ムラサキさんから連日、TELが来る。

 

所謂、文句のTELだ。

 

三途の川の渡し船に片足を乗り掛けて、引き換えしてきたとは思えない程お元気だ。

 

ムラサキさんはつくづく、生命力があると感じる。

 

コンプラの時代 表現が難しいのだが、ムラサキさんはモテた。

 

若い頃の写真を見ると、広瀬すずさんに似ていて美しい。

 

結局、生涯愛人の立場だった。

 

奥ゆかしく、奥様と彼が別れてくれるのを待っていたが叶わなかった。

 

95歳の今も、とても綺麗だ。

 

令和ではタブーだが昭和はお妾さんや2号さんは、よく聞いたし

 

婚外子も珍しくなかった。

 

不倫、不倫といって皆で袋叩きにすることもなかった。

 

その人その人の人生の背負っている”荷物”に対して言う権利も無いし、

 

何の力にもなれない事を知っていたのかも知れない。

(不倫が良いと言っているわけではない。ムラサキさんの抱えた問題が愛人だったから

当然の報い、というのは問題が違うという事だ。)

 

恋に生き人々に礼儀を尽くした一生の今、人生のゴールに向かっている。

 

人気で順番待ちの施設でも、食事は不味く、医者に出ていけと言われ、オムツ交換も

 

放って置かれ、食事以外はベットに寝かしつけられる。

 

令和でも人手不足で、高齢化社会なのに まだまだ課題が多すぎる。

 

酷い病院から救えたと思っていたが、入所初日に掃除のおじさんから

 

寝ているところを突然襲われて、キスをされたそうだ、

 

ムラサキさんは認知症ではない。現実的なシュツエーションは少し違っても、

 

言っていることは「嘘」ではないと思う。

 

場合によっては、犯罪だ。

 

家人が施設長に話し、後見のA会が改善策を提案し、別の施設に移る事も検討中だ。

 

「こんな最後になって、闘わなくちゃいけないなんて。」

 

ムラサキさんには、見果てぬ夢があった。

 

家で倒れて救急車で運ばれ、病院で息を引き取るというシナリオだ。

 

そして、後始末を色々と尽くした(お金を払った)甥っ子、姪っ子にやってもらう。

 

だが、現実は甥っ子、姪っ子と絶縁し今、施設で不本意な生活を送っている。

 

愛人だったから、そういう目に合う、何て言うのはちょっと違うと思う。

 

人の一生とは何なんだろう。

 

より良い【 最期 】はどうやったら得られるのだろう。

 

一体【 尊厳 】とは、何処でどうやって、守られるものなのだろう・・・。