緊迫するミャンマー | 「アジアの放浪者」のブログ

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ミャンマーでは、軍のクーデターに反対する民主派デモが活発化しています。

首都ネピドーで数万人、人口5,500万人のヤンゴンでは、15万人以上が民主派デモに参加した、という報道もあります。それ以外のところでも、反軍集会、デモが起こっているようです(下図の赤点参照)。

 

 

警察や軍は、放水やゴム弾などを使用することで、民主派デモを抑えようとしています。この混乱の中で、ヤンゴンでのデモ参加者2人が治安維持部隊の発砲を受け、重態になっているとの報道もあります。

 

現地のSNSでは、2人のうちの1人、女子大生が死亡したという情報が拡散しています。彼女を治療した医師が、「実弾が頭蓋骨を貫通していた。ゴム弾ではない」とコメントした、という情報もあります。でもこういう時は、フェイク情報も無数に拡散しますから、よくよく注意しなければなりません。確かなことは、ゴム弾だって当たり所によれば死亡する可能性がある、ということです。ゴム弾の威力については、この写真で視認できます。

 

 

いずれにせよ、少なくても重態者が出たことで、デモ隊と治安維持部隊双方でさらに緊張が高まり、一気に暴力がエスカレートする心配が強くなりました。軍は5人以上の集会を禁ずる命令を出しましたが、それでデモが収まるはずがありません。また、かつての軍事政権下で独裁者として国を統治したタン・シュエ上級大将(当時)の身内も、SNSで民主化デモ支持を表明しています。タン・シュエ氏は88歳ですでに過去の人ですが、民主化運動を弾圧していた側からの発信は、それなりに影響がありましょう。流れている情報の中には、軍の一部が民主化デモ側についたというものもあります。どの組織にだって主流派、非主流派はありましょう。国軍自体も一枚岩ではないかもしれません。フェイクの可能性もありますが。

 

クーデターを首謀したミン・アウン・フライン国軍最高司令官は、国民に対し、「感情的にならず、事実を見て考えて欲しい」と訴えています。

同司令官は国営テレビを通じ、「昨年11月の総選挙に重大な不正があった。軍はその不正調査を訴えてきたが、政府は軍の訴えを完全に無視した。それゆえ、正義のために実力行使に踏み切らざるを得なかった」とこれまでの主張を繰り返し(但し、不正の具体的な説明はなし)、以下の5項目を約束しています。

 

1. 投票人名簿を調査する。

2. ワクチン接種を含め、新型コロナ対策に万全を期す。

3. これまで結ばれた投資契約は尊重し、コロナで悪化した経済を立て直す。

4. 少数民族の武装組織との和平協定締結を推進する。

5. 複数政党による総選挙を実施し、その勝者に政権を移譲する(時期にはふれず)。

 

この演説、どうやら国民を説得できたとは言えないようです。視聴者の中には、最高司令官の演説中に食器などを打ち鳴らして抗議の意を示す人も。

 

 

これはどうも、国軍に部が悪いような感じがします…。

 

翻って、私が住んでいるタイ。

昨日9日、民主化運動指導者4人が不敬罪に問われて拘束されました。

 

 

タイの民主化運動は結局大きな盛り上がりを見せず、中核となっていたグループが「一時運動を休止し、充電する。来年(2021年)さらに運動を拡張する」と発表。そのまま休眠状態になっています。それがミャンマーのクーデターで活気を取り戻す雰囲気が醸成され始めたので、タイ政府が先手を打ったのでしょう。香港も、香港政庁側は緊張しているかもしれません。

 

ミャンマーの内政とはいえ、その影響は世界的に広がります。

注目を集めているミン・アウン・フライン国軍最高司令官。今日はどういう動きを示すのでしょうか。形勢は必ずしも、国軍に有利ではありません。