興味深いニュースが流れています。
タイのセッター内閣。どうやらロシア人旅行者を優遇する政策を実施するようです。
それは、ロシア人観光客へのビザ免除。タイはこれまで、観光目的でタイに入国するロシア人にはビザの事前取得を免除し、タイ入国時に30日間の滞在許可を与えていました。それが11月1日から、一気に90日に延長されます。
※日本人も、観光目的であればタイ入国時に30日間の滞在許可がおります。
この背景には何があるのでしょうか。
結論を先に申し上げれば、それは「観光産業の収益向上」のため。ウクライナを侵攻しているロシア政府を支持する意図はなさそうです。
実は、中国人観光客の来タイが伸び悩んでいます。コロナ禍を経てタイに観光客が戻ってきているのに、中国人の来タイ者数が予想通りには増えていないのです。これは、中国経済の低迷も理由のひとつですが、タイ国内で、中国人旅行者、留学生をターゲットとした身代金目的の誘拐事件、詐欺、ボッタくり行為がまん延していることも大きな理由です。
そこへ、10月3日に発生した14歳少年による高級デパートでの無差別殺人事件。
双子の母親である35歳の中国人観光客が犠牲になったことから、タイの治安を不安視する中国人が急増。大量の渡航キャンセルにつながっています。タイ政府観光庁は、発砲事件前は650,000人中国人観光客が来タイ予約をしていたのに、事件後の10月14日時点で、それが590,000人まで急減したと推測しています。
そこで、タイ政府が次に狙ってきたのがロシア人観光客の呼び込みなのです。
タイを訪れるロシア人旅行者は近年急激に伸びており、今年は8月末時点で約92万人超。これは、マレーシア、中国、韓国、インドに続き、5番目の多さです。しかも、ロシア人がタイに落とすカネは、インド人旅行者よりも多い。さらに、ウクライナ侵攻の影響で母国を長期に離れるロシア人が増加していることで、タイが格好の逃避先になっているのです。