どうしてグァンスが、ファンが目にするような媒体で

あんなことを呟いたのか、理解に苦しんでいたボクは

工藤社長から電話をもらってはじめて理由が分かった。


あまりにひどいグァンスを奮い立たせるために

社長はユミと1度だけ逢う機会を与えたそうだ。



でも、グァンスにとってこれはマイナスだったような気がしてならない。



ファンからのおびただしい数のメールやコメントが事務所にもブログにも

ツイッタ―にも届けられた。

東京の事務所にも何十本もの苦情電話が鳴り続いたそうだ。


でも電話で話した社長は意外にも落ち着いて対処していた。

こうなることが彼には分かっていたかのように冷静だった。




緊急招集がかけられ、メンバーとスタッフ、そして現地の社長も

交えてのミーティングがはじまった。

その場での彼は、ただただ謝っていた。



1番ファンと身近で交流していた自分が

1番ファンが傷つくことをしてしまって

彼は心底、後悔していた。

そして見ているこっちが辛くなるくらい、憔悴しきっていた。




でも彼はボクたちの心配をよそに数日すると戻ってきた。

…元の彼らしく。




ユミから、1通の手紙をもらったそうだ。





『その手紙にどんな言葉が書いてあったんだろう?』




男が憔悴するほど落ち込む場面では

その彼女が彼を立ち直らせることは、はっきり言って難しい。



男と言うのは厄介な生き物で、落ち込んでいる時でさえ

彼女に対してプライドが邪魔して素直になれないことが多いから。




『そんなグァンスに、ユミはどんな言葉を贈ったんだろう?』




…正直、ユミだから出来るのかもしれない。


なんて思ってしまった。


ボクと付き合っていたころの彼女は、ボクが今どうしてほしいか

テレパシーのように分かってくれる人だったから。

ボクが祖父を亡くした時の彼女も、ボクがいいよ言うまで

そばにいてほしいことをすぐに分かってくれた。



そばにいてほしいのか、そっとしておいてほしいのか

そういうニュアンスを持ち合わせている女性だから

…彼女に任せたのかもしれない。



『社長は初めから分かっていて、彼女にお願いしたんだ。』



社長は数回しかユミと会っていないはずなのに

いつのまにユミのことを分かっていたんだろう?

…ちょっと複雑な感じがした。




そして…

今までどんなことがあっても、どんなに疲れていても

1日も休むことがなかった

ツイッターのグァンスが戻ってきたのは3日目の昼のことだった。



それからの彼は、一切ユミのことを話さなくなった。



彼は本当に強くなりはじめていた。

見ていてうらやましいくらいの彼の変貌に、少しだけ嫉妬した。




今日は8月4日―

長い長い1日のはじまりだった。


ボクはやっぱり毎日ダメだった。

毎日一人になると、ユミが残していった指輪を

握りしめてずっと泣いていた。


指輪を残していったユミが

もうボクのところには戻ってこないような気がして…。

ユミに逢えなかった日々よりも、ユミに逢ってからの

ボクの心はもっとうずきだした。



ユミに逢ってから2日後…

いたたまれず、どうしようもなかったボクは、

ユミへの想いを文字にした。



『行ってしまうの?』



ユミへの想いをたったハングルでひと言

文字にしたことで

ボクは泣いていられない状況に陥っていった。



放心状態のボクの部屋に入ってきたのは

ソンモとユナクヒョンだった。



電話にも出ず、携帯電話と指輪を握りしめたまま

座り込んでいたボクに怒鳴りこんだのはソンモだった。


「グァンス、お前…何をやってるんだよ!!!!!!」


ソンモはボクがユミへの想いを文字にしたことで

生じた現実を全て話してくれた。


ブログやツイッタ―には

おびただしい数のコメントが寄せられていた。

誹謗中傷や非難のメールとわずかな励ましのメール。


そのメールを目にして、ボクははじめて事の重大さに気がついた。


「計画が全て台無しになってしまう。

ファンが…大事なファンが、ボクたちから離れていってしまう。」


ユナクヒョンが震える声で、ボクを諭していた。

ボクの肩を強く抱き、ヒョンはボクに何度もしっかりしろよと叫んだ。



「しっかりしてくれ。頼む!!! 超新星が終わっちゃう!!!!!!」



ヒョンがボクにすがるような声で、ボクを奮い立たせようとしていた。

ソンモは立ったまま泣いていた。



ボクは…

ボクは…ただ…ユミに逢いたいだけなのに。



『…どうして?』




I miss you

Baby just come back

―It's brave..―


もう忘れなきゃ

もう消さなきゃ


キミが恋しい日には

キミに死ぬほど逢いたい日には

夜通しボクはキミだけを想うんだ


キミが恋しい日には

キミに死ぬほど逢いたい日には

空にキミの名前を書いてみる


痛くてたまらないボクの愛


愛がなぜボクをこんなにも泣かせるの?

