麻薬対策の教育施設(タイ) | 「アジアの放浪者」のブログ

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タイ法務省の外郭組織「薬物統制委員会事務局(ONCB)」が、国連の「薬物犯罪事務所(UNODC)」の支援を得て、薬物対策の教育・研究機関を設立しました。その名も、「International Narcotics Control College (INCC、国際薬物統制カレッジ)」。ONCBのウィチャイ・チャイモンコン事務局長(写真左)と、ジェレミー・ダグラスUNODC東南アジア・太平洋地域事務所代表の間で、合意書が取り交わされています。

 

 

施設建設はこれからですが、設置される場所は、タイ北部チェンライ県のチェンセーン郡。大量のケシ栽培で知られている「ゴールデン・トライアングル」の一角にある街です。ここに、タイ王室系財団法人「メーファールアン財団」が運営している「アヘン博物館(Hall of Opium)」があるのですが、今後このアヘン博物館の敷地内に、同カレッジ施設が建設されます。

 

同カレッジでは、最新鋭の手法を用いての ①情報収集・分析 ②国境警備・密輸対策 ③麻薬生成に用いられる化学物質 ④麻薬対策のための法律・政策立案 ⑤地域の麻薬状況の研究 などについて学べることになるようです。チェンセーン郡はメコン川を挟んでタイとラオスの国境沿いにある街ですから、国境警備や密輸対策に関し、かなり実践的な学習の場になると期待されています。

 

カレッジ兼研究施設の運営費用に関して、ウィチャイ事務局長はこう述べています。

「UNODCから援助を受ける他、韓国、オーストラリラ、ニュージーランド、サウジアラビアからも資金提供を受ける。また、タイ国内で没収した麻薬関連資金の一部も、運営費用に充当される予定だ」。

 

カレッジ施設は来年には整い、本格的に始動する見込みです。

 

最近、東南アジアで麻薬使用が急増しています。

コロナ禍で人々が家にこもり、SNSなどでコミュニケーションを取る機会が増えたことにつけこみ、麻薬密造・密輸組織が売上を伸ばしています。それに加え、2021年2月に国軍が起こしたクーデターにより、実質的に内戦状態に陥ったミャンマーでは、麻薬取締が滞っていることも大きな問題です。

 

アジアで麻薬密造が急増、コロナ禍にもつけ込む 国連報告(1/2) - CNN.co.jp

 

国際薬物統制カレッジ。

東南アジア諸国の法体系整備はもとより、捜査官の資質向上や常習者の更生に関する研究などに、大きく貢献してもらえることを願っています。