国会議員よ、仕事せぇ | 「アジアの放浪者」のブログ

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東南アジア、南アジアを中心に、体験・見聞したことをレポートします。

東京や埼玉などで、ホストクラブやキャバクラの従業員やその家族、そして利用客の新型コロナウィルス感染が広がっているようです。

残念なことに、感染者を出した店名が公表されませんから、当該店のみならず、その地域で営業している同業者も影響を受けましょうし、また利用者たちも、連絡がない限り自分が利用した店かどうかわからないのですから、本人は自覚のないままにウィルスを拡散しているかもしれません。

 

不思議な気がします。

食中毒をおこした店舗はすぐに公表されて営業停止などの行政処分が課されるのに、新型コロナウィルスの感染が判明した場合は、店舗の同意が得られないという理由で、店舗名が公表されないのです。食中毒と新型コロナウィルス。店名の公表及び行政処分がより必要とされるのは、いったいどちらなのでしょうか。

 

こんな不条理がまかり通るのは、つまり法律の有無によります。

食中毒の場合、食品衛生法第63条により、危害の状況を明らかにするよう努めることが定められています。この法律に基づいて、各地方自治体が具体的な公表基準をまとめているのです。しかしながら、新型コロナウィルスのような感染症に関しては、食品衛生法の適用外。根拠法となるのは感染症法や新型インフルエンザ等対策特別措置法ですが、これらの法律では予防に必要な情報公開を認める一方で、個人情報の保護にも留意するよう定められており、具体的な対応は地方自治体の判断に委ねられています。それ故に、各自治体も店名の開示に躊躇してしまうわけです。

 

つまるところ、今回のような全国的かつ急激な感染症の拡大は想定されておらず、既存の法律では対応に限界が生じたわけです。これは間違いなく、立法府の怠慢。過去に SARSやMERSが発生したのですから、今回のような事態は想定できたはず。少なくても、東日本大地震の際に発生した大津波による被害について、事前に予測できたのには適切な防災をしてこなかった人災だと主張する人は、この新型コロナウィルスについても、国会の怠慢による人災だと主張すべきでしょう。

 

立法府について、日本人には大きな認識不足があります。

私は立法府、すなわち国会の怠慢だと書きました。行政府ではないのです。その理由は単純で、法律をつくるのは立法府の仕事だからです。ところが日本では、多くの法案が行政府によって起案され(閣法)、立法府はそれを審議する場と化しています。つい先月も、検察庁に関連する改正法案でごたごたしましたが、行政府が起案する法案が行政府にとって都合のいい内容になることはまったく当たり前。当然野党は批判する立場になりますが、この構造がそもそもおかしいのです。

 

行政府はあくまでも、立法府が成立させた法案に沿って政治運営していくものであり、行政府が法案など考えるべきではありません。いや、時には行政提出法案もあっていいですが、主は議員立法であるべきです(ところが日本では、議員が法案を提出することが少ないから、議員立法などというヘンな単語が生れています)。

 

法案づくりに行政が絡むな、ということではありません。行政が新たな法律や既存の法律の改正を求めるならば、それは与党が主導権を握って国会で審議するべきだ、と考える次第です。国会論戦が、「政府 vs 野党」ではなく、「与党 vs 野党」となることを切に願います。ちなみにアメリカでは、政府が法案を提出することはありません。すべて議員立法です。

 

ところでタイですが、やはり今回の新型コロナウィルスの拡大を防ぐための法律は整っていません。日本と似たり寄ったりといったところでしょう。それ故に、このような不慮の事態が発生した場合は、総理大臣が「非常事態宣言」を出すことによって、政府が法律に左右されない、強権的な政治を行うことができます。今回も3月22日から多数の店舗が営業禁止となり、現在に至るも、営業が認められない業種があります。営業再開が認められても、大きな制約が課されている業種も少なくないのです。こうした措置が訴訟騒動にならないのは、「非常事態宣言」という行政にとって極めて都合がよい法律があるからです。

 

結果的には、それで感染拡大が防げていますので悪いと言いきれないのですが、やはり法律が整備されていたほうが民主的でありましょう。ということで国会議員の皆さん。政府の都合が優先される閣法の提出を抑え、議員立法が法案全体の9割を占めるように努力いただけますか。そのため各議員に政策秘書が国費で雇えるようになっているのですから(これもおかしな名称で、国会議員秘書は全員政策立案に長けていて欲しいものです。少なくても国費で雇われている秘書さんは)。