別れがなぜボクをこんなにも苦しめるの?



長い間キミのいない場所に

一人ぼんやりとたたずんでいる


―戻ってきて―


キミはどこにいるの?

ボクはキミが恋しくてたまらないのに

キミはボクと同じ気持ち?

ボクはいつもキミだけを想ってるのに


―恋しくてたまらない―


Baby girl you are the only one

死んでもボクはキミのことを忘れられない


Call me girl

キミのことを心から消せなくて悲しいんだ


目を閉じてもキミのことばかり

キミだけが頭から離れないんだ


Shawty stop make me cry


―I miss you...―




ねぇ…ユミ…。


ユミがいない世界は…

ボクにとってどんな世界だと思う?


ねぇ…誰か教えて…。


ボクがボクらしくあるために

ボクが超新星でいるために

ボクがキム・グァンスであるために


ボクが愛する人と一緒にいたいと願うことは罪ですか?

ボクが愛する人と一緒にいたいと願ってはいけないのは…


誰のため?

何のため?


『…一体誰を恐れているの? 一体何を恐れているの?』



ボクはユミと離れてから

毎日どんなふうにしていたのか、正直…あまり記憶がない。


出来あがった雑誌やTV番組を見てから、

こんな仕事をしたっけ?と驚くこともしばしばあった。


メンバーやスタッフが

ボクのことを心配してくれているのは分かってた。

だけど…


『ボクのこの空虚を埋める方法なんて、どこにもなかった。』



今夜も、一人部屋に居ても気が滅入るから

ソンモの部屋にでも行こうとドアを開けた瞬間…



そこにはボクの最愛の人がたたずんでいて驚いた。



久しぶりに見た、最愛の人…ユミ。


その目、まなざし…目の下のほくろ。

小さな口。

キレイな髪に白い肌。



ついに、幻覚でも見えだしたのかと、考え込んでいたら

ボクの目の前にいるユミが、はかなげにボクの名前を呼んだ。



その瞬間、ボクは思わずユミを抱き寄せた。



ユミのことを感じたくて…

ユミのことを確かめたくて…



久しぶりにキスをして、ユミを抱いた。

久しぶりに腕の中で感じるユミが、だいぶ痩せたように感じた。



「ユミ…。」

「愛してる…。」



何度も何度も名前を呼び、何度も何度も体を重ねた。




どんなにユミを強く抱いても、もどかしいままなのは

また離れなければならないことが分かったから。


ユミの表情をみていたら、朝になれば

またユミがボクのところからいなくなると感じたから…。



だから眠りたくなかったのに

キミはボクを子供を寝かしつけるかのように抱きしめてくれた。



ユミの香りと体温を感じながら、

ずっと眠れていなかったボクは、深い深い眠りに落ちていった。









ボクが目を覚ました時…やっぱり隣にユミはいなかった。



ボクは朝日の中で、1人ユミを想って泣いた。


夢でもみたのかと思ったんだ。


逢いたくてたまらないユミがふと現れて…

でも、気が付いたらまたいなくなってしまった…。


幻だと思いたくて…

隣にユミがいない事実を認めたくなくて…

嗚咽に包まれたまま


ボクの目に飛び込んできたのは、たった1つのユミの痕跡。




確かに、昨日の夜…ユミはボクのところにいたんだ。




朝日に照らされて光る、ボクがユミに贈った指輪が

あの時のように、ホテルのテーブルの上で淋しく輝いていた。



私は今、グァンスが泊まるホテルの前にたたずんでいる。



この扉の向こうには

逢いたくても逢えなかったグァンスがいるのに

いざ…目の前まで来ると

足がすくんで動けなくなっていた。


どんな表情で、どんな言葉をかけていいか分からなくて…

何を伝えればいいのか、分からなかった。



工藤社長は、私と離れてからのグァンスが

あまりに酷くて見ていられず

私にちゃんとするよう、お願いしてきたのだった。



毎日のツイッタ―もブログの様子は

私がいなくても変わらないように見えたけれど

