源 義経 (その三) (小説部屋投稿小説) | ******研修医MASAYA******

源 義経 (その三) (小説部屋投稿小説)

その後の牛若は源義経と名を改め、奥州平泉へと下り奥州藤原秀衡のところに身を隠していた。
兄頼朝が平家打倒の兵を挙げると、いち早く兄の頼朝のところに馳せ参じ、共に平氏を討つことを約束した。
一ノ谷の戦いの功績にて、後白河法皇は義経を左衛門少尉と検非違使少尉(判官)に任官し、従五位下の地位を与え院への昇殿を許した。
一ノ谷の戦いに勝利をおさめた義経は、京の町中を馬に乗り凱旋した。
京の町は、義経の姿を一目見ようと朱雀大路は黒山の人だかりになった。
人だかりの中、自分を見つめる一人の女に気づいたが、すぐにその姿は人混みの中に消えてしまった。その後暫くして、河越太郎重頼の娘(郷御前)と結婚した。


ある年、日照り続きで農作物が実らず、飢饉になるのも時間の問題であった。
そこで、後白河法皇は神泉苑にて雨乞いをしていた。
義経もその席に招かれた。
後白河法皇は100人の僧に読経させたが全く効果がない。
そこで100人の容顔美麗な白拍子に舞わせ雨を祈らせた。
99人まで舞わせたが効験がなかった。
しかし水干姿の静(静御前)が舞ったところ、たちまち黒雲が現れ3日間雨が降り続いた。
(美しいおなごだ、しかし、前にあったことがあるような気が・・・・)
義経はじっと靜の姿を魅せられたように見続けた。
静も舞いながら、義経の顔を微笑みながら見つめる。
二人の目と目が合ったその瞬間、義経は全身を貫くような心地よいしびれを感じた。

後白河法皇に、静を今夜の夜伽にとお願いした。


その夜は、静の舞いの念力で激しい雨が降り続いている。
激しい雨音の中、夜具を前にして二人は互いに顔を合わせて座っている。
義経も静も昔からの知り合いのように、懐かしさを感じながら微笑んでいる。
言葉は交わさないが目と目で会話している。
しばらくそんな状態が続いたのち、義経はしづかに口を開いた。

「静と申したな。以前どこかで会ったことがあるような気がするが・・・」
「ええ、一ノ谷の戦いの後、京の町中をお馬に乗られた凛々しいお姿をお見かけいたしました。」
はっと思い出す
(確かに、あのとき見つめる一人の女がいた・・)
「そうか、京の町中か。あのときの女が静だったのか・・・」

再び無言で見つめ合う。

襟元から眩しいほどに白い肌が見える。
胸の高鳴りを押さえつつ、じっと静の目を見つめる。
静も同じく見つめていた。
無言で静の体を引き寄せる。
静の肩を抱き、目を見ながらそっと唇を重ねると、静はまぶたを閉じ体の力を抜いた。
夜着の襟元より、そっと右手を滑り込ませる。
手に吸い付くような肌と弾力のある乳房が触れる。
静の体が熱くなり、上気した表情でかすかなあえぎ声がもれる。
そっと着物を肩から脱がすとしなやかな雪のように白い上半身が露わになった。
体の奥底から沸き上がる熱い感覚がどんどん膨らんでくる。
自らも着物を脱ぎ、静の体を抱きしめると理性を失ったかのように激しく静を求めた。
・・・・・・・・・・・・・・
一刻あまり経ったであろうか、静は腕の中で目を閉じている。
ふと、静の胸にある、かすかに赤い丸いアザがに目が止まった。
(はて、先ほどまでは無かった・・・)
なにげに自分の胸を見ると、同じようなアザが浮かび上がっている。
(不思議なこともあるものだ・・・)
「しずか」と呼ぶと、静は目を開ける。
「胸にある印はいつからあるのだ?」
静は急いでそのアザを隠した。
「子供の頃のことでございます。ある夜、光る玉を見つけて手にしたところ、金色に輝き胸の中に入ってしまいました。それからというもの心に念じて舞うと願いが叶うようになりました。そして体が温まるとこの印が浮かび上がるようになりました」
「そうか、静にも同じことが起きたのか・・・」
「え!義経様も?」
「そう、不思議なこともあるものだ。二人は前世より、強い絆で結ばれているのだろうか・・・」
静は嬉しそうに頬を自分の胸にあててきた。
そして再び、愛を確かめ合うようにさらに激しく互いを求めた。