かなり長文です。

「平成終われど昭和は死なず。天龍革命の時代。」

 

【第一章:ガキにはわからない世間とプロレス。】
最初は、天龍という選手は好きではなかった。
ゴツゴツしたファイトで、
コーナーポストからエルボーでフィニッシュというのが、
なーんかカッコ悪く感じて、、
・・・・というか、スマートなファイトで、
ジャーマンや、バックドロップや、ドロップキックで
ケリをつけて世界のベルトを巻くのが<プロレス>

だと思ってたので、、、
当時それが少なくとも正統派というヤツだったのだろうけど、
そういう価値観なりスタイルのあり方を

全部ひっくり返したのが、天龍さんだったと思う。
いつしか、グーパンチ

(猪木さんの弓を引くナックルパートと一緒で厳密には反則です)
だけでグッとくる存在になってしまった。

 

鶴龍対決の時代。
彼は、ジャンボさんという怪物を覚醒させ
ハンセン・ブロディを”受けきり”
そして、天龍同盟という手荒いゆりかごで、
のちの四天王がはぐくまれた。
結局、全部ひとりで創ってしまったような印象すら受ける。

 

SWSの時に徹底的にアンチ天龍になった。
青臭い考えの当時の自分には、

その良さがさっぱりわかりませんでした。

 

【第二章:BI後の道を創る漢】
天龍さんが抜けた全日本。
そこから、大量離脱なにするものぞ!
という超・強力な”求心力”が発生する。
爆発的・圧倒的な鶴田対超世代軍の闘いへとつながった。
天龍さんが全日本を去るとき、

師匠馬場さんにあいさつをして、こう言ったそうだ。
「三沢たちも伸びてきてるし(自分がいなくても)もう大丈夫ですよ」
おっしゃるとおり、
その後、物理学者が計算したかのような
正確無比で、圧倒的な答えを目の当たりにすることになった。

 

格闘王、前田日明氏。
まだ、U旗揚げ前のころ。
硬いリングシューズで、顔面をガンガン蹴る
天龍さんのファイトスタイルに、
「自分たちがやろうとしてることを先にやっている」
と、強烈な焦燥感をもったという。
長州さんは、
「源ちゃんは、俺と似通ったものがあるよな。」
と、同志のたたかい模様を語っていた。

一点違ったのは

猪木越えを果たした長州さんがすぐに頂点から下山の用意に入った

リアリティの高いプロフェショナルだったのに対して、

天龍さんは頂点のない空へ昇り続ける伝説の竜だった点だろうか。

 

BIから、フォールを奪った男である天龍。
それは、勝ち負けというより、
彼らの存在そのものとの闘いではなかったかと思う。
影響力全開で、マット界を闊歩する漢であった。

 

【第三章:みえてきたかっこよさ。】
自分が、アンチ天龍を脱したのが、武藤さんとの闘いのとき。
当時の代表的ムーブ、スパイダージャーマンや
<自ら頭を強打しながらの!>雪崩式フランケンシュタイナー
(武藤さんは自分のDVD解説でこのシーン観て大笑いしていた)
を繰り出す姿に、
世間様のあれやこれやを、それなりに実感するようになった自分に、
ようやく彼のかっこよさがみえてきたのだと思う。
そして武藤さんは「彼(天龍)みたいなオヤジになりたい」とも語った。
対戦相手も魅了してしまうのだろう。
天龍さんも、やはり「後輩たちの中で、三沢と武藤は別格」と語る。

 

三沢さんたちが大量離脱したあと、全日本に還ってきた時。
ただただ純粋に、天龍さんの闘いを目撃したいと思った。
地元で行われたチャンピオンカーニバルの公式戦。

 

<天龍対川田>

 

最小限の照明・音響・会場設営だった。
そのなかで、ほとんど逆水平と蹴りだけの試合だ。
最後は天龍さんを場外へ蹴りだしてのリングアウト勝ち(!)
プロレスを地元で生観戦して、
あれほど、面白いと感じたのは後にも先にもない。

 

本人はこの後のノア参戦はあまり良い記憶ではないらしいが、
三沢さんらをはじめ、後輩たちとの闘いは
かつて、新日本へ飛び込んでいったときのような、
みずみずしい新鮮さに満ち、どれもかっこいい思い出だ。

 

【最終章:終わらぬ革命。バージョンUP】
引退試合の相手に指名したのは<レインメーカー>オカダ・カズチカ。

 

天龍さんが「プロレスを誰に引き継ぐのか?」
を、考えて出した、最高にかっこいい結論だったとおもう。
それは、天龍源一郎以後、ナニを軸にみていったらいいのか?
という問いかけに対する、本人からのアンサーだったとも思う。
プロレスとダンディズムのキー・ポイントは<引き算>だと思う。
天龍源一郎はその<引き算>の天才である。
全日本から、自分を引き算して凄い世界が現れた。
今度は、プロレス界から自分を引き算してみせた。
答えあわせはこれからである。

 

ラストマッチの天龍さん。
我が<偉人>は立っているのがやっとであった。
今後が心配になるほど、ひざが曲がらない。
グーパンチを打っても、自分のひざのほうがダメージを受ける始末。
それでも、最新式メインエベンターの最新式ムーブ、
低空ドロップキックを受けまくっていた。
かつて、
キングコング・ブルーザー・ブロディーの
コーナーポストからのキングコング・ニーを受けていた時と
その姿勢は、最後の最後まで変わらなかった。
攻撃なんてもう、ちゃんと出来ないほどの満身創痍。
ひざをついた相手へのジャンプのない、しかし、重い重い延髄蹴り。
コーナーを背に、ようやく持ち上げたBIを斬った伝説のパワーボム。
なんだそりゃ?たまらず、グッとくる。

 

天龍さんのプロレス人生はレインメーカーで終わった。
オカダは期待以上の介錯をしてくれたと思う。
試合後<伝説の漢>に深々と一礼する。
あんなに神妙な顔のオカダは、二度とみることはないと思う。
彼が闘い、そして”引き受けてしまった”のは、
天龍源一郎という存在をとりまく関係性のすべてだったのだから。

 

ひょっとして、

平成こそが、真の天龍源一郎時代だったのではないか?
書き終えて、そんな思いもよぎるのだ。
クレバーな彼が仕掛けた革命はこれからも年々バージョンUPしていく。

 

プロレスが生き残っていくためには

天龍革命のたゆまぬ進化しかないのでは?

などと、考えてしまう。