それは全然違ったと聴いて、私はその夜涙が止まらなかった。




社長が話すグァンスの様子は、私が心配していた状況とは違い

私がいなくなったことで、抜け殻のようになってしまったそうだ。




ひどい精神状況にいるグァンスの近況を聞いて

私の心は痛かったけれど

私のことをそれだけ想っていてくれた事実は

私にとってこれ以上ない出来事だった。



いつ逢えるか分からなかったのに、

いざ手が届く距離まで来たとたん、私は怖気づいていた。



「私に、彼を元通りにできるかな…。」



そんな不安を抱いたまま、立ちすくんでいた時

目の前の扉がふいに開いた。


―出てきたのは、グァンスだった。―

彼はシャワーを浴びたのだろうか、髪が濡れていた。

ドアノブを持ったまま、私の姿を目に映すと

彼はやはり黙ったままだった。



「……グァンス…。」


私がつぶやくと、彼は消え入りそうな声で私の名前を呼んだ。


「…………ユ…ミ…?」



次の瞬間、私はグァンスに腕を掴まれると部屋に連れていかれた。



しまった扉に私を押しつけたグァンスは、掴んでいた腕を離して

私のほおを両手で覆った。



おでこをくっつけて、彼は私の名前を何度も何度も呼んでくれた。



「ユミ…ユミ・・・・・・・ユミなの?

ねぇ、顔をちゃんと見せて…ユミ!!!」




彼は息が続かなくなるまで激しいキスをしてきた。

私たちはもつれ合うようにして、抱き合った。



今まで

いつどこで、何を誰としていても

少しも埋まらなかった心の溝を埋めるかのように



私たちは…

何度も何度も 名前を呼びあい、

何度も何度も 体を重ねた。



久々に感じた彼のぬくもり。

彼の体温。

彼の声。

彼の匂い。



私は彼の全てを自分の胸に刻んだ。



「グァンス…。」




彼は…

何度も何度も 愛してると言ってくれた。

何度も何度も 抱きしめてくれた。



そんな彼に、私は考えていた言葉を1つも言えなかった。

彼もまた私に対して、「愛してる」以外の言葉を1つも言わなかった。



明日になれば、また離れなければならないことが

彼にも分かっていたのだろうか…。



・・・・・彼は1秒たりとも、私から離れなかった。




私が今日ここに居るのは、工藤社長のおかげ。


私はここに来るまでの間、グァンスと会えなくなってからの

日々を思い出していた。


私はグァンスのもとから去って、しばらく実家で過ごしていた。


実家の両親は、急に仕事を辞めたかと思いきや、

東京暮らしをはじめ、そして韓国にも出張で行く仕事を始めた

私をいつも心配していてくれていた。


寡黙な父に、自分から何があったのか言えなくて

口うるさい母に、いつも怒られたけれど

私があまりに落ち込んでいたから

最近は2人とも何も聞いてこなくなった。


でも、今のこの状況をありのまま話したら

もっと心配させるから、時期を見て話すつもりでいた。


いや、正直…言えないと思った。


グァンスに迎えに行くから待っててと言われても、

私はいつも最悪のことしか頭に浮かんでこなかった。



『グァンスが迎えに来なかったらどうしよう…。』



私は毎日泣いて過ごした。

目の前の景色は全部色あせて見えた。

何をしていても全然楽しくない。

誰とあっていても、思い出すのは彼の笑顔だった。


もう、どうにでもなればいいとも思った。

考えることが辛くて、逃げ出したかった。


毎日、毎日…

彼が呟くたびに、彼がブログを更新するたびに

私がいなくても彼が平気なような気がして怖かった。


私はグァンスと会えない時間に慣れていくことが怖かった。

彼が私と会えない時間に慣れていくことが怖かった。



―気が、狂いそうだった。―




そんなある夏の日に、工藤社長が私を訪ねてきた。


久しぶりに見た社長は、幾分ひげに白髪が目立ち始めていた。

彼は驚く私に、以前と同じ笑顔を浮かべたまま

1つ1つ言葉を選んで彼は話しだした。


「ユミさんと話したのは、1ヶ月ぶりくらいかな?

