ユミをあの神戸の海で見つけた時は、心が震えた。


「ユミ!!!!!!!!」



振りかえったキミは、やっぱりあの日のように泣いていたね。

キミの目は、とめどなく溢れる涙でいっぱいだった。


抱きしめたユミは、小刻みに震えていて、ボクが強く抱きしめたら

消えていなくなってしまいそうなくらいだった。


「・・・・グァン・・・ス・・・・・・?」

「…ユミ・・・・・。」

キミがボクの名前を呼んでくれたから、ボクも愛しいキミの名前を呼んだ。



ボクはユミにプロポーズした時よりも強い気持ちで、

ユミに震える想いを言葉にした。


「ユミ・・・よく聞いて。

今は一緒にいられないかもしれないけど、必ず迎えに行くから。



いつかユミと一緒にいられるようになったら、

いつかその日がきたら・・・必ず迎えに行くよ。

・・・・・・・・・・・・だから、お願い。ボクのことを信じて待ってて。」



ボクがそう心の中の溢れる気持ちを口にしたら、

ユミは涙を流したまま、ボクに言ってくれた。


「・・・・・グァンス・・・、愛してる。」



ユミの言葉に答えを見つけたボクは、

ユミの左の薬指にまたあの指輪を通した。



『ユミ…この指輪の居場所はここなんだ。』



朝日の眩しいくらいの光をとらえた指輪が

ボクたちをきらきら照らしてくれていた。



「・・・グァンス。」


「ユミ…愛してる。」




It's time to keep the faith,

…baby listen to me...right?

everything's gonna be all right

everything's gonna be okay

ボクとキミはどんな時も一緒さ…


周りがなんと言っても ボクはボクの心のまま

時に涙がボクの心を濡らしても・・・I wish again

瞳を閉じてもキミだけが見える ボクの心が張り裂けそう…


ただキミのためだけに・・・

キミさえいてくれるだけでいいのに・・・

迫り来るその日のために もう少し高く舞い上がって

・・・そう、もう一度ボクのところにおいで

Tell me why …Why don’t you cry?


誰がなんと言ったって 僕はいつだってMy way


誰がなんと言ったって ボクは平気

誰がなんと言ったって 関係ない

誰がなんと言ったって 誰がなんと言ったって・・・


時にボクが辛くても  キミがボクをいつかまた捕まえてくれる

しきりに世の中がボクを試しても I need you again

この道の果てに立っているよ   もうこれ以上怖がらないで


ただキミのためだけに・・・

キミさえいてくれるだけでいいのに・・・

迫り来るその日のために もう少し高く舞い上がって

・・・そう、もう一度ボクのところにおいで

Tell me why …Why don’t you cry?


