むかーしむかーし あるところにw
太郎と次郎と言う兄弟が、両親と一緒に住んでおったそうじゃ
兄の太郎は、よそに行く時には
父親から 「天気がよさそうだから草鞋(わらじ)をはいつ行け」と言われ、
母親には「雨が降るかも知れないから下駄をはいて行きなさい」と反対を言われても、
左足に草鞋、右足に下駄をつっかかえて行くような、心の優しい親孝行者でした。
いっぽう、弟の次郎は「えいっ!面倒くさい!」と言って、裸足で出かけるような、粗暴で短気者でした。
そんな真逆な性格の二人の兄弟が、隣村の一人の娘さんに、なんと?同時に恋をしてしまいました。
娘は心優しい太郎が好きですから、時々二人はそっと会って、楽しく語り合っていました。
弟の次郎は、ますます娘さんに対する思いをつのらせ、どうしても自分の嫁になってくれと、
毎日のように言い寄るのです。そして、いよいよ力づくでも嫁にしてしまいそうになりました。
困り果ててしまった娘は、
「今晩、村はずれの地蔵堂で太郎さんと会う約束をしておりますので、あなたのお嫁さんになれるかどうか、明日返事しましょう。」と言って
その場は逃れました。
その晩、次郎はそっと地蔵堂の陰に隠れて待っていると、太郎らしい人影がお堂の前にやって来ました。
恋に狂ってしまっている次郎は、(太郎さえ居なければ娘は自分のものになるのだ)と考え、
ふいをつき全力で飛び出していき、短刀で心臓を一突きにしてしまいました。
その時?!ぱっと、牛頸山の峰に昇った十三夜の月あかりが、地蔵堂のあたりを照らし出しました。
血に染って倒れている人影をよく見ると、太郎だと思っていたのは、
なんと?!自分を恋に狂わせた娘さんだったのです。
ほんとうに太郎を愛していた娘は、太郎が親孝行であり、また弟思いであることも知っていましたが、
ひたむきな次郎の要求をこばみかねると共に、その性格も見ぬいていましたので、
自ら太郎の姿をして身代わりになったのでした。
自分が好きだった人を手にかけてしまった次郎は、はじめて娘の美しい心情を知り、涙ながらに改心を誓いました。
太郎と一緒に遺髪(いはつ)を貰い受けて、隣村が見える自宅近くに、手を合わせ埋めました。
そして、その上に二本の赤松の木を植え、田んぼの往き返りに季節の花を供えて、
娘さんの冥福(めいふく)を祈りました。
それから二人は一生嫁をもらわず、仲良く人々のために尽くしたということです。