七夕の時に話したのが最後だったね?」


「はい…、ご無沙汰しております。」


「あれから彼らは、一生懸命仕事をしているよ。

今度の7月29日にもLove-1という千葉でイベントがあったんだ。」

「はい。」

「少しでも彼らの様子を見たりしている?」



社長は戸惑う私にお構いなしに話を続けた。

話が最近のメンバーの様子の話になり、

グァンスの名前が出たところで彼の話は途切れた。


「社長…?」


社長は私にあるお願いをしてきた。

突然の出来事に、私は頭が真っ白になって何も言えなかった。


全ての社長の話を聞き終えると、私は泣いたり笑ったり

どう反応していいか分からないまま、頷くので精いっぱいだった。


そんな私に社長は深々と頭を下げると、帰っていった。


東京から名古屋まで、私のためにこの話をするために

私に会いに来てくれた社長の後ろ姿を

私は見えなくなるまで見送った。



そんなことを思い出すと、私の胸の奥がじわじわ熱くなってきた。


ホテルの部屋の前で、私は立ちすくんだまま。

手が届く距離まで来ているのに、私はなぜか足がすくんでいた。


どうしていいか分からなかった。



『世界で1番愛してる人がすぐそこにいるのに…。』



7月29日 ボクたちは昨日から久しぶりの日本に来ている。


あれからボクたちの周りには、たくさん変化がある。


髪を切った、グァンスとゴニルは変わった。

ゴニルはダンサーの彼女と別れてから、だいぶ

何て言うか「凛々しく」なった。


いつも恋人と別れるときは、ゴニルのほうが振られる

パターンだったから、自分から振ったと聞いて驚いたし

別れた彼女の話をまったくしなくて驚いた。


ゴニルの表情を見ると

むしろ、彼は変わりたかったのかもしれないと思った。



グァンスはユミがいなくなってから

あんな彼をみたことがないくらい、変わってしまった。


スタッフやメンバーと談笑していても

瞳の奥はずっと濁ったままだった。

ユミと離れてからの彼は、本当の意味で笑わなくなった。


いつも彼は未完成だった。

トークも歌も笑顔も…ユミがいないから全部未完成なんだ。


ツイッタ―やブログの彼はどうファンに映るんだろう?


ボクは顔をみられるくらいの近さにいるから

その変化に気付くのかな?



