最近、ちょっと面白い脳科学の研究者がいるのを知りました。
Western Sydney UniversityのDr. Denise Moerelらが研究しているのは、
人と人が一緒に何かをするとき、
二人の脳の中で何が起きているのかというテーマです。
特に興味深いのが、二人の脳を同時に測定する「ハイパースキャニング」という方法です。
二人に同じ課題をやってもらい、それぞれの脳活動を測定する。
すると、一緒に学習した人たちほど、時間が経つにつれて、
脳の中で情報が表現されるパターンが似てくることが分かってきました。
もちろん、「二人の脳が完全に同じになる」という話ではありません。
でも、最初は別々だった二人が、一緒に考えたり、判断したり、
経験を積んだりすることで、同じ情報に対する脳の反応が近づいていく。
仕事でも思い当たることがあります。
長年一緒に仕事をしている人同士だと、
「これはちょっと危ない案件だな」
「このお客さんは、たぶんこう考えている」
「この状況なら、次はこれが来る」
と、いちいち説明しなくても分かることがあります。
単に経験を共有しているだけなのか。
それとも、本当に脳の中の情報処理の仕方まで似てきているのか。
ここは、これから研究が進んだら面白そうです。
さらにMoerel博士らは、じゃんけんのような競争場面で、
勝った人・負けた人の脳が、
過去の結果をどのように利用して判断しているのかも研究しています。
人間は、完全にランダムに判断するのが意外と苦手です。
「さっき負けたから、今度は違うものを出そう」
と考えてしまう。
つまり私たちは、過去の経験にかなり引っ張られているわけです。
そして、空腹時と満腹時では、
食べ物を見たときの脳の情報処理まで変わるという研究もあります。
同じラーメンの写真を見ても、
「腹が減っているときのラーメン」と
「昼飯を食べた直後のラーメン」
では、脳にとっては同じラーメンではないのかもしれません。
こうして考えると、人間の脳ってかなり面白い。
私たちは「自分の意思で考えている」と思っていますが、
実際には、相手との関係、過去の経験、そのときの身体の状態、
周囲の環境などに影響されながら判断しています。
そして、その結果として、長く一緒にいる人とは、
少しずつ「同じ世界」を見るようになっていくのかもしれません。