零語 -ゼロガタリ-
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2020年、12月1日。一人の女性が夜道を歩く。
「うぅ、さぶっ。なにもこんな時間に買い出しに行かせることないのにぃ...ん?これは...??」
あるのは一つのダンボールの箱。上の部分が異様な形に開き、一枚の簡単な紙がダンボールとダンボールの間に挟まっている。紙には 拾ってください と殴り書きで雑に書き込まれている。
「な、今時こんなシュールな」
中にはタオルが多層に何かに巻かれており、女性はほんの、ほんのわずかな興味本位でそれをゆっくり剥いでいく。剥いでいくにつれてタオルが少しずつ暖かくなっていく。
全てのタオルを剥ぎ終えたとこには、本当に、
「マジでぇ...??」
一人の赤子。生まれて数週間。一ヶ月も経っていないよう。
「ま、私もそうゆう職ですが、本当に見たことはなかったです。」
驚きの光景に女性は一人、カタコトに、敬語になっていた。
「ふぅ。んじゃ、行こっか。」
女性は慣れた手つきでタオルを結び、簡易なものを作る。そこに赤子を乗せ、一周。再び腹部で結ぶ。赤子の体重が自らの背にあるのを確認すると、買ってきた食材等を詰めたエコ袋を持つ。
「よ、いしょっと。んー、名前、きーめよっと。そだ、今日は12月だから...」
なんて言いながら一人呟きながら歩いてゆく。
「この子の名前は無冬。極月無冬。今日が12月なのと、今年は"冬が無い,,のでは、と言われてたのと、"冬しか無かった,,のではと思わせる突然の気温低下の二重掛けってことで!どう?」
場所は先ほどの道を少し歩いた所にある孤児院。
「なんか適当な気も...」
「気もしないっ!!これでもちゃんと考えたんだからっ!!」
「う、うん。。けど、まぁアナタが拾ったのだからアナタが考えたそれでもいいんじゃない?私はいいわよ?愛着湧いちゃうわね。」
「な、大丈夫!今まで、うん。いままでちゃんと見てきたから。。。」
「けど名前まで考えたのは始めてじゃない?」
「あ、そだねぇ...どうしよ優ちゃん!!私、」
「今日から立派なお母さんね。けど、しっかり勤めてね??」
「う~ん...」
「琴」
「ん?」
「失礼。お母さん?」
「え、優ちゃん!まだだよ!あ、まだ、じゃなくて違うよ??」
「まぁ、みんなのお母さんなんだからいいじゃない。」
「うんー...そだね!それでいこう!じゃ、私もっ!」
琴と言われた女性は優と言う名の女性に抱きつく
「な、ちょっと琴音!?まだこの子の検査終わってないでしょ!こんな時に、もう!ちょっと!」
優はかなりの力で抵抗しているようだがそれでも琴音なる人物は離れない。どうやら琴ではなく琴音だったようだ。
「フフーン♪優ちゃんあったかーい♪♪あ、でもこれもそうだね」
琴音は言ってることと矛盾した動きで、さらに優にしがみつく
「もぅ、琴ったら...早く、するわよ!」
優はほぼ全力の勢いで琴音を振りほどくと無冬を優しく抱え、体重計に移す。
「さっき帰ってきたところだから寒いんだよぉ、もうちょっとだけー」
またも体と言葉の動きが矛盾しているが、今度はしっかりしているようで、口ではごもごもしているがしっかり体重をノートに書き込む
「3208っと。この子意外と重たいね!」
「おんぶした時点で気付きなさいよ。。。」
口こそまーったりしているが動きは完全に慣れている。
「えーっ!!ムーくん、34度しかないよ!!?」
「いちいちおっきい声で言わないでこの子起きるわょ..え??」
体温計は34.2を示している。しかし、その子は別段顔色が悪いわけでもなく、むしろ室内に入ったことで顔色はさっきよりさらによくなっている。
「もっかい計る?」
「そうね。計り直したほうがいいわ。」
提案しつつも手は既に体温計を無冬の脇に差し込んでいるところだ。
「んー、そんなに低くしてないよね...ここ?」
エアコンは23°を示している
「んー、なんでだろ、、、いちお、これ」
優が渡したものは哺乳瓶。
「あーっ!ありがと!んーっ!優ちゃんあったかーい♪」
「あのね、それ哺乳瓶だから。変な誤解招くようなこと言わないでちょーだい。」
「私たち以外誰も居ないんだから誤解招くもなにも関係ないじゃん??」
「あ、それもそーね。けど、なんか恥ずかしいからやめて。」
「はぁーい。。あ!計測し終わった!」
「そーね、それで、体温は?」
「んー...また34...」
「えぇー!!?また!?これ、壊れちゃったのかしら。」
またも体温計は34.0°をさしている
「こーゆー体質なんじゃないのー??」
「んー、けど、低すぎるんじゃないの?いくら低くても35後半じゃない??」