誰がなんと言ったって ボクはいつだってMy way


この道の果てに立っているよ


キミが一緒にいてくれるなら ボクは幸せなんだ  

キミはボクのすべてだから・・・・・・

恐れるものなんて 何もないから・・・・・・・・



『愛してる…ユミ』  





ボクが日本に到着すると

羽田空港のロータリーの前に1台の車が停まっていた。

窓が開くとボクが知ってる東京の事務所のスタッフ

佐々木さんの顔が見えた。


「佐々木さん・・・どうして?」

「グァンス、乗れ!!! ユナクから事情は聞いたから、行って来い!!!」


佐々木さんは親しくしている超新星のスタッフの1人。

ユミやハンマネとともに、マネージャーを少し前までしていた人だ。

もちろんボクとユミのことを知ってるうちの1人。

東京の事務所から飛んで来て、車を手配していてくれたんだ。


彼はボクに車のキーを渡すと

ボクの背中を押してボクを車に押し込めた。

振りかえった彼は、Vサインを出して微笑んでる。


ありがとう・・・そうボクは頷くと、車のアクセルを踏んだ。



向かう先は、神戸。

・・・・・・そう、あの海辺だ。


ユミと初めて出会って、言葉を交わした、あの海に


『きっと…ユミはいる。』



それは確信に近かった。

そう…あの日のように・・・。



ボクは神戸に向かって走り出す。
東名高速に乗ると、ボクはあの日のことを思い出していた。



キミが泣いていたら、ボクが見つけに行くから

あの海で「待ってて」

そう…あの時のボクはユミに言えたのに・・・


あの日も、ボクは東京から神戸まで、

慣れない日本の高速を走ったな・・・。


キミに会える保証なんてなかったのに、

もしもユミと会えたら、きっとユミに恋すると思ったんだ。



あの日のように、キミがあの神戸の海にいてくれたなら

あの日のように、またキミに会うことができたなら

もしもユミと会えたら

きっとキミはボクのことを待っててくれると思ったんだ。



だから、ユミ・・・・待っててね。

今、キミに逢いに行くよ。


『だから、どうか泣かないで。・・・チェバル、ウルジマ…。』



「運命」だと 言って欲しい

Don't stop my destiny ,baby...

I'm your I'm your destiny

Believe your destiny



どうか、運命を諦めないで。

ボクとの運命を信じてほしい。


ユミ・・・キミに逢いに行くよ。

だから、待ってて!!!!









数時間後―


「ユミ!!!!!!!!」



ボクがユミを神戸のあの海で見つけた時

・・・・・・・・・・・・・・・朝日が眩しくキミを照らしていた。



―あの日のように、空と海の青が美しい日だった。―



ボクたちがユミの部屋に着いたときには

もう、キミの姿がなかった。



息を切らして、ホテルの部屋にたどりついたけど

数時間前まであった、ユミの痕跡が1つも見当たらなくて…

まるでチェックインしたばかりのような、部屋だった。


「グァンス・・・。」

「・・・ヒョン・・・・どうしよう?!」

「落ち着け。落ち着くんだ。」

ユナクヒョンがボクを制止して

深呼吸を始めたボクの視界に、見覚えのあるものが飛び込んできた。


「これ・・・。」

指輪を見つけたボクたちは、すぐにまた走り出した。


ユミが何を考えているかが、すぐにわかったから。




30分後―



空港に着いたボクたちは

日本行きの搭乗ゲートに着いたとき、

ユミをみつけた。


あの日のように、何人もの人がいる中で・・・

あの日のように、キミが泣いてた・・・

あの日のように、ボクはキミをみつけたんだ…




「ユミ!!!!!!!!」



お願い・・・・・・・・神様。


もしあなたが本当にいるなら・・・ボクの願いを叶えて!!!


『ボクの大切な人に、ボクの心を届けて・・・・・!!!』





雑踏と人ごみの中、ボクの愛する人は・・・

一瞬だけボクの方をふりかえった。


あまりに遠かったけど、キミが泣いてるとわかったのは

キミのいつもの笑顔がなかったから・・・・・。


ユミは片手を顔のところまで上げて手を振ると

・・・・ユミは行ってしまった。



あの日のように、ユミは行ってしまった…

あの日のように、ユミは泣いていた…



ボクは叫ぶことも、走って近づくことも出来ずにいて…

ただただ、彼女の名前を呼んでいた。


「ユミ・・・・・ユミ・・・・・ユミ・・・・・・・・・・!!!」




次の瞬間―



立ちすくむボクのところに

ユナクヒョンが来てボクの手を取って走り出した。



「ヒョン・・・?!」

「ファンに見られるとマズイ。こっち!」


そう言って、彼は人気のない所にボクを連れてきてくれた。



ヒョンはボクの両肩に手をおき、こういった。


「グァンス・・・行っておいで。」

「ヒョン・・・。」

「まだ最終便が出てないだろう?」

「でも、万が一社長に見つかったら…!!!」


ヒョンはボクの胸ぐらをつかんで、ボクをにらんだ。


「ユミにちゃんと言わなかったら、きっとお前は一生後悔する。

ボクのように・・・。それだけはダメだ。

ボクを信じて。何とかするから大丈夫。・・・いいな?」

「・・・・・ヒョン!!!」


ボクはヒョンにお礼を言うと、すぐに次の最終便の搭乗手続きをした。

ユミが乗った飛行機は、中部国際空港行きだ。

そしてボクが乗る飛行機は、日本への最終…羽田行きだった。


明日の昼までに韓国に戻らなければならない。




会えるかなんて、分からなかった。

でも、行かなきゃ。


ユミをあの日のように見つけ出さなきゃ!!!


