カンボジアも総選挙が行われます | 「アジアの放浪者」のブログ

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タイの前進党から首相が選ばれなかったことで、笑いが止まらないのが隣国、カンボジアのフン・セン首相。

カンボジア国内の民主派の台頭を、司法を操って抑圧してきましたが、タイの首相に先鋭的な前進党党首が就任したら、カンボジアの民主派も勢いづくのではないか、とハラハラしていたようです。

※カンボジア政治に「三権分立」という実態はありません。実質、フン・セン首相の独裁です。

 

そのカンボジアも、明日(7月23日)総選挙が実施されます。

国民議会(下院)125議席が争われるのですが…。有力野党である「ろうそくの灯党」が、フン・セン首相の意を汲んだ中央選挙管理委員会の判断によって、総選挙に参加できなくなりました。これにより、フン・セン首相が率いる「人民党」が、全議席を得るだろうと予測されています。

 

フン・セン首相は、民主的な選挙であることを主張するため、支持基盤が脆弱な政党からの立候補は容認しています。しかし人民党候補に太刀打ちできる力はなく、下院の議席はすべて、人民党によって占められることでしょう。前回2018年の総選挙でも、同様の手口が使われ、有力野党が司法判断によって解散させられました。その時の総選挙も、人民党が全議席を確保しています。

 

38年もの間、首相の座にあるフン・セン首相(70歳)。

どうやらそろそろ、政治基盤を長男であるフン・マネット陸軍総司令官(45歳)に移譲するようです。フン・セン首相自身が、総選挙後に長男を首相にすることを宣言しています。首相なのに、まるで王位の禅譲のようですね。カンボジアにも国王陛下がいるのですが、実質的にお飾り状態です。

 

フン・マネット陸軍総司令官(陸軍中将ながら陸軍総司令官)は、1995年にウェスト・ポイント(米国陸軍士官学校)に留学。1999年5月に卒業したあとは、ニューヨーク大学で教養学修士、さらに英国の名門、ブリストル大学で経済学博士号を取得しています。民主主義国家での生活経験も豊富なのです。

【7月23日追記:フン・マネット陸軍総司令官は、2023年4月20日付けで大将に昇進しておりました。たいへん失礼いたしました】

 

このことから、フン・マネット氏が首相に就任したら、カンボジアの民主化が進むのではないか、と期待する向きもありますが。父親であるフン・セン氏が院政を敷くでしょうし、大国中国の影響にも忖度しなければなりませんから、短期的には大きな期待は持てません。

 

選挙に参加する道を絶たれた野党側。

選挙へのボイコットを国民に訴えていますが、フン・セン首相率いる人民党は、「棄権を呼びかける人物には罰金を課し、投票しなかった者は次の選挙での被選挙権を失う」と法改正をしています。

 

独裁体制の強化に余念がないフン・セン首相。

欧米の支援抜きでも、中国からの投資を得て経済は活況。また若い世代が多いことから(つまり、安い労働力が豊富であること)、日系企業も次々と進出しています。こうした経済中心の行動も、フン・セン首相の強気につながっているのです。なんだかなぁ、というやるせない気持ちが消えません。

 

下の写真は、支持者に手を振るフン・マネット氏。Bangkok Post電子版からの転載です。

※当初、こちらの写真をフン・セン首相としておりました。間違いです。お詫びとともに訂正いたします。