母の葬儀は家で行った。

 

行くはずだった個人宅を改装した、個人経営のデイサービスの社長さんに葬儀屋を

 

紹介してもらった。

 

その葬儀屋は とてもカンジが良かった。こじんまりとして、アットホームだった。

 

ウチの担当の Mさんは、課長で、多分そこはMさんだけが全てを熟知している人

 

だったんだと思う。

 

当時は悪徳の葬儀屋の事件が多く、余計な費用を取られないようにと慎重に気を付け

 

ていたが この葬儀屋は良心的で、Mさんは人間味溢れる人だった。

 

看病に疲れ果てて荒れた部屋を一緒に片付けてくれて、親身に話を聞いてくれて、

 

色々と相談に乗ってくれた。

 

Mさんのお陰で丁寧に、心を込めた葬儀が出来たと思う。

 

人生の、ほんのひと時の関わりでしかない職業だと思うが、このMさんの誠実さは

 

一生心に残る。ましてや母の葬儀なのだ。

 

母が入院していた病院は、医者も、看護士も みなプロフェッショナルさが欠けて

 

いた。全員がいつも風邪を引いていて、技術にムラがあった。

 

人としても、専門家としても、拙く 幼稚だった。母に真面に接してもらうために

 

かなりの説得とケアが必要だった。

 

だから、Mさんに大分救われた。

 

Mさんの奥様が仕出し屋を営んでいて『通夜振る舞い』と焼き場の『精進落とし』を

 

お願いした。

 

家人の親友夫婦と通夜振る舞いを食べた。仕出しの料理は心が籠っていて、久しぶり

 

に食べ物の味を感じた。(続く)