愛しいあの子に、ちゃんと言わなきゃ。

たったひと言でいい。



「待ってて!」って伝えなきゃ!!!



私はソンモが教えてくれた事実に震えていた。

空港に着いた私は、携帯電話を片手にその場に座り込んでしまった。


『グァンス、全部…知ってたの?』


さっきの会話が頭に浮かぶ。

ソンモが電話でさっきまで彼らに起こっていた事実を

1つ残らず教えてくれた。


『グァンスは私がずっと言えなかった事実を知っていた。』


不思議と、涙は出なかった。

いつか迫りくるこの日のために、私の心には殻が出来ていたから。


私は立ち上がり、手荷物を預けると、搭乗口へ急いだ。


「今、グァンスとユナクヒョンがユミヌナのホテルに向かってるから。」

さっきのソンモの会話。


グァンスにもらった指輪だけを残して私はホテルを後にした。

彼らがここに来るのは、時間の問題だったから。


「行かなきゃ・・・。」




ねぇ、グァンス…

私が、今あなたのためにしてあげられることをするから

どうか許してね。黙っていなくなったことを許して・・・。


私があなたのそばから離れることで、あなたのことを守れるなら

それ以上、望むものはない。



『ただ、あなただけのために…

 ただ、あなたさえいてくれるだけでよかったのに…。』


だけど、世間はそれを許してくれなかった。



ねぇ、グァンス…

あなたとした約束、守れそうにないよ。

あなたが「離れないで」と言ってくれた、あの日のことを

私、一生…忘れない。


私は、あなたとの運命を信じてる。

運命なら、私たちはまた、いつか、どこかで…出会えるよね?



―だから、今はさよならをしよう。―



「さよなら…my darling...」



『グァンス・・・愛してる。』





ボクはユミのいるホテルに向かっていた。

隣には、ユナクヒョンが一緒に走っている。



ボクの背中を押してくれたのは、ヒョンだけじゃなかった。

ソンジェ、ジヒョク、ソンモ、ゴニル・・・・・

4人がボクたちを送り出してくれたんだ。



ボクは1人でユミに会うことができないし、

ボクたちのことを心底想って、ヒョンが言ってくれた言葉を信じて

ボクはヒョンと一緒にユミに会いに行くことにした。



誰にもみつからないよう、事務所の非常階段から外に出ると、

ボクたちは事務所から離れた場所でタクシーを拾って向かった。




『行き先はユミ…』



ユミ・・・・・・・待っててね。

今、会いに行くから!


ユミ・・・・・・・待っててね。

いつか迎えにいくから!



ボクはそんなことを考えながら、ユミと出会ってからのことを

思い出していた。




神戸のライブで何千人の中、ユミをみつけたこと

泣いていた顔があまりにキレイで…

神戸のあの海にユミがいるかもしらないからって

徹夜で高速を飛ばしたこと

あの時みた、海と空の青

観覧車でボクが気持ちを伝えた時のユミの表情

つないだ手のぬくもり

初めてキスした日のこと

2人だけで過ごしたクリスマスの夜

キミがくれたネックレス

キミへ贈ったクリスマスカード

キミの部屋で過ごした日々

毎日聞かせてくれたキミの声

ユミの文字から伝わる気持ち

ユミが初めて言ってくれた愛してるの言葉…


ユミの笑顔

ユミのぬくもり

ユミの香り


・・・・・・・・・・・・・・数え上げたら、キリがないよ。




『ねぇ、ユミ・・・・・ボクは必ず迎えに行くよ。

だからお願い…待っててね。』




ボクがその言葉を言ったなら

キミはボクのことを待ち続けてくれる?



