スーパー銭湯に限らず、多くの小売店がやっている定番サービス。
それが「ポイントカード」だ。

いわゆる顧客の囲い込みが狙いである。

スーパー銭湯では多様なポイントカードに出会える。
 ・昔ながらのスタンプカード。
 ・ちょっと分厚い、よくある磁気カード
 ・ペラペラの数字が書き換えられるリライトカード

今日のお話は、スタンプカードでのお話だ。
スタンプカードはわかりやすく、ご年配者に人気だ。

スタンプ2倍デーなんかやろうものなら、もう大変。

「ちょっと、ちゃんと2コ押してくれた?」
「ふたりできたから一気に4コも貯まってうれしいわ~」

みなさんホクホク顔である。
我々も喜んで頂けてうれしい。
笑顔はいいものだ。

で、忙しくて慌てたりするとスタッフも人間、うっかり2倍を忘れたりする。
もうたいへんだ。

「ちょっとあんた、今日2倍でしょ? 1コしか押してないよ!」

お帰りの際に怒られる。
いつもニコニコ温厚なおばちゃんが、烈火のごとくお怒りになられる。

ちなみに風呂屋仲間でこの話をすると、全国でも近畿圏(特に大阪)が激しいようだ。

もちろん、全面的にこちらが悪い。
平謝りの後、ポイントカードを預かって捺印する。

ちなみに大阪では「あんた、お詫びにもう1コぐらいサービスしいや!」とか言われることもあるらしい。

お友達同士で「わたしは●コ貯まった」「いやわたしは▲コよ」なんて楽しそうに競っておられる様子をみるに、皆さま真剣だ。

ちなみに大阪のおばちゃん達がこの会話をはじめるとコワイらしい。
眼が笑っていないそうだ。

…ポイントカードは、着実にお客様の心を捉えているようだ。
今日はお食事処、レストランのお話。

スーパー銭湯のレストランは大きく別けて2パターン。
 ・直営でやっているケース
 ・業者さんにお願いしている(委託)ケース

前者だと、昔のスキー場みたいなレンジでチーンばっかりか、
こだわりの料理店かどっちかになりがち。

後者だと、ファミリーレストラン的な「大衆食堂」なバラエティに富んだメニューに遭遇するだろう。
また「あ、このメニュー、他のお店でみた!」ってなことも多い。


さて、メニュー改定時のことだ。

全体的に食材の仕入原価が高騰しており、どうしても原価率があがる。
お値段すえおきが厳しいので、

 (1)内容をショボくする
 (2)販売価格を上げる

の2択で悩んでいたのだ。


以前他のスーパー銭湯でも料理の経験がある現料理長が言った。

「むかし、同じようなことがありまして、その時は

 (1)内容をしょぼくする

を選択しました」


「ほほぅ」
「おぉ、事例があるとは心強い」
「お客様の反応はどうでした?」

「お昼の御膳の原価がどうしても折り合わず、苦肉の策で海老を一回り小ぶりのものに変更しました」

「ふむふむ」

「改定当日いつもお越し頂いているお客様が、いつものように御膳を注文されまして…」

声が詰まる。

「お出ししてちょっとしたら、厨房まで怒鳴り込んでこられました」



「おい、海老がちっこくなっとるやないか!」



…それはもう、命がけの訴えだったそうです。


我々は、即座に(2)を選択したのだった。
スーパー銭湯の平日。
朝から夕方までの主力はご年配の皆さま。
ヘビーユーザーともなれば、毎日欠かさずご来店される方も少なくない。

ご挨拶も「今日 も おはようございます!」になり、
たまに来られない日があれば「昨日はどうしたんですか? 病院ですか?」
なんて言ったり。

まるで毎日ご来店頂けるのがあたりまえのように、我々も対応する。
こないと、心配になる。
「Aおばあちゃん足わるかったけど、また病院かな?」
スタッフや他のお客様と話す。
「わたし心配だから、お風呂帰りに家によってみるわ」
なんてこともある。


