小野寺さんのお名前は本屋でよく目にしていた。きっと多くの読者に支持されている作家なのであろうと心の片隅で思っていた。
しかしながら、今回初読み。
小説好きな方には「今さら?」と言われそうであるが…。
読了して「どうしてこんなに良い作品を今まで読まなかったのかっ!」という後悔の気持ちが強い。つまり非常に良かったのだ。
主人公は鳥取から上京し大学に通うものの、両親を亡くし、大学を退学。
先がみえなくなった時に財布を覗くと55円しかなかった。
偶然店内を目にした総菜屋で販売していたコロッケ(50円)を買おうとしたが、これをおばあさんに譲り、店の主人の好意でメンチカツ(120円)を50円で売ってもらった。これがきっかけで、この店でバイトを始める。
2年後の調理師免許の取得を胸に秘めつつ、バイトに励む中で、親戚から母親の借金の返済を迫られ、その後もお金を要求されたりしたが、周囲のサポートもあって前を向いて生きていく青春小説。
私自身も18歳で就職し東北の田舎から静岡で働き始め、夜学に通う中で、周囲の学友(殆どが年上の社会人)や会社の先輩・同僚の好意で度々助けられ生きてきた。
“渡る世間に鬼はなし”という言葉が身に染みる人生であったと思っている。
そんな経験もあって、この作品には非常に感動した。
全作品を読みたい作家の候補に小野寺史宜が加えられたのは言うまでもない。