アセアン焦る、ミャンマー読み違える | 「アジアの放浪者」のブログ

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昨年2月にクーデターを起こし、スーチー氏率いる民主政権を転覆させたミャンマー軍政。

総選挙の不正、民主政権幹部の腐敗を国民に訴えることで、比較的容易に実権が握れるだろうと判断したようです。

 

しかし実際は、軍の主張は事実ではないと国民の多くが受けとめ、青年を中心に反軍政の動きが活発化。それまで国軍と対峙してきた少数民族と結託し、市民防衛軍まで組織されています。

 

 

現時点では国軍が優勢ですが、市民防衛軍を含む民主勢力だって反転攻勢の機会を狙っているようです。ミャンマー国軍に武器弾薬を供給してきたロシアが、ウクライナでの戦争によって軍事備蓄を費やしているようですから、ミャンマー国軍の弾薬庫だって在庫が減少しているはず。

 

一方中国政府は、軍事政権との距離間をどのようにとるか、たいへん苦心しているようです。

中国政府の立場では、ミャンマーはインド洋と中国を結ぶ地政学的にたいせつな国。地下資源も豊富ですから、ミャンマーとは友好関係を保ちたい。しかしあまりにも露骨に軍政に肩入れしたら、将来ミャンマーが再び民主化した際に大きなしっぺ返しをくらいそう。このジレンマがあるゆえに、中国政府の態度は慎重です。

 

ところで、ミャンマーのようなケースで紛争の調停役が期待されるアセアン(東南アジア諸国連合、加盟10カ国)。

クーデター発生後、すぐさま調停に動き始めました。その結果軍政トップのミン・アウン・フライン最高司令官は、アセアン特使が調停役として民主勢力と面会することに一旦合意したのですが、その後態度を豹変。特使は期待された役割を担えず、調停活動が暗礁に乗り上げています。

 

そうした中で、軍政は7月、民主活動家4人を処刑しました。

ミャンマーでの死刑執行は実に数十年ぶりだとのこと。軍政は民主勢力の戦意を喪失させる狙いがあったのでしょうが、これは逆効果になっています。また、アセアン諸国もこの暴挙に大きな衝撃を受けたようです。

 

 

「こちらの調停努力を棒に振りやがって」と激怒したか否かは不明ですが、少なくてもミャンマー国軍に対する強硬姿勢が強まったことは事実。

 

かねてから強硬派だったマレーシアとインドネシアに加え、10月27日インドネシアで開催されたアセアン円卓会議(ミャンマー代表は招待されず)で、シンガポールの外相が一歩踏み込んだ発言をしています。

「このままでは問題解決に数十年かかる可能性がある。アセアンの優先事項が引き続きミャンマー国民の苦しみを緩和することにある以上、我々は困難な決断を下す時がきた」。

 

 

これは、昨年アセアンとミャンマー軍政が合意した「和解5項目」を、期限を定めて履行するようミャンマー軍政に迫ることを意味します。もちろん、ミャンマー軍政はこうしたアセアンからの圧力に強く反発しています。

 

調停が進まず、焦りを深めるアセアン諸国。

クーデターや民主活動家処刑など、その影響を読み違えるミャンマー国軍。

 

間もなくカンボジアの首都プノンペンで、アセアン首脳会議が開催されます。こちらにも、ミャンマー軍政トップのミン・アウン・フライン総司令官は招かれていません。ここで9ヵ国のアセアン首脳がどのような決断を下すのか。大いに注目されます。