今日は「Love-1」という舞台。今日も観客がたくさんいるイベント。

この前のイベントを思い出す。

東京伝説の時、グァンスのお父さんに話しかけられ

緊張していたユミをふと思い出した。


ユミがいなくなったことで起こった変化はこんなところにもある。

あれからボクたちの日本語の先生は、他のアーティストにも

日本語を教えている先生に変わった。

ユミがしていた仕事は、ハンマネが全部1人でこなしている。


ユミがボクたちのところから居なくなったことで感じる変化は

たしかに存在しているんだけど、日に日にそれに慣れていくのが

…たまらなく悲しかった。


ユミがいなくても毎日がこなせてしまう現実が

…たまらなく虚しかったんだ。



それはメンバー全員が感じていたようで、

ある時ジヒョクが呟いたひと言で

みんなはまた虚しさの渦に落ちていく。


「ユミヌナがいたら、すぐに日本語のこと質問できるのに…。」


ソンモがジヒョクの頭をばしっと叩く。

グァンスやメンバーの顔を見て我に返るジヒョク。

しまったという顔をしてみせるが、メンバーは黙ったまま。


「さぁ!!!今日は他のアーティストも出るから

負けないように頑張ろう!!!」


ボクが雰囲気を変えるためにそう声をかけると

メンバーは集まって円陣を組む。


もうすぐボクたちのステージがはじまる。

「ミルキーウェイに最高の笑顔を!!!」

そうボクが叫ぶと、全員でファイティンと叫んだ。


ボクたちが舞台袖にある記者会見が出来るスペースにスタンバイすると例の記者が来ていた。

ボクたちのことを、他の記者たちに混ざって写真を撮っていく。

彼の姿を見るだけで、ボクたちに緊張がはしった。


グァンスの変化を1番彼に知られてはいけないから

撮影が終わるとすぐに、記者から離れる。

振り返った彼は、ボクににやりと微笑んだ。


その不敵な笑みを見たせいか、その後のステージは

いつもにも増してボクは何だかイライラした気分のままだった。





あれからボクは少しだけ変わった。


グァンスとユミヌナが離ればなれになった日からもう1ヶ月半になる。



ボクはユミヌナがユナクヒョンの6年も待ち続けていた人だと知って

その運命にショックを受けた。

そして、グァンスとユミヌナが心底愛し合っているのに

また離れなければならない運命にまたショックを受けた。



だけど、プーケットでPV撮影をした時に気付いたんだ。



彼らは離れ離れになっても

見えない糸で、強くお互いに引き合っているように感じたんだ。



『そんな強い力で結ばれていたら

きっと彼らは、必ずまた一緒になれる。』




ボクは3週間ほど前…七夕の夜に、付き合っていた彼女と別れた。



ボクはいつも、自分の好きな人に告白してもうまくいかない。

いつも好きだって告白されて付き合うだけ。


『いつだって受け身なんだ。』



グァンスとユミヌナ、そしてユナクヒョンを見ていたら、

フリ―だし、ただ告白されたから付き合う自分が

すごく恥ずかしくなってきた。



はたから見たら、どちらも一緒なのかもしれない。


けれど、彼らの心の中にある『情熱』って何なのか

前は分からなかったけど

最近、少しだけ分かった気がする。



『情熱…それは代わりのきかないまごころだと思う。』




ユナクヒョンはユミヌナでなければ6年待ち続けられなかっただろうし

グァンスだってユミヌナじゃなかったら

ヒョンの待ち続けていた人だと知っても諦めきれなかったんだろう。


ユミヌナだってそう…。

きっとユナクヒョンでなくグァンスを愛したのは…。



ボクが付き合っていた彼女と離れなけらばならない状況に

もしも陥ったなら、ボクはきっと彼女のことを

ずっと待ち続ける真心は持てないと感じた。


彼らのような情熱でその人を愛することが

ボクにも次の恋で出来るかどうかは分からない。




ただ、真心に染み入ってこない恋愛をやみくもに続けるのは

もう、止めようと思った。




もうすぐ7月も終わる―

ボクたちはまた韓国に戻って、プロモ活動やイベントの練習

そして博のために、すべての時間を捧げていた。



迫りくるその日が

グァンスとユミヌナが一緒にいられる未来のための

1日でありますように…。



そしていつか…

ボクにも情熱をもった最愛の人と巡り合えますように。




私がグァンスと最後に会った日から、今日でちょうど1ヶ月と1日。


7月7日 七夕の夕方―


私は今日も1人だ。隣に、グァンスはいない。

けれどグァンスからもらった星型のストラップがあるから何とか平気。
もうすぐ1番星が出てくるだろう・・・。



ふと、昨日の電話のことを思い出す。


私の電話が久々に鳴って、驚いて出てみると

電話の相手は工藤社長だった。


グァンスたちは7月1日から新しい韓国の事務所に移籍したから、

工藤社長はもう彼らの社長じゃないけど、

新しい事務所のスタッフはほとんど工藤社長の部下だと聞いて少しだけ安心した。


電話のむこうの社長は、最後に会った時のように

落ち着いて、ひと言ずつ言葉を選ぶ人だった。


「ユミさん、元気かな?」

「・・・はい。社長、お久しぶりです。」

「あぁ。ユミさん、この前は本当に申し訳ないお願いをして悪かった。」


