政府が、飲食料品の消費税率引き下げ(※報道では1%への引き下げを想定)に伴う救済策として、中小零細農家に対する売上高に応じた給付金の支給を検討していることが明らかになりました。減税によって影響を受ける事業者の不安を和らげ、円滑な制度移行を目指す狙いがあるようです。
しかし、このニュースの背景を深掘りしていくと、私たちが普段見過ごしがちな、日本の税制が抱える根本的な矛盾が浮かび上がってきます。
1. 本来の問題は「免税事業者」という仕組みにあるのではないか
今回の騒動の根底にあるのは、そもそも「免税事業者制度」によって、本来なら納税すべき消費税が事業者の手元に残る(あるいは価格転嫁の構造上、実質的な利益になる)という仕組みです。
日本の農業経営体の約85%が、売上高の基準等から免税事業者に該当しています。彼らの多くは、消費税が手元に残る、いわゆる「益税」的な構造を前提として経営を成り立たせてきました。
ここで生じる最大の不公平感は、「売上高の多寡によって、消費税の支払い義務がある事業者とない事業者に分かれている」という点です。同じように農作物を生産・販売していても、規模が小さいというだけで納税義務が免除される。この制度自体が、資本の論理や公平性の観点から大きなひずみを抱えています。
2. なぜ政府は「給付金」で穴埋めしなければならないのか?
消費税が減税(または引き下げ)されると、免税事業者がこれまで実質的に得られていた「手元に残る消費税分」が目減りします。政府が今回、売上高に応じた給付金でその「減収」を穴埋めしようとしているのは、まさにこの構造があるからです。
これを見た国民や税金負担をまじめに考えている人々からすれば、次のような疑問が湧くのは当然でしょう。
・「一体、政府は何がしたいのだろうか?」
・「なぜ、本来の税の仕組みの歪みを正すどころか、税金(財源)を使ってその歪みを補填(ほてん)するような真似をするのか?」
免税制度や益税構造を温存したまま減税を行えば、行政コストや給付金の管理の手間が増えるだけで、根本的な解決にはなりません。かえって「不公平な特例のツケを税金で払っている」という批判を招きかねないのです。
3. 多角的な視点から見る、この問題の難しさ
では、なぜ政府はこのような一見矛盾した対応をとらざるを得ないのでしょうか。いくつかの視点から整理してみます。
・食料安全保障と農家の限界の視点
現在の日本の農業は、高齢化と資材高騰(肥料・飼料・燃料など)で文字通り風前の灯火です。ここで「益税がなくなるから自己責任で」と切り捨てれば、多くの中小零細農家が廃業に追い込まれ、国内の食料供給基盤(食料安全保障)が崩壊しかねません。政府としては、食料品の価格高騰対策としての消費減税は行いたいが、農家のドミノ倒し的倒産を防ぐために「苦肉の策」として給付金を出す、という政治的なジレンマがあります。
・税制の公平性と激変緩和の視点
法理的に見れば「免税事業者への利益供与(益税)は不公平だ」という指摘はその通りです。しかし、急激に制度を変えれば、社会的な反発や現場の混乱は避けられません。改革を先送りし続けたツケが、こうした「減税+給付金」という複雑怪奇な政策パッケージを生む原因となっています。
結論:場当たり的な弥縫策ではなく、抜本的な制度改革を
消費税の軽減税率や免税事業者制度、そして今回の給付金構想は、どれも「複雑怪奇な日本の税制の歪み」を象徴する出来事です。
売上規模だけで税負担のあり方を歪め、その歪みを別の補助金や給付金で埋め合わせる――そんな「足し算と引き算のいたちごっこ」を続けていては、国民の税制度への信頼は失われていくばかりです。
政府には、目先の選挙や業界団体対策の弥縫策ではなく、「誰がどのように税を負担し、どう支え合うべきか」という一次産業・税制のグランドデザイン(根本的な抜本改革)を正面から示すことが求められているのではないでしょうか。