「んー、ま、いいじゃん!ねーっ。私があっためてあげるー」
琴音は無冬をヒョイと抱えこむと哺乳瓶を口元に持って行く。無冬はそれをかぷっと咥える
「んー、けど、ちょっとねぇ...んーー...それにしても、少しは注意したのにね...」
琴音はすっかり愛着が着き、無冬に対し一人、話しこんでいる
「まぁ、それについては明日調べましょう。琴。私今日はもう寝るから琴もその子に飲ませたら早く寝なさいよ??」
「うーん!てゆーかこれもう三杯目なんだケド。ムーくん飲むのすんごく早い!って、はやっ!」
優は既にすっかりと寝入っている。
「ムーくん今日は私と寝ましょう。なに、狭いけど大丈夫ですよー」
そう言うと琴音は自らのベッドに無冬を連れ、一緒に寝た。
~三ヶ月後~
「ねぇ優ちゃん!ムーくん凄く成長早いよね!ね!」
「えぇ。恐ろしいくらいに。」
「恐ろしいなんて言わないで!」
確かに、二人の言うとおり無冬の成長は凄まじく、しかし、体は無冬の成長は全体には及ばず、体はまだ乳児のままだが、既に言語を解釈。五歳児のそれと変わらない語学力を有していた。
「もしかしてこの子の親、すーーーーっごく天才なんだよ!けど、」
「??けど?」
「天才ゆえに悪ーい組織に追われて、ムーくんを置いてしまうことに...」
「親の詮索はよしましょ。よくないわ」
「うん。そだねー。」
琴音は気の変わりが余程早いのか、数秒前まで暗かった表情が一変。すっかりケロッとしている。
(んー、それにしても、結局体温が異常に低い件は不明。医者に見せても分からない。体質としか言われない。この成長の速度も全く不明。んー、、、)
現在、この二人が勤めている孤児院には八人の子供が居る。その子の全てがこの二人自らが探し、生まれたての状態で発見。今まで育ててきている。
「よっ、お二人、元気してるかぁ?」
「あ、いんちょー!おはよーございます!」
「おはようございます院長。院長、今朝も遅刻ですか?院長は院長なんだから院長らしくしてください。」
「あぁーごめんごめん、いやね、今日もまたさぁ、」
「寝坊。ですね?」
優の目は院長を強く睨みつける。
「あ、えっと、その、、、うん。ごめんね?」
「院長。たまには、規則正しい生活をなさったらどうです?私たちの方がどちらかというと怪しいのに、全くです。」
「いやぁ、ほんとごめん!まぁ、で、ムーくんはどうなの?」
「んぁ、いんちょーじゃん。おはよーございますー」
「お、ムーくんおはよー。」
まだ首の座っていない状態から発せられる声はいつになっても慣れないものがあった
「いや、すごいね優ちゃん。あの子。三ヶ月であの成長。歩くころには漢字読みだすんじゃないか??」
口は冗談っぽく言っているが院長の目は据わっている。
「えぇ、なぜでしょう。あの子、何も教えてないのにあの成長速度。末恐ろしいものです。」
優もいつになく真剣に話す
「優の母さん、院長、答えは簡単だよ。俺が、"ヒト,,じゃないからだよ」
無冬が、静かに、力強く言い放ったその言葉の意味を二人はまだよく理解できていないだけだろう。と、そんな軽い見解で流してしまった。
さらに月日は流れ3年後
「インチョーさん。少しいいですか?」
「なぁーに琴ちゃん。琴ちゃんからお話なんて珍しいね、どうしたの?」
院長はいつもの軽い様子で話すが目は細く、鋭くなっている。真剣に、真面目な様子で琴音を見る。
「あの、ムーくんのことなんですが、」
「んー、このままじゃ、なんか変なの来そうたしね。いーよ。琴ちゃん。ムーくんの親権は琴ちゃんにわたすよ。話は僕から通しておく。」
「え、ほ、ホントですか...??」
「僕はこんな大事な話で嘘ついたことあらかい?」
「いえ、ないですけど...なんで」
「そんなこったろーと思ったからさ。君の無冬くんへの接し方はまさしく愛情だよ。それ以外のなんでもない。だからだよ。」
「は、はぁ。けど!ありがとーございます!私、頑張ります!」
「あ、それと、」
「?はぁーい?」
「今日からは琴ちゃん転居ね。僕がもう場所借りてあるから。とゆーか購入したったぁー」
「へ?院長えと、けど、何故そんなに?」
「僕のコネだよっ。へっへぇー」
院長の鋭い目つきは消え、いつもの緩い感じに戻っていた
「院長なにやってたんです?ここやる前」
「んー?なに、ちょっとね、いろいろとだよ。ふふん♪」
院長は自らの過去を一切話さない。いつもこーやってはぐらかす。
「は、はぁ。それで、転居地は、どこなんです?」
「うん。ここだよ。」
院長はメモ用紙を一枚琴音に渡す
「ありがとうございます。??ここですか?ここって、」
「そう。この院から三軒先の家だよ。職を失うこともない。もしもとなればすぐに無冬くんとも会える。メリットばーっかりだよ。」