彼はその後、何度も何度も私に詫びた。

そして、彼らの様子をこと細やかに教えてくれた。


どんな番組に出て、どんな取材を受けて

いつ韓国に戻るとか…。

社長が私に、ここまで細かく教えてくれるのは、

社長が私のことを信頼していてくれるからだと思った。


本当に私を彼らから引き離したいのなら

きっとこんなことは教えてくれないだろうから…。


私は、社長が本当は私たちを応援していてくれるのが分かったから

私は何も言えなかった。


きっと、社長が

私たちがいつか手をつないで、隣で笑いあえる日がくるから

それまで待ってろって言ってくれているんだと思った。



七夕の願いは、いつか叶う。

私の七夕の願い事は…


『グァンスと同じ未来を歩いていきたい』


だから、今日は隣にグァンスがいないけど星に祈る。

きっとグァンスも同じ気持ちでいてくれるに違いないと信じて…。

私は1番星にお願いすると、ずっと夜空を眺めていた。



空はさっきまでの雲がどこかに消えて、キレイな天の川が見えた。

「Milkywayだぁ・・・。グァンスも、今頃みてるかな?」



同じ日本にいるのに、逢いたくても逢えない。

世の中で1番、大事な人なのに

逢いに行きたくても逢えない。



そんなことを思うと、また涙が出てきた…。



ねぇ…グァンス

隣にあなたがいなくて

毎晩淋しくて涙が出るんだ。

約束守れなくて、ごめんね。


でも、いつかあなたに逢えたら、

私が泣きやむまで隣にいてくれる?


ねぇ、グァンス…


私たちはまたどこかで、必ず出会えるよね?

運命なら、同じ未来を歩いていけるよね?




『グァンス…逢いたい!!!』






6月10日 

ボクたちは5日に及ぶプーケットでのPV撮影を終えると

そのまま日本へ向かった。

ユミがいる日本の空港に降り立った時は足がすくんだ。


「ユミ・・・・・。」

ボクは泣き腫らした目を見せたくなくて

わざとサングラスをかけてtwitterやブログに載せた。

もしユミが見ていてくれていたら、心配をかけちゃいけないから…。



程なくしてはじまった、ボクたちのツアー「Pray」・・・祈り


ユミ・・・ボクがキミの隣にいなくても、ちゃんとボクは歌うから

どうか、ボクたちのことを見守っていてね。

どうか、無事に終わることを祈ってください。



ユミがいない毎日は、ボクにとって遅く進む毎日だけど

でも時間は止められなくて…

ユミが隣にいなくても明日はくるんだ。

毎晩、ユミが恋しくて泣きながら眠るんだけど…

それでも朝はやってくる。


朝になると、いつも隣のぬくもりを探すボクがいる。





数日後―

横浜、神戸、名古屋とツアーがはじまった。


どの会場に行っても、ボクは会場の中にもしかして

ユミがいるんじゃないかって、ユミを探すんだ。

あの時みたいに、ユミがいたりしないか、探すんだ。


ツアーで披露したピアノ演奏…

「逢いたいといえたら」にボクの気持ちを込めて歌っても

ユミには届かないのかな?


ツアーが終わって握手会がはじまっても

たくさんの人たちの中には、キミはいなかった。


いつ、どこで何をしていても・・・

『やっぱりキミはいない』



仕事をしている間は、笑ったりふざけたり出来るように

なってきたんだけど…

ボクは毎晩、ユミに逢えない日いつも電話をしていた

時間帯になると、無性にユミの声が聞きたくなって

涙が出てくるんだ・・・。


そんなボクをメンバーは放っておけなくて、ボーリングや

バッティングセンターに誘ってくれたけど、

必ず1人になる時間は来るわけで…。



でもみんなに迷惑をかけちゃダメだから、何とか笑った。



いつも通りの言葉で、twitterやブログに

ボクの笑ってる姿を載せたら、

ユミがどこかで見ててくれるに違いないと思ったから。


大丈夫な姿を、平気な姿を見せたら

キミが笑ってくれると、思ったから・・・。


いますぐには逢いに行けなくても、キミがどこかで笑っていてくれれば

ボクはいつかキミと再会する日まで、走り続けることが出来るんだ・・・。


そんな祈りを込めて、ボクは

キミがいない時間を過ごしたんだ。




7月7日 今日は七夕。


「織姫と彦星の話を、リナが昔してくれたことがあったな・・・。」


年に1回しか会えない彼らは、まるで今のボクとユミのよう。

いや、1年に1回逢えるだけでもいい。


ボクはユミにいつ会えるか、分からない毎日を

不安と空虚の中で過ごしていたから

ユミと会えなくなってから、まだ1ヶ月しか経ってないのに

もう何年も逢ってないような気分だった。



「ユミ・・・・・。」


キミの愛しい名前を呼んだら、またボクは泣いてしまうんだ。


ユミには泣かないでって言ったけど

ボクは泣かずにはいられなかった。


「ユミ…今頃、泣いてないといいな。」


ボクはたまらずにベランダに出た。

すると、ボクの目の前には美しい天の川が

雲の合間から広がっていた。


「わぁぁ。こんなにキレイなMilkywayはじめてだ…。」

ボクは涙をふくのも忘れて、しばらく眺めていた。


誰もいない空にボクは呟く。


ねぇ・・・ユミ。

ユミは今頃、ボクと同じようにMilkywayを見てる?

