タイでは与党の内紛、野党の分裂 | 「アジアの放浪者」のブログ

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本日6月3日は、タイのスティダー王妃のお誕生日。タイは公休日です。

現在ドイツで人生を謳歌されていらっしゃる国王陛下と離れ、ひっそりとスイスにご滞在されていらっしゃる王妃様。お人柄のよさはタイ国民もよく知っていることです。42歳のお誕生日を心からお祝い申し上げます。

 

さて新型コロナウィルスの感染拡大を上手に封じ込んでいるタイ。

次は大きく落ち込んでいる経済の再起動について取り組むタイミングです。

 

先日、下院で超大型の経済対策予算が承認されました。その額なんと、4000億バーツ。日本円換算で1.3兆円です。

この予算案が承認された途端に、与党内で内紛が目立ってきました。与党である「人民の力」党の執行役員、34人中18人が一斉に辞任。党の規則では、半数以上の執行役員が辞任した場合は45日以内に総会を開き、党首を含む役員を選出し直す事が定められていますから、この動きの背景には党のリーダーシップを交代させる狙いがあるようです。

 

現在の党首はウタマ財務相。学界出身の優秀な人ですが、もともと軍政時代に重用されてきた人で、派閥的な政治基盤があるわけではありません。そういう人が党首になれたのは、当時の軍政の威を借りて選挙選を有利にしようとした政治家たちに寄る妥協の産物でした。経済問題に長けたフレッシュな人物として党の前面に立つことで、選挙の顔になるとの目論見です。ただ、昨年プラユット政権が誕生した当初から、「大臣ポストは1年で譲る」という約束があったそう。それ故に、今回のごたごたが生じているようです。

 

ウタマ党首らは「今はコロナ対策にこそ全力を尽くすべきで、パワーゲームをしている余裕はない」と訴えていますが、政治屋が多いタイ人政治家にとっては、多額の予算が承認された今こそ、大きな利益を握れるチャンス。党首や党幹部が兼任している大臣、副大臣ポストを手放さないと、大変なことになるぞと党の執行部を脅しているわけです。いやはや、まったくわかりやすい。

 

野党側も、一人のベテラン政治家が袂を分かつ様子。

それは、32年以上にわたってタイ政界を生き延びてきた、チャトゥロン元副首相です。

チャトゥロン氏は根っからの民主主義派。軍が政治に関与することに大きな毛嫌いを抱いています。そのためここ25年、タクシン元首相とタッグを組んできましたが、最近はタクシン元首相の影響力が弱まり、タクシン派の中心政党である「タイ貢献党」でも、タクシン氏から距離を置く人たち(特に党の戦略チーフであるスダラート氏)が勢力を上げてきています。一方、先の選挙では軍政派でもタクシン派でもない新興政党が力を伸ばしたこともあり、チャトゥロン氏はこれまで25年以上も続いてきた古い政治体制に見切りをつけ、軍でもタクシンでも既成政党でもない、新たな発想、新たな取り組みを行う政党づくりを志向するようです。志は良いのですが、でも集まってくる人たちが純粋な動機の人たちばかりとは限りません。与党「国民の力党」のように。

 

新型コロナが封じ込められつつある中で、タイの伝統的お家芸である旧型政争が勢いを取り戻す…。あぁ、どちらも早く、有効なワクチンが開発されて欲しいものです。

 

下の写真はベテラン政治家、チャトゥロン・チャイサン氏。