ここへ来れば、友達がいる。
毎日同じような時間にきて、顔を合わせていれば馴染みもできる。
それはスタッフでも、お客様同士でも同じこと。

気合の入ったお客様だと、10年ほぼ毎日通われておられる方もいる。
10年と言わずとも、数年通われているお客様はザラにいる。
洗い場で背中を流し合ったり、微笑ましい光景が見られることもある。
ここで知り合った方同士で旅行にいったり、カラオケいったり、飲みにいったり…
平日日中のスーパー銭湯はおもしろい。
もう、りっぱな地域のコミュニティと言っていいだろう。



あるとき、おばあちゃんが嬉しそうに笑って言った。

「ここはええよ、人様とお話できるからね。
家にいるとテレビの賑やかしでしかないからね」

おばあちゃんは独り暮らし。
愛する旦那様に先立たれ、近所のお友達もだんだん疎遠になって孤立していたそうだ。

世間から完全に浮いていた。
ぷかぷかと。

街を歩けばたくさんの人であふれているのに、おばあちゃんは独り。
そんなお年寄り達の社交場としてスーパー銭湯は機能しているのである。
まずは基本から。
なにごとも基本が大切です。

スーパー銭湯の原点は、その前に流行った健康ランドから入浴だけを取り出したような施設でした。

健康ランドみたいなすごい立派なお風呂に、低価格で入れる!
これがウリでした。

健康ランドの2000円前後の入館料に対し、スーパー銭湯は700円前後。
あっという間に庶民の支持を得て、健康ランドを駆逐して雨後のたけのこのごとく全国に生まれ続けました。

10年前、私が就職したての頃のブームはすさまじく、どの店も大賑わいでした。
テレビやラジオ、雑誌といったメディアも連日のように取り上げ、ちょっとしたお祭り騒ぎ。
ご近所のおじいちゃん&おばあちゃんから、週末のファミリー、出入りお断りのイレズミさんまで、ありとあらゆる方がお見えになられました。

で、増えれば競争は激化するもの。
珍しかったスーパー銭湯は日常の光景となり、最初は「わが町にもできたか!」と喜んで頂けたが周囲に2~3軒もできる頃には「またか」と言われる始末。

競争が激化するにつれて、お約束の「差別化」が叫ばれるようになり、流行に乗って作られた判で押したような施設は苦戦し、あれやこれやと新アイテムを追加した施設が生まれてきました。

当初はお風呂、ボディケア(マッサージのようなもの)、お食事処が三種の神器で、
すぐに散髪屋がよく見かけられるようになり、
家族風呂(地域によって許可が出たり出なかったりします)、福祉風呂、スポーツクラブなんかが付いていたり、バー、映写室、舞台、ドクターフィッシュ、ゲームコーナー…
もう思いつくものはなんでもやっとけ! 的な「差別化」が繰り広げられました。
最も成功したのは岩盤浴で、多くの施設が取り入れています。

なりふり構わぬ差別化が先祖がえりを推し進め、健康ランドからお風呂だけ取り出した…のに、ふたたびなんでもありの大型化、恐竜的進化の道を歩んでおります。

しかしながら入館料は700円程度が一般的で、健康ランドのように2000円も取る施設はほぼ皆無。

施設がでっかくなるということは、投資額もでっかくなるわけで、しっかりお金を落としてもらわないと立ち行かなくなる訳です。

初期のスーパー銭湯は投資回収も終盤にきており、キャッシュフローはよいが修繕費がかさみ、新型スーパー銭湯の台頭で集客力が落ち込みツライ。

新型店舗は華やかだが投資額が大きく、たくさん売り上げないとシンドイ。

なにも考えなくても勝手にお客様に来て頂ける時代は終わり、お客様を取り合う戦国時代の幕開けです。
はじめまして。
スーパー銭湯で働いているヒトです。

スーパー銭湯は大流行の時期を越え、成熟期を迎えています。
私は勤めて10年を超えました。

10年もやってりゃいろんなことがあります。
良い出会い、面白い出会い、つらいこと、悲しいこと…
素っ裸で風呂に入れば、ココロも裸になる。
するとホンネがこぼれ落ちる。
垢と共にグチも落とす。
お帰りの際には身体も心も洗い流されスッキリ笑顔。
それが銭湯。

そんな日常の出来事をボチボチ書いていこうと思っています。
茶飲み話にお付き合い頂ければ幸いです。