氷女(ヒメ)伝説 (小説部屋投稿短編 その2)
将軍様がお犬さまを大切にされた頃。
信州の山奥、平家の落人が隠れ住む小さな山里に、名を丈太という若い木こりが住んでいた、。
丈太は木こりの仕事の合間に、炭を焼いていた。
山深い里で遊郭などもなく、ましてや結婚適齢期の女もいない。
楽しみといえば、唯一谷川でイワナを釣ることしかなかった。
今日も丈太はイワナを求め、いつもの谷川を上流に向かって清流の中をあるいている。
今年の夏はは例年になく暑い日が続き雨が少ない。
水かさも少なく水温も上昇しているのでイワナは全く釣れなかった。
丈太は冷たい水を求めて上流に向かって上り続けている。
どれほど上流に来たのだろうか、周りは見慣れない景色に変わっていた。
大きな岩壁を右に曲がると、突然、目の前に滝が現れた。
高さは7,8間ほどあるが、水かさが少ないので滝は元気がない。
滝壺なら魚がいるに違いないと、水音をたてないよう静かに近づく。
そっと釣り糸を滝壺にたらし、ふと滝をみると、後ろに小さな洞窟がある。
不思議に思いつつ近づいてみると、入り口の岩肌には、苔が生え所々読めないが
「氷女・交・・・生・・・永・乃命・・」と刻まれている。
(なんだろう?)
丈太は、その意味が判らないまま中に入った。
洞窟の中は、外の暑さを忘れさせるほどに涼しい。
(この奥には何があるのだろう?)
丈太は濡れた足下に注意しながらゆっくりと奥に向かって足を進めた。
洞窟内の壁は不思議な光を発し、ぼんやりと洞窟内を照らしている。
目を懲らせば明かりなしでも中の様子を見ることができる。
どれほど進んだろうか、もはや滝の音は聞こえない。
頭の上からは冷たい水がしたたり落ち、側面の岩壁を濡らす水は手が切れるくらいに冷たい。
吐く息も白くなり、思わず体が震えた。
急に広い場所に出た。
(何か居るのか?宝物でも隠してあるのか?)
丈太は目を懲らしてその広い洞窟内を見回すと、奥に誰かが横たわっているようにみえた。
息を殺し恐る恐るゆっくり近づいてみると、真っ白な着物を着た長い髪の女がて横たわっている。
(死んでいるのか?)
黒髪は膝に届くくらいの長さで、目は閉じ長い睫毛をいっそう際だたせている。
肌の色は透けるように白く、恐ろしいほどの美しさである。
しかし血の気は無く、唇も青白く精気はない。
これまで若い女とのつきあいもなかった丈太は一目で女を好きになり、立ちすくんだままその美しい姿に見入っていた。
(何か居るのか?宝物でも隠してあるのか?)
丈太は目を懲らしてその広い洞窟内を見回すと、奥に誰かが横たわっているようにみえた。
息を殺し恐る恐るゆっくり近づいてみると、真っ白な着物を着た長い髪の女がて横たわっている。
(死んでいるのか?)
黒髪は膝に届くくらいの長さで、目は閉じ長い睫毛をいっそう際だたせている。
肌の色は透けるように白く、恐ろしいほどの美しさである。
しかし血の気は無く、唇も青白く精気はない。
これまで若い女とのつきあいもなかった丈太は一目で女を好きになり、立ちすくんだままその美しい姿に見入っていた。
ふと我に返って、息があるか確かめるようと女の口元に顔を近づけた。
かすかに息をしている。
かすかに息をしている。
すると、女は弱々しいため息のような声を発した。
「もし、どうしました?」
かすかに瞼を開き、息絶え絶えに「あ・つ・い・・・・・、く・る・し・い・・・」と応えた。
「どうしたらいい?おいらはどうしたらいい?」
できるだけ優しい声で呼びかけると
「奥の氷の部屋まで運んでください」と弱々しく返事をする。
そう言われ、丈太はその女を抱えることにした。
(何と軽く冷たい体なんだろう)
間近に見る女の顔はますます丈太の心を虜にした。
あまりの軽さに驚きつつ、抱えたままゆっくりと奥に進む。
しばらくすると壁一面が氷に覆われた部屋にでた。
「ここでいいか?」
女も少し元気が出てきたようで「ええ」と答えた。
奥の平らな岩の上に、そっと女を横たえた。
しばらくすると女の顔つきが良くなったような気がした。
しかも不思議なことに、黒かった髪の色がだんだん白くなってくる。
それでも丈太は女の事が心配でじっと見つめていた。
突然、女は目を大きく開いて丈太の顔を見た。