ボクがその言葉をちゃんとキミに伝えることが出来たなら

ボクたちは同じ未来を歩いていける?



『どうか、離れないで…。 ユミ…愛してる。』




ボクたちのやり取りを黙って見守っていた社長が帰って行った。


嗚咽が止まったグァンスがやっと立ち上がった。

そして、彼は言った。



「・・・・・・・それじゃ、ダメなんだ。」

うつむいて全身から力が抜けて、立っているのがやっとなくらいの

グァンスが机にもたれかかって言う。



「・・・・・・・・・・・・。」

ユナクヒョンも、そこにいたボクたち全員が何も言えずグァンスを見つめた。



「それじゃ、ダメなんだ。・・・ユミは行ってしまう。」

「どういうこと?」


ユナクヒョンがグァンスに問いかける。

グァンスは目を閉じたまま、ボクたちに彼の知ってる真実を言った。




「ヒョンが待ち続けてた人が、ユミだって・・・・知ってる。」



「・・・・・・・・・・・・・・・!!!」



全員の顔がこわばった。


今まで事情をしらない、ソンジェとジヒョクがパニックになっていた。




グァンスはユナクヒョンに問いかけた。

「どうすればいい?ヒョンがユミとダメになったのは

離れたからなんでしょ?

約束したのに・・・・・ずっと離れないって!

ユミはボクから離れたら、きっとボクのそばから離れて行ってしまう。

ヒョンの時みたいに・・・・・・・!!!!!」



また大粒の涙が、グァンスの目から溢れてきて

机にぽたぽたと落ちていく。



ボクは思わず、グァンスの肩を抱いた。

グァンスは震えていて、どうしようもなく苦しんでいた。





「・・・・・・・・・それは違う。」




ボクもグァンスも、泣き顔のまま顔をあげた。

ユナクヒョンが、グァンスに向かってそうつぶやいたんだ。



「グァンス、違うよ。ユミと離れたから別れたわけじゃない。」



ボクがヒョンの顔を見つめた時に、

彼は全てをグァンスに話す覚悟を決めていた。



「ボクたちがダメになったのは、ボクがユミに何も言わず

突然いなくなったからだよ。

離れたからダメになったんじゃなくてたったひと言…

待っててって言わなかったから・・・・・・・。」



そういってユナクヒョンは、グァンスの方を向き直して言った。



「グァンス・・・・・・いっておいで。」

「・・・・・・?」

「ユミにちゃんと言うんだ。待っててって。」


その言葉を聞いたグァンスは、今度こそ泣きやんだ。


「・・・ヒョン。」

「明日の今頃にはもうプーケットだ。グァンス、今なら間に合う。

ユミはまだホテルにいるんだろう?」


「・・・・・・・・。」

「そうだよ!!!」

それまで黙っていたソンジェとジヒョクが言った。

「一切接触禁止じゃ・・・・。」

ゴニルが不安気な顔をして呟いた。


そんなゴニルを制止して、ヒョンは続けた。



「ボクが何とかするから。グァンス・・・・行っておいで。

ちゃんとユミに言うんだ。ボクと同じ過ちを繰り返しちゃダメだよ・・・。」



ヒョンの目には涙がいっぱいになってて、

ただただ…グァンスに優しいまなざしを向けていた。



ユナクヒョンは心の底から、グァンスの背中を押したんだ。




社長は泣いてるボクたちに話を続けた。

「記者には金をくれてやる。

だけど、きっとそれだけじゃ済まないだろう。」


「…どうすればいいですか?」

鼻をすすってユナクヒョンが言った。


「お前、このタイミングで入隊しないか?」


泣き顔のまま、顔を見合わせるボクたち。


グァンスがその場に座り込んで叫んだ。

「お願いします!ボクのせいなのに、ヒョンを巻き込まないでください!