「え、けどその他は、あの、土地代とか、」
「あ、そーゆーのは大丈夫。僕が払っておくよ」
「えぇーっ??院長それって、いいんですか?なんだか悪いです。」
「いーのいーのっ、僕がここまでするのは珍しいんだから、有難く思ってて?」
「はぁ、わかりました。で、転居はいつ?」
「今。」
「え?」
「うん。なうだよNOW。ひっこしなうなう」
「ちょっとなんでもかんでも急すぎません?」
「いーじゃんいーじゃん。善は急げって言うよ?知らない?」
「いや、そんなわけじゃないんですが、」
「じゃあいーじゃん。荷物まとめて。ほらほら」
言われるがまま院長のテンポに押され、荷物をまとめる。もともと院に寝泊まりしていたぶん荷物が少ないのでまとめるのに十分もかからなかった。
「でね、そんなわけで私、ムーくんと一緒に引っ越すことになっちゃった。優ちゃん。私、引っ越ししてもここで働くから大丈夫だよ!心配しないで!」
「え、えぇ。話が急すぎて詳しくはわからないけど琴、引っ越しちゃうのね。夜が寂しいわ。」
「優ちゃんだったらお泊りいーよ!」
「あら、ありがたいわね。週6で行かせてもらうわ。」
「意外とがっつくね優ちゃん!でも優ちゃんならいいよ!」
「まてまてふたりとも。俺抜いて話進めんなよ。おいーっ!!」
「私、こう見えて意外と強欲よ。こんだけ長く一緒に居るのに、分からないわけないでしょう」
「それもそーだね!私が夜寝た後に静かに私の布団入って私に抱きついてきたり、夜中私が寝た後に隠してた私のドーナツ食べたり、意外と強欲だもんね!」
「な、あなたね、私そんなことし、ししししてないわよ。」
「嘘付けーっ、私知ってるんだぞー!!へっへっへー。」
「おい、お二人。お二人。俺も居るんだぞ。忘れんな。おーい。おーい!おーい...」
二人の間にまだ齢3歳の無冬が頑張って入ろうとするが、二人にはまだ無冬の身長が足りず、高い効果を得れない
「はぁ、琴さん。早く行こうよ。外の人も昼寝してるよ?」
引っ越し屋の運転手は既に座席を倒し、抱き枕にしがみつきいびきをかきながら寝入っている。
「あ、あは、そ、それもそーだね。ムーくん、いこっか。」
「...やっとか、行こう行こう。おっさーん、起きてー!起きて起きてー!」
無冬は背が届かずドアノブの少し下を叩く
「ふふん、ムーくん。私がしてあげるわ。おじさーん。おくださーい」
口の緩さとは裏腹に窓を叩く腕にはかなり力が入っている。
「ん、フゴッ。な!これは失礼しました!今すぐお運びします!」
従業員はすぐさま飛び起き、荷物を持って行く。そこは、従業員なだけあって動きが早く。荷物をトラックに詰め終わるのに二分もかからなかった。
「これ、荷台に乗せて運んでもよかったんじゃ...」
「え、なんで?」
「だって、ここからたった三軒先よ。転居先。」
「え、移動する意味ある?」
「院長が、将来のことを考えて。だって」
「俺、そんな暴れねぇよ。」
「ムーくんはインドア派の人間だもんねー」
「悪く言うな。インドアじゃない。勉強に精を出しているんだ。外でだって遊ぶときは遊ぶぞ。」
「けど、私ムーくんがお外で遊んでるとこ見たことなぁいなぁー??」
「いや、まぁ、それは、気分次第ってやつだよ。今までは気乗りしなかっただけ。そーゆーこと。」
「じゃあ新しい家に着いたらお外で遊びましょー!」
「え、まぁいっか。。。めんどくさ」
「ムーくん!どこでそんな言葉を!」
「まぁまぁ。それよりおっさんまた寝てるよ。早く行こう」
「あ、ホントだわ!よっぽど疲れてるのね!早く行きましょ!」
再び窓を叩く。
「おじさーん!行こー!」
今回は眠りが浅かったのか数回のノックで目覚めた。
「ん、あ!ハイ!行きましょう!」
「えぇ、それでは、行きましょうか。」
「ったく、何分かかるんだよ」
「よぉーし!れっつごー!」
「待って、琴。最後に一つ。」
「なぁに?優ちゃんっ」
「月に1回は必ず、ヤるわよ。」
「ひっひっひー、一度ならず二度までも。何度でもやろう!」
「ふふ、言ったわね。なら、土曜、日曜は全てやらせていただくわ。」
「望むところだぁーっ!」
「しつこいぞお二人。行こうってば。」
「あ、あは、そ、そーだね。いこっかムーくん。んじゃ!れっつ!」
「...なんだ。」
琴音はなにかをずっと待っている。
「??早く行かないか。」
「ねぇムーくん。」
「ん?」
「レッツ。ときたらつぎは?」
「ん?ごーか?」
「それだよ!!なんでわからないの!」
「え、これ待ってたの?」
「もう!やり直し!フゥー、レッツ!」
「...っ、ごー」
「ん、んー、まぁいーわっ!おじさん!出して!」
「ん、はいよ。(なんだ。この茶番、マジ茶番。)」
(俺もそう思うよ。おっさん。)
-続く。かね?-