その目を見た瞬間、丈太は金縛りにあったように体が動かなくなり、言葉も出なくなってしまった。
すると女は音もなく立ち上がった。
真っ白になった髪は膝のあたりまで伸びている。
「わらわの姿を見た者は命が無いのだが、そなたはわらわの命の恩人じゃ。一つだけ望みを叶えてやろう、何なりと申してみよ」
丈太は女が元気になったのを見て、心から嬉しくなり、相手が何者かも考えず、思わず「おらの、嫁さんになってほしい!」と答えてしまった。
女はそれを聞き驚いたように
「え!?」
「おら、あんたに惚れた!嫁になってくれたら死んだっていい!」
しばらくの間、女はじっと丈太の目を見ていた。
「そなたの望みは叶えてやることはできない、わらわと交われば命を失う。もし万が一そなたが命を失わなければ 、そなたは永遠の命を得ることになる。それでもいいか?」
「おら、死んだって構わない」
だんだん丈太は自分の心と体が燃えるように熱くなるのを感じた。
すると女の表情は穏やかになり 顔を丈太の顔に近づけてきた。
丈太も思わず顔を近づけると、女は丈太に口づけをした。
ぞっとするほど冷たい唇であったが丈太にとっては自分の思いが伝わったと感じ、両腕で女の体を抱きしめると、女は抵抗することもなく、丈太に体をあずけた。
寒さも冷たさも丈太には全く感じない、ただひたすら女を愛し続ける。
交わった瞬間、女は「あ・・・あつい!・・・くるしい!」と声を上げた。
それでも丈太は無我夢中で激しい動きを続け、果てた瞬間、意識が無くなった。
「もし、どうしました?」
かすかに瞼を開き、息絶え絶えに「あ・つ・い・・・・・、く・る・し・い・・・」と応えた。
「どうしたらいい?おいらはどうしたらいい?」
できるだけ優しい声で呼びかけると
「奥の氷の部屋まで運んでください」と弱々しく返事をする。
そう言われ、丈太はその女を抱えることにした。
(何と軽く冷たい体なんだろう)
間近に見る女の顔はますます丈太の心を虜にした。
あまりの軽さに驚きつつ、抱えたままゆっくりと奥に進む。
しばらくすると壁一面が氷に覆われた部屋にでた。
「ここでいいか?」
女も少し元気が出てきたようで「ええ」と答えた。
奥の平らな岩の上に、そっと女を横たえた。
しばらくすると女の顔つきが良くなったような気がした。
しかも不思議なことに、黒かった髪の色がだんだん白くなってくる。
それでも丈太は女の事が心配でじっと見つめていた。
突然、女は目を大きく開いて丈太の顔を見た。
その目を見た瞬間、丈太は金縛りにあったように体が動かなくなり、言葉も出なくなってしまった。
すると女は音もなく立ち上がった。
真っ白になった髪は膝のあたりまで伸びている。
「わらわの姿を見た者は命が無いのだが、そなたはわらわの命の恩人じゃ。一つだけ望みを叶えてやろう、何なりと申してみよ」
丈太は女が元気になったのを見て、心から嬉しくなり、相手が何者かも考えず、思わず「おらの、嫁さんになってほしい!」と答えてしまった。
女はそれを聞き驚いたように
「え!?」
「おら、あんたに惚れた!嫁になってくれたら死んだっていい!」
しばらくの間、女はじっと丈太の目を見ていた。
「そなたの望みは叶えてやることはできない、わらわと交われば命を失う。もし万が一そなたが命を失わなければ 、そなたは永遠の命を得ることになる。それでもいいか?」
「おら、死んだって構わない」
だんだん丈太は自分の心と体が燃えるように熱くなるのを感じた。
すると女の表情は穏やかになり 顔を丈太の顔に近づけてきた。
丈太も思わず顔を近づけると、女は丈太に口づけをした。
ぞっとするほど冷たい唇であったが丈太にとっては自分の思いが伝わったと感じ、両腕で女の体を抱きしめると、女は抵抗することもなく、丈太に体をあずけた。
寒さも冷たさも丈太には全く感じない、ただひたすら女を愛し続ける。
交わった瞬間、女は「あ・・・あつい!・・・くるしい!」と声を上げた。
それでも丈太は無我夢中で激しい動きを続け、果てた瞬間、意識が無くなった。
丈太は永い間美しい夢の世界をさまよっていた。
体は軽く空中を漂っている。
(おいらは、死んだのか?)
そう思うと、体が急に落ちていく。
静かに静かに落ちていく。
ふと目を開けてみると、自分の左腕の中で女が自分の顔を心配そうに見つめていた。