ゾウの空輸、成功 | 「アジアの放浪者」のブログ

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20年ほど前に、国際親善の目的でタイからスリランカに寄贈された雄ゾウ、「サク・スリン」。

6月29日にこのブログでも記事にしましたが、足のケガがなかなか治らないことから、タイに帰郷して治療に専念することとなりました。

 

タイ生まれのゾウの帰郷 | 「アジアの放浪者」のブログ (ameblo.jp)

 

7月2日。

スリランカのコロンボから、タイ北部チェンマイまで無事に空輸できました。なにしろ重さ4トンのゾウですし、機内で暴れてバランスを崩したらたいへんなことになりますから、事前準備、訓練は慎重に行っていたようです。ゾウは視力は弱いのですが、聴覚はたいへん鋭く、そのため航空機のエンジン音に拒否反応を示すことが懸念されていました。いずれにせよこの一大プロジェクトが無事に終わって、まずはひと安心。

 

無事に帰国したゾウ、サク・スリン。

現在ランパーン県にあるエレファント・キャンプで、30日間の「検疫隔離」を過ごしています。ゾウにも独特の感染症があるようです。

 

ただ、タイ社会をちょっと賑わせていることが。

健康状態を診断した獣医師が、サク・スリンは左前脚をまげることができず、また左右の臀部にも膿瘍があるということを発表。そのためスリランカ側が、サク・スリンの治療を十分に行っていなかったのではないか、という疑念が一気にふくらみました。

 

しかしスリランカ側が治療を怠っていたのかどうかは、わかりません。

前政権が積み上げた膨大な国の債務が返済できなくなったことや、新型コロナの影響で物価が急騰したことなどから、昨年7月に破産宣告をしたスリランカ。そうした経済状態が、サク・スリンの治療に影響を及ぼしたとしても、驚くことではありません。仮に治療が十分でなかったとしても、それは意図的なものではなく、治療に回せる財的資源、医療資源が乏しかったからだと思います。でも、たとえそんなひっ迫した事情があったとしても、タイ国民としてはスリランカによい思いを抱けることにはなりません。こうしたことが積み重なって、他国への印象が固まっていってしまったら、それはとても残念です。

 

タイ国民の同情を一身にうけているサク・スリン。

ここでタイ国王、マハー・ワチラロンコーン陛下が動きました。サク・スリンの治療費を、王室が負担すると発表したのです。タイのチャクリ王朝第10代国王として、2019年5月に即位した同陛下。国民からの人気は…?でありますが、サク・スリンへの支援表明は、国民に好印象をもってもらいたいと願ってのことかも知れません。

 

スリランカとの2国間感情、国王と国民の2者間感情。

いろいろと派生していますが、なにはともあれ、サク・スリンの回復を願っていくことといたしましょう。