上杉隆さんのジャーナリスト魂
◎記者の使命は権力監視
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
新進気鋭のフリージャーナリストの上杉隆さんの話の内容がおもしろい。「メディアと政治 付き合い方は?」というテーマで昨年末、東京新聞記者の取材を受けたもので、記事を再現すると─。
▽東京新聞(2007年12月25日記事) http://tinyurl.com/yskre9
[質問1]政治とメディアの関係を見ると、小泉政権はメディア戦略を駆使し、安倍政権もそれを踏襲。福田政権のメディア戦略はどうですか。
[上杉1]福田さん(康夫首相)の周りには、小泉さん(純一郎元首相)の飯島勲秘書官、安倍さん(晋三前首相)の世耕弘成補佐官のようにメディア対策を仕切る人がいません。そうした仕事は昔のように役人任せです。古い自民党政権のやり方に戻った感じがします。小泉政権はメディアを使って国民に訴えかける攻めの手法を取り、安倍政権はそれをまねして失敗しました。その反動か福田政権は守りの一点張り。メディア戦略自体がありません。
[質問2]宙に浮いた年金記録五千万件の四割の持ち主の特定が困難と分かった時、首相は「公約違反というほど大げさなことか」などと発言し、国民の反発を受けました。世論を甘く見てはいませんか。
[上杉2]福田さんは世論やメディアの動きに、常時、アンテナを張って、神経を鋭敏にしておく訓練をしていないから、ああいう危機的な状況に対応できないのでしょう。本心をそのままメディアに出す怖さが分かってない。善しあしは別にして、米国でも英国でもメディア対策抜きに政治は考えられず、政権運営の中心に据えています。福田政権は世論が政治を動かす現実に目をつぶっているとしか思えません。
[質問3]ところで、自民、民主両党の「大連立」騒動で、読売新聞グループ本社会長の渡辺恒雄氏が首相と小沢一郎・民主党代表の会談を仲介していたことが分かり、政治ジャーナリズムのあり方も問われています。
[上杉3]新聞社の主筆で、自らジャーナリストと宣言している立場にありながら、政治のプレーヤーになるのはどうなのでしょうか。昔はそれが是とされていた時代もあったので、それを引きずったままなのか。いまは時代が違いますし、世界中を見ても、政治のプレーヤーになって、ジャーナリストとして生き残れるのは日本だけです。もし海外で記者がそういう立場になったら、自らの体験を記事や本にします。でも、今回の騒動で本人はまだ全容を書いていません。国民は権力の行使や決定過程を知る権利があるので、絶対、書かなければいけないのに、どこを向いて新聞やテレビをつくっているのかと思います。
[質問4]取材対象の懐に入らないと、本音や真実は聞き出せません。かといって、それで批判できなくなれば使命を果たせない。政治家と記者のあるべき距離感とは。
[上杉4]最初から仕事は違うんだっていう緊張関係があればいいんじゃないですか。仲のいい政治家を批判して大げんかになったとしても、記者なら国民が知るべき情報は書く、政治家は公人だから書かれても仕方ないと割り切ることです。決して政治家と記者は友だちじゃない。そうした意識が必要です。日本の政治家の多くは自分の批判記事を書くか書かないかで、敵か味方か分けます。でも、こちら側は権力監視が第一の仕事だし、そのために取材しているわけです。政治家はそこが分かっていない。もちろん記者の方も、政治家と距離感を取れなければ失格です。
●私が気に入ったところは [上杉4]の、
「記者なら国民が知るべき情報は書く、政治家は公人だから書かれても仕方ないと割り切ることです。決して政治家と記者は友だちじゃない。そうした意識が必要です」という部分。
また、「こちら側は権力監視が第一の仕事だし、そのために取材しているわけです。政治家はそこが分かっていない。もちろん記者の方も、政治家と距離感を取れなければ失格です」の部分も足腰がしっかりしている。
まったくその通りだ。上杉さん、私たち市民はあなたのようなフリージャーナリストを待っていましたよ。ぜひ権力監視を続けて欲しい。今の組織内ジャーナリストはサラリーマン化して「牙」が抜かれている感じだ。いつまでも初志を忘れ ず、素朴な疑問と勇気を持って頑張って欲しい。