ボクが入隊しますから、どうか、ボクに責任を取らせてください!!!」



グァンスがせめてものつぐないをさせてほしいと、

社長にお願いしたけれど社長はそれを許してくれなかった。


「年齢的にもギリギリのユナクに行かせる。

延長してもらってるだけで

そろそろ行かないといけなかったんだろう?」



黙ったままのユナクヒョン。

「それにこのタイミングでお前が入隊したら、記者にあの写真は

本当だと認めるようなもんだ。

記者には、金とユナクの入隊の独占記者会見の取材をやる。」



「そんな…!!!…ヒョンを売るみたいな…」


ゴニルの声をさえぎるようにして、社長は言った。


「8月に博2を開催する。そこでお前は入隊報告をしろ。」

「博2?」

みんながざわめいた。


「記者には金と博の単独取材をさせてやるかわりに、

あの写真は俺が何としてもねじふせてみせるから。」



黙りこむメンバー。



沈黙を破ったのは、黙っていたユナクだった。

「わかりました。行かせてください。」



グァンスが涙を流したまま、ヒョンを見上げた。

苦しそうに顔をゆがめて…

「そんな…。」



ヒョンはグァンスのそばに行きしゃがんだ。

そしてヒョンはグァンスの肩をぽんぽん優しく叩いて言った。



「ボクは犠牲になるわけじゃないよ。」

「・・・・・・。」

「ちょうどいいタイミングだったんだ。」

「・・・・・・・・ヒョン。」

「自分を責めちゃダメだ。

ボクたちはグァンスの気持ちが痛いほど分かる、家族だから・・・。

・・・・・・・行く時期が来たんだよ。」


優しく、グァンスをなだめるように言った。




ユナクヒョンは泣いてるメンバー全員の目を見て続けた。



「ボクたちがいつか入隊する時も、結婚する時も…

大事なことはファンにボクたち自身の口で報告したくない?

スキャンダルとか噂で知られるんじゃなくて、

ちゃんと目をみて、報告したいと思わない?」



グァンスは涙をぬぐっていた手をおろして、ヒョンを見つめた。

ヒョンは優しい顔で、グァンスに言う。


「お前がユミとの愛を貫いてくれたら、ボクたちは救われるんだよ?

