ほかに考えられるのは盗聴だ。自分の携帯電話では無い。
ドイツでGSM通信法式の携帯電話の盗聴に成功したが日本はPDC法式だ。それに近年の携帯電話のモデルチェンジも頻繁な上、スマートフォンの拡がりもある。端末に直接仕込むなら別だがそれは考えづらい。
『あけぼの会』の電話に仕組まれていたと考えて良いだろう。
だが、目的が解らない。リストだろうか…。電話を盗聴するならば、室内にも盗聴器を仕掛けている可能性が高い。
工藤と自分の会話を聞きリストの存在を知ったのか…。だが、そこまでする連中ならば目立つ真似をするより、忍び込んで盗む方がリスクが無いだろう。
確実な事は、連中は自分を挑発しているということだ。

「ええぃ。ままよ!」

室田は、尾行者達の挑発に乗る事にした。
室田が尾行に気付いたのは、『あけぼの会』を出てすぐだ。
岩崎に連絡を入れた後、駅へ歩始めると、背後、そして車道を挟んだ向かいに一人、自分を尾行している。
ただの素人故に、尾行に気付かれる間抜けならばそこまで気にする事は無い。だが尾行者達は自分達の存在を始めから隠すつもりは無い様子だった。そしてその身体から発せられる雰囲気は決して素人の物ではない。
プロの持つ空気…。離れた場所には不測の事態に備えて一人か二人は待機しているだろう。自宅も既に知られているかも知れない。
そして室田が気になるのは自分を尾行する動機、そしてどのように『あけぼの会』に自分が居た事を知ったかだ。
尾行者達は、予め『あけぼの会』から自分が出て来るのを待って居た。刑事である自分が、尾行されている事をそれまで全く気づかなかったとは思えない。
工藤が雇った?だが尾行を付ける程自分を信用しなかったのなら、最初から殉職者リストを渡しはしないだろう。
あの光景がまた頭に浮かぶ。
町の中、太陽の光を浴びる乾燥した大地に真っ赤な花が咲き乱れている。
その真っ赤な花からは、これも又真っ赤な蜜が止めどなく流され、乾燥した地面に拡がっている。
他の色は無い。赤色だけの花畑。
時折吹く乾いた風は、砂の匂いと味以外に、花と花の根、茎から発せられる香りを鼻腔に運ぶ。
その香りは錆びた鉄と糞尿の匂い。
そんな花畑を作り出した男達の腕にはアサルトライフルが握られている。
男達の顏は、充足感に満ちていた。
その後、俺は新たに赤い花を増やしたんだ。
さっきまで嬉しそうにしていた男達があっというまに赤い花に変身した…。
その後、グアンタナモから中国、日本に来てからも赤い花を咲かせて来た。
あの犬は思っていたより早く俺の前に姿を見せた。
あいつはどう思っているのか…。
壊れているのは俺か?あいつか?それとも…。
眠いな。
今日、刑事があの死に損ないの所へ来たらしいから俺の周りは騒がしくなるだろうなぁ。
又、赤い花を作るか…。
あー、瞼が重くなって来た。
まずはゆっくりと眠るとしよう。