韓国で働きたい(タイ) | 「アジアの放浪者」のブログ

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どうやら最近は、韓国で不法就労を企てるタイ人が増えているようです。

特に、不法就労の入国口となっているのが、済州島。ここではその背景を記事にします。

 

韓国の有名な観光地、済州島。

コロナ禍前は年間170万人が訪問していましたが、2021年は4万人前後にまで落ち込んでいます。これはたいへんな問題です。

韓国政府は、現地観光業の復興をめざし、今年6月1日から同島への30日間ビザなし入国を認めました。これはコロナ禍前にも行われていたようですね。それを韓国政府は、コロナと共存する具体策として、一時期停止していたビザ免除制度を復活させたわけです。

 

韓国政府の思惑通り、観光客は急増。

ビザ免除制度復活で、済州島も活気が戻ってきたところですが…。そこに新たな問題が。それが、タイ人による集団不正就労。

 

8月2日、こんなことが起きました。

タイの旅行会社が企画した団体旅行。183人がチャーター便で済州島に入りましたが、そのうちなんと112人が空港で入国を拒否されました。翌3日に済州島入りした別のチャーター便でも、182人中108人が入国を拒否されています。

 

拒否の理由は、「入国目的が観光かどうか明確でない」というもの。ここ、もう少し詳しく説明します。

 

まず、韓国に「観光目的」で入国するタイ人は、事前のビザ取得は不要です。入国時に90日間の滞在許可が下ります。

但し、ビザ取得は不要でも、実際にはK-ETAと呼ばれるオンライン・システムを使って、入国前登録をする必要があります。「登録」ですから、ビザ取得のように「審査」はないわけですが、それでも登録手続きを行う中で、添付書類や記載事項に不備がある場合は登録を拒否されます。そして登録を拒否されたら、ビザなし入国はできないわけです。

 

そして、8月2日、3日と済州島での入国を拒否されたタイ人、合わせて220人中206人が、これまでにこのK-ETAで登録拒否をされていた経歴をもっていることが判明したのです。

 

実際には済州島への入国なら、K-ETAの登録すら免除されているのですが、済州島入国後、逃亡するタイ人があまりにも多いことから、最近は済州島でも、タイ人入国に際してはこれまでK-ETAで登録拒否されたことがあるか否かを確認するようになったそうです。そして登録を拒否された事実が確認された場合は、渡航目的が観光なのかどうか明確ではない、という理由で入国を拒否する対応を始めた、という次第です。

※逆に言えば、済州島はこれまで過去のK-ETA登録の照合もしてなかったから、不法就労を希望するタイ人にはもってこいの入り口となっていたわけです。

 

これには、団体旅行を企画しているタイの旅行会社も、苦悩しています。

以下、タイ旅行会社協会(Thai Travel Agents Association = TTAA)関係者の証言。

 

「新しい旅券で、しかも済州島が初めての渡航先であった場合、不法就労を意図している可能性が感じられる。しかし、それだけを根拠に、代理店側が団体旅行の申し込みを拒むことは難しい」。

 

「韓国で働けば、だいたい月に45,000バーツ(およそ175,500円)稼げるといわれている。これはタイと比較したら魅力的な金額だ。韓国に入国後、行方をくらまして不法就労するタイ人は以前から問題になっていた。しかし、コロナ禍前の2019年に韓国を観光目的で訪問したタイ人は50万人に達していて、その中で不法就労する人の割合は比較的小さかった。しかし現時点で観光を真の目的として韓国渡航を考えるタイ人はまだ少なく、そのため不法就労を企てている渡航者数が目立ってしまっている」。

 

TTAAは、近日中に韓国観光公社と対応を協議するようです。それにより、タイ人が韓国を訪問するに際し、より明確な条件が合意されることを望んでいます。不法就労者の増加は、タイの旅行代理店にとっても頭痛の種なのです。

 

韓国側も、済州島に K-ETAシステムを導入することを検討しています。

 

事前登録システムが直ちに不法就労者の入国を防げるかは不明ですが、効果がゼロであるはずもないでしょう。

いたちごっこが続くだけかも知れませんが、だからといって入国時のチェックを断念するわけにはいきません。

 

ちなみに、モンゴル人の不法就労も韓国政府の悩みだとか。

不法就労者の増加は、それだけ韓国経済が力をつけてきた証のひとつではありましょうが、だからといって喜んではいられません。

 

下の写真は、韓国で働いているタイ人不法就労者の写真。日本人の中には、不法就労=売春と考える人も「まだ」いるかも知れませんが、実際には仕事内容は実に多様化しており、建設、農業、漁業、食品加工業、看護などの分野が多いようです。