 離れたって、しばらく会えなくてたって、心はいつも一緒なんだろ?」



魔法がかかったように、グァンスの嗚咽が止まった。



ソンモがいつものように、ボクのそばにいてくれた。

いつから彼がいたのか分からないくらい、ボクは泣いていた。



「社長が呼んでる。方針が決まったみたい。」

ボクの嗚咽が止んできたのを見計らって

ソンモがボクに言った。



胸騒ぎが…した。



ユミにちょっとでも今、どうなってるか電話したかったけど

ボクは社長を待たせていたみたいで、そんな余裕がなかった。




部屋に戻ると、社長がボクを見つめてきた。

どことなく、悲しい目で…。



社長は深呼吸をすると、たちあがってボクたちを見つめる。




「方針が、決定した。ユミさんには事務所を辞めてもらう。」




ざわざわするメンバー。そしてボクは何だか、やっぱりと思っていた。

それどころか、もっと胸騒ぎがしたんだ。



ボクの顔色を隣で、ソンモが気にしてくれている。

肩を抱いてくれた手が、もっと強い力になってボクを励ます。



そんなボクたちに社長は続けた。




「そしてユミさんとの今後一切の接触を禁止する。」




『運命の輪がまわりつづけていた』





一瞬気が遠のいたボクの意識がはっきりしたのは、次の瞬間だった。


「どうしてですか?どうしてそんな…」

うろたえて涙を浮かべるゴニル。


「ユミヌナが何をしたっていうんですか?」

涙を流して、苦しそうに言うジヒョク。


「ユミヌナはグァンスだけじゃなく、

ボクたちにとってなくてはならない存在なんです。」

1筋の涙を流して静かに言うソンジェ。


「どうか、一緒にいさせてあげてください!!!」

ぎゅっと目をつむって、頭を下げるソンモ。


「ボクたちを…どうか、信じてください!!!」

まっすぐにただ社長をみつめるユナク。



メンバーがボクとユミを想ってくれていたんだ。

ボク以外のメンバーは、

立ち上がり、泣きながら社長に頭を下げた。



必死にボクとユミを守ろうとしてくれていたんだ。




「・・・・・・・・・・・・・・・・わかってくれ。」


その社長の絞り出すような声で、ボクたちは我に返った。


「・・・・・・・。」

社長の目にも涙がいっぱいだった。


「もちろんお前たちのことを信じてる。応援してやりたい。

だけど・・・・・・・。」


社長が涙をぬぐって、ボクたちに言った。



「お前たちのことを1番愛してくれる人は、誰だ?」


息をのむボクたち。


「お前たちのことを1番近くで支えてくれる人は、誰だ?」


顔を見合わせるボクたち。





ボクたちは、1番大事なことを忘れていたんだ。



それは・・・・・



―ボクたちが超新星だってこと。―




ボクたちを1番愛してくれる人は……ファン。

ボクたちを支えてくれる人は………スタッフ。



ボクたちは全員泣いていた。




ボクたちは時に…すごくむなしくなるんだ。

ボクたちは時に…すごく苦しくなるんだ。



―理想と現実のはざまで、ボクたちは時々…迷子になる。―



1人で戻ってきたホテルで、私は眠れずにいた。

自分とグァンスとその周りで起こっている出来事が

何なのか考えていた。



これから超新星はどうなるんだろう?

これから私とグァンスはどうなるんだろう?



