働者の損害が全て補償されるのですが、以下に掲げるものについては補償されません。
・被災労働者の精神的苦痛に対する慰謝料
・休業3日間までの休業補償
・労災給付で補償されない休業補償

 したがって、業務災害の発生について民事上の帰責事由がある場合は、労災給付と実際の損害額との差額について、被災労働者から民事上の損害賠償を求められる場合があります。

 民事上の帰責事由については、不法行為に基づく場合と債務不履行に基づく場合があります。
 不法行為に基づく責任は、
・一般不法行為責任
・使用者責任
・注文者責任
・土地工作物の瑕疵責任
があります。この中で圧倒的に多いのは使用者責任です。
 債務不履行に基づく責任は、安全配慮義務違反があります。
 
以上のように、使用者側に民事上の帰責事由があれば慰謝料の請求に応じることになります。一般的には示談となりますが、成立しなければ裁判となります。