今回の臨床例も前回同様、かなり過去のものであるけれど、興味深い例であるので取り上げる。生命力の持つ凄さの一例と思っていただけると幸いである。


 患者は40代後半・女性で、主訴は腰痛と肩こり、それと偏頭痛であった。とくに腰痛は酷くなると頭痛まで併発するほど、慢性化して苦労されていた。問診時でわかったことは、元々、喘息を持っており、C型肝炎にも罹っていた(インターフェロンが合わなかったそうである)。他の鍼灸整骨院に行かれていたが、担当の先生がいなくなり、他の先生の施術が自分に合わないということで、試しにうちに来院された。


 そこで重力線による姿勢分析と、C-3000という、コンピューターサーモグラフィーの器具を使用して、この患者さんの自律神経系の状態を調べてみる。このC-3000はアメリカで開発された、カイロプラクティック専用の機械であり、背骨の両側の温度を読み取って、その左右差をグラフにしてくれる。正常な状態であれば、左右差はほとんどなく、何かしら異常があると、温度の高いほうに長く、そして赤く出る(緑から黄色、そして赤の順で大きさが表される)。この機械は、それをパターンでも読み取って、それがその患者さんの「固有のパターン」であるかも教えてくれる。とくに、上部頚椎と呼ばれる、首の骨の一番上の施術には、この固有のパターンが出たときでないと、矯正してはいけないとされている。施術のやりすぎで、身体に負担をかけないように研究された理論である。


初回は2000年2月16日とある。


 さて、この方の重力線上のバランスは以下のような状態であった。


 

中心線が肩の後ろになっていて、首が前に突き出し、酷い猫背である。


後ろから見ると、全体的に右に傾いていて、右肩が下がってしまっているのがわかる。腰部の捻れもあり、影の左右が違うのがわかると思う。


そして、このときのC-3000による、スキャンの結果は、以下のようになった。


頚椎部の右側に酷い温度差が現れている。そのまま、上部頚椎を矯正して、すぐの姿勢は以下の状態。


幾分、背中が起きて、背筋が伸びているのがおわかりいただけるだろうか。

後ろからは、


こういう感じ。少し右への傾きは是正されているが、まだまだである。

この後、骨盤の仙腸関節や、頭蓋骨の矯正などを行い、最後に光線を照射して、初回を終わる。

この方は、初回からずいぶんと楽になったということで、自ら定期的に通って来られる様になった。ただ、重力線の安定が悪く、不自然であるので、「子宮に手術とかしていませんか?」とたずねたら、「言い忘れていましたけど、手術で摘出してしまって、無いんです。」とのことであった。男性と違って、女性の場合、子宮の影響は大きく、今回のように不安定なときは疑うことは必要である。


そして、それから約5ヵ月後の2000年7月3日の施術前の姿勢が以下の通り。


体がちゃんと起きてきていて、背筋が伸びているのがわかると思う。初回からこの日までの来院回数は16回となっているので、一ヶ月に約3回の割合でこの方は通院していたことになる。ほぼ自主的に予約してくれる理想的な患者さんであった。さて、後ろからの姿勢はというと、


背骨のポインターをつけていないので、慣れていない方にはわかりにくいかもしれないが、多少の傾きは残っているものの、左右の起立筋のバランスも取れてきていて、初回とは変わっていることがわかる。

このときの、C-3000の画像は、


である。施術前にもかかわらず、右の頚椎部の温度差が劇的に消えているのがわかると思う。

初回と五ヵ月後のC-3000の画像を並べると、以下のようになる。


身体にちゃんと手を入れてあげればこれぐらい変わるのである。この時点で、この患者さんは、喘息はほとんどでなくなっていて、今まで吸入器を手放せず、酷い夜には救急車で運ばれるぐらいであったのが、もう、そんなことはなくなった。腰痛も作業が続けば重くなるが、痛くなることもなく、それに伴って偏頭痛もほとんど無くなった。C型肝炎も、体表施術だけでは難しいのでサプリメントで対応してもらい、1年後には、数値がかなり下がった。担当医の先生は喜んでいたとのこと。これに関しては、指示通りにサプリメントを飲み続けてくれた、この患者さんの日々の努力の賜物である。完治にはいたらないが、そうやって押さえ込むことで危険率をさげることはできるという、よい例である。


姿勢がどうして病気とかかわるのか、ということは、機会を改めて書きたいと思うが、こうやって見ていただくと、人間の身体にある「生命力」というものの素晴らしさがわかると思う。カイロプラクティックはこの力を「先天的知能」と呼ぶ。我々が眠っている間も働き続け、日々、活動できる身体にしてくれている「もう一人のあなた」の存在がここにある。