きっと、ボクたちの願い事を神様は叶えてくれるよ。

だって、こんなにキレイなMilkywayは初めてだから…。


そうだよね?神様…。

どうか、ボクたちをまた引き合わせてください。

ボクたちは運命を信じてるから…

きっと同じ未来を歩いていけますよね?



『ボクの祈りがどうか神様に届きますように!!!』




グァンスがユミの所から戻ってきたのは、翌日の昼すぎだった。



社長やスタッフに何とかばれることなく、彼は戻ってきた。

彼の表情の中には、「決意」が見えたから、

ボクもメンバーも、誰一人何も彼に聞かなかったんだろう・・・。



6月5日 16:15 仁川からタイ・プーケット行きの

飛行機の中に乗り込むと、彼はただただ静かに祈っていた。


いつか必ずユミを迎えに行くことが出来るよう、神に祈っていた。



それからボクたちはプーケットに到着すると

いつものように話をして笑ってみせて、平然を装った。


グァンスがボクたちにそうしたように

ボクたちもグァンスにそうするんだ。



だけど・・・・・・・「君だけは離さない」のPV撮影に入ると

感情が抑えきれなくなるグァンスとボクたちは全員で


やっぱり・・・・・・泣いたんだ。



事情を知らないスタッフたちは、どうしたんだろうと心配してくれたけど

涙が止まるわけがなくて、撮影は結局2日後からはじまった。




ボクたちは時に、自分が置かれている状況に反して

歌わなければならないことがある。


ボクたちは時に、自分が泣かずにはいられない時でも

笑わなければならないことがある。


ボクたちは時に、そんな場面に遭遇すると

いつもやりきれない気持ちになるんだ。



『いつも、虚しさだけが・・・・・・残る。』



だけどそんな時に、ボクたちに出来ることは「歌うこと」だけ。

なぜなら、ボクたちは歌手だから。



歌詞の言葉ひとつひとつに、想いを込めて歌う、ボクたち。



ボクたちが一生懸命作ったこの歌は

今のボクたちの置かれている状態・・・そのものだった。



今回離れなければならないのはグァンスとユミだけど

みんな自分のことのようだった。



みんな心の中に、大事な人がいたから

これほど心をこめて歌ったことはない。





今この瞬間トキを止めて 2人の間の距離を越えて
今夜はキミに会いに行くことができたらいいのに I miss you girl...

一人きり帰る道を 照らす小さな光
キミのいる街の空 同じ星は見えるの

瞳を閉じれば 浮かぶキミの笑顔...

離さないよ どこにいても キミのことを 想ってるよ
忘れないで 離れてても この気持ちは 変わらないよ
心はいつも そばにいるから 離さないよ どんな時も

キミがいる街は今は遠く 思い出すあの日の駅のホーム
涙をかくしてキミは笑った 本当の優しさの意味がわかった
ただ淋しさに堪えていた この街での日々にも慣れてきた
それでも1人 狭い部屋 今日もキミといる明日を描いてた

会えない時間が 愛しくさせるから...

伝えたいよ この想いを 遠くにいる キミのもとへ
今すぐには 会えないから こんな歌を キミに届けよう
この胸の中 キミがいるから 伝えたいよ この気持ちを

本当はいつも キミの隣にいたいのに ただ過ぎてくeveryday
キミに会えない日は この胸の中でずっと 消えない想いが
round round round and round ・・・・・

離さないよ (いつだって忘れない どんな時も Hold you tight)
どこにいても (また2人で再会 今越えてく Lonely night)

離さないよ (何があったってそう) どこにいても
キミのことを 想っているよ 
忘れないで (どんな時だってそう) 離れてても 
この気持ちは 変わらないよ
心はいつも そばにいるから 離さないよ (baby) どんな時も

会いたいと願いかける Anytime  

同じ空の下 everyday everynight

再会の日まで誓う Anytime

baby girl, I miss you everyday everynight...