仏教を保護するの? | 「アジアの放浪者」のブログ

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仏教は平和的な教えだといわれていますが、仏教僧のすべてが平和的…というわけではありません。

ミャンマーの反イスラム、反ロヒンギャ運動の精神的指導者で、かつて2013年にTime誌に「仏教徒テロ」との表題とともに表紙を飾ったアシン・ウィラトゥ師が世界的に有名ですが、スリランカにも同師の影響を受けた僧侶がいます。

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ガラゴダ・アッケー・グニャナサーラ師(Ven. Galagoda Aththe Gnanasara Thero)。
スリランカのシンハラ民族仏教徒によって構成されている反イスラム、反タミル民族組織、ボドゥ・バラ・セーナの事務総長です。

このグニャナサーラ師ですが、6月14日、スリランカの地方裁判所の判決で、禁錮6ヵ月と罰金1,500ルピー(約1,000円)の有罪判決が下されました。罪状は、2010年にスリランカ政府軍に拘束され、以来行方不明になっている人権漫画家の妻を脅迫したというものです。地裁は、妻に対する慰謝料50,000ルピー(約35,000円)の支払いを同師に命じています。

行方不明となっている漫画家は、仏教徒ながらも当時のラジャパクサ大統領を批判し、それを題材にしていた人。2010年当時のスリランカは、25年以上にわたって繰り広げられていた内戦が終結し、敗者となった反政府派のタミル民族が大きな迫害を受けていたときでした。

「いかに反政府だったといっても、戦闘に無関係だったタミル人は、一国民として庇護されるべきである」。彼の主張は至極当然と思われましたが、勝利に酔っていた当時の権力者からは、タミル人過激派を支持する言動と認知され、漫画家は危険人物扱いになってしまったのです。

漫画家の妻は、政府軍によって拘束された夫の即時釈放を求める運動を展開中。彼の行方は未だにわかっていませんが、今回有罪判決が下されたグニャナサーラ師は、夫人によるこの運動を、「タミル人過激派やイスラム教徒を支援する意図がある」とし、夫人に対してヘイト・スピーチを繰り返していました。それが今回、脅迫罪として認められた次第です。

タイであれば、強制的に還俗されられてから収監、ということになりますが、どうやらスリランカは僧侶のまま収監されるようす。同じ上座仏教国でも、こうした点が異なります。

ウィラトゥ師にしても、グニャナサーラ師にしても、「自分は仏教を保護しているのだ」と信じているのでしょうねぇ。私からみれば、それはたいへん驕慢な姿勢。

仏教に限らず、宗教というものは、意図的に保護する対象ではなく、自ら信じて行じて人生に活かすもの。それが人間社会にとって平和的で有意であるならば、その宗教は自然と生き残り、次世代に伝承されていきましょう。そうでない宗教、つまり社会にとって有意でない宗教は、自然と淘汰されていくはずです。つまり、特定の宗教を守ろうというのであれば、自らが模範的な信徒になればそれでいいと思うのですが。

仏教は2,500年以上伝承されていますが、それはやはり、仏教が人間社会にとって有意だと認められてきたからでしょう。しかし「仏教を保護しよう」と過激な動きが目立ってきた昨今、もはや仏教が人間社会に有意であるか、大きな疑問がわきます。

しかしまぁ、それほど心配することはないでしょう。
私の身近にも、「立派な姿勢だなぁ」と感心するタイ人仏教徒が少なくありませんから。

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