どれだけ考えても行きつくのは、最悪の事態。



私は落ち着かなくて、1人ホテルの部屋の中を歩きまわった。



携帯を見ても、グァンスから電話もメールも入っていない。



―それが余計私を不安にさせた。―



いつもどこにいても、どんな時も、必ず電話やメールをくれた

グァンスの行動は、いつも私を安心させたから。


そんな状況じゃないことくらい私も分かってたけど、

不安で押しつぶされそうだった。




そんな時に私の部屋のドアをノックする音。


「?」


グァンスがここに来ないことは分かってた。

写真を撮られたばかりだから、絶対私には会いに来られないハズ。




扉の向こうにいたのは…工藤社長だった。



「ユミさん、ちょっといいかな?」



社長は、私の部屋の椅子に腰かけると、すぐに私を見つめて言った。



「ユミさん、唐突で申し訳ないが、超新星を救ってくれないか?」



社長の顔を見た時に、今後グァンスや超新星に

会わないでほしいと言われると思っていた私は

思わず社長に聞いた。



「あ・・・あの、おっしゃってることがよく分からないんですが・・・。」


社長はまっすぐに私を見つめて話しだすんだけど

なぜかすごく悲しそうな顔だった。



「今、超新星は1番大事な時期なんだ。それはあなたも分かっているね?」


うなずく私。


「もうすぐクリウンナレのCD発売、そして6月末にはツアー

8月にも新曲発売の予定がある。

そして、オリコン1位に、ドームツアー、そして紅白出場など

彼らにはまだ叶えたい大きな大きな夢がいくつもある。」



「・・・はい。」



「キミを事務所で雇ったのは、スキャンダルになってもらっては困るからだ。

だけど、こうして今、スキャンダルになってしまった。」



社長の顔がにわかに曇りだして、会話がそこで途切れる。




「・・・・・・わかりました。社長、お願いです。

私がそうしたら、必ず彼らのことを救ってください。お願いします!!!」



私が頭を下げると、社長は驚いていたけれど、うなずいてくれた。


「もちろん、約束する。ただし、今すぐにでもそうしてもらえるかい?」




部屋を出ていく社長の後ろ姿を見送って、ドアがバタンと閉まった時

私の目から涙がこぼれ落ちた。



私は彼との今までの出来事を思い出していた。

神戸の海で、グァンスに初めて出会った時。

彼からの毎日のメールと、電話。

遊園地で私のおでこにキスした時の彼の笑顔。

神戸で過ごした初めてのクリスマスの夜。

私のあげたネックレスをうれしそうにつける姿。

彼のぬくもり、私を抱く腕。

彼が流した涙。

私に指輪をはめてくれるときの、真剣な彼の表情。




そして…

いつも言ってくれた「愛してる」の言葉・・・

いつもしてくれたキス・・・




『とうとう、この日が来てしまった・・・。』




私は嗚咽に包まれた。



誰もいないホテルの部屋。

数時間前まで彼がここで私に笑いかけてくれたのに・・・


もう、手をつなぐことも

もう、一緒に眠ることも

もう、愛してると伝えることも、出来ないんだ・・・・・・・。



いつかこの日がくるって、分かってたけど

苦しくて、悔しくて、情けなくて…。



私は泣きながら、その準備をしはじめた。

スーツケースに、洋服をつめる。



明日から新曲のPVの撮影でプーケットに

韓国から直接行く予定だったから

私の荷物はいつもより多かった。



けど、涙を止めるのに、ちょうどよかった。



私はやっと、ホテルにあった私の痕跡を、

残すことなく全部スーツケースに詰め込むと


グァンスからもらった指輪にそっとキスをした。




「さよなら、グァンス…」




私は最後のあいさつを指輪にすると、指からそれを外してテーブルに置いた。




指輪を持つ手が…震えた。



そして、パスポートを握りしめて、私は…歩き出した。



ボクが社長と2人きりになると、ボクの方から先に口を開いた。


「ユミはボクたちの運命の人なんです!!!」

目を丸くした社長は黙ったままだった。

「社長・・・・・ボクが超新星になることを

決意した時のことを覚えていますか?」

「・・・・・・・・。」

「その子が運命の相手なら

きっとまたどこかで会えるはずだ・・・と。」


「!!!」

社長は驚いたまま頷いた。


「その人がユミです。」

「そうなのか・・・。

でもグァンスと付き合っているのはどういうことだ?」



「ユミの運命の相手がボクじゃなく、グァンスだったからです。」



「いいのか?あんなに毎日泣いていたのに…。」





本当は平気なんかじゃない。

ユミにしっかりふってもらったけど、心は痛いままなんだ。



そんなの当たり前。ボクは6年も彼女だけを想ってたんだから…

すぐに忘れられるわけがない。




だけど…




「いつか忘れられると思っています。」



社長がこれ以上ボクに何も聞いてこなかったのは、

ボクの目を見て社長は、ボクの気持ちが分かったからだ。




『いつか忘れられると思いたい…』




そんな気持ちを―






ボクはそれから社長に、ユミがメンバーにとってどんな存在なのか

仕事ぶりや、ユミの仕事に対する姿勢、他にリナの気持ちも、

すべてを正直ありのまま話した。



すべて知った上で、ボクが最も信頼している人の1人である社長に

決めてもらうつもりだった。



本当は心のどこかでボクたちのことを何とかしてほしいと思っていたんだ。

だから、社長はあえてボクにこう言った。



「ユナク…いつからそうなったんだ?」



ボクは社長が何を言っているのかはじめ、真意が見えなかった。


「・・・・・・・・・・?」



社長はため息をひとつつくと、ボクに言った。


「ちょっと1人で考えたい。ホテルでしばらく1人にさせてくれないか?

方針が決まったらお前に連絡するから。」




ユミのことをきちんと説明出来たことはよかったけど・・・・・・・


最後の社長の目を見たら、これからの未来が少し見えた気がした。



それは…すごく悲しそうな目だった。