私が転職したときのことだ。

ぶっちゃけ、人間関係などわからない。

普通は仕事の指示を受けて、そしてそれをこなすだけ。

そうして能力評価を得て、人間関係を構築していく。

そうしようと思っていた。




まあそんな中、10年程度先輩に「できる技術者」として評判の人がいた。

メーカー出身という私を手に入れて有頂天(?)だった周囲は、

当然、この人物の下に私をつけた。


最初、私はこの人を頼りにしようかな、と思ったが、

実力のない人だということは、初日でわかった。

たぶん、普通の技術者なら、誰でもわかると思う。

まあ判定の方法は放置しておくとして。




ただこの場合、問題なのは、この人物が、この組織内で



「できる技術者」



という評判を得ていたい。

そして、それを梃子にして、通常の社員以上の待遇を組織から得ていたい。

そういう人だったことだ。

しかし、この人に技術的な実力はない。

なんせ、EXCELの社内講師すら自信がなくて避けたほどの人物だ。

そして、それが私にできる(苦笑)と知って、嫉妬交じりの叱責を加えた人物だ。

おいおい。




従って、何をすれば、「できる技術者」でいられるのか、わからない。

そこに、この人のジレンマがあった。




彼のとった方策は、結局、「威張ること」だった。

いや、通常の意味で威張っていたのか、というと、常にそうであったわけではない。

そうではなくて、自分は凄い技術者なんだから、皆さん、私に遠慮してくださいね。

ああ、そんな仕事私にさせるつもりですか? 私は凄い技術者なのに?



だいたい、そういう感じで、威張り、偉ぶるという感じでは合った。

通常、こういう威張るだけで現実の業務をしない奴は排斥されるものだ。

が、技術的に無知な上司というのは、逆に、これを高い能力の表れとみた。



仕事を蹴られても

上司が召集した進捗会議に出なくても

やった筈のシステムが実は動かなくても



彼は常に、「凄い技術者」の位置をキープするために偉ぶっていて、

そして、それが通っていた。



彼は、手に余る仕事、というと、ほとんど全てだったろうが、

それがくる度に、そんな仕事はする価値もない仕事なのだと。

偉そうにご託宣していて、業務命令したはずの上司の方が、すごすごと去っていく。

なぜかわからないが、そんな関係性が続いていた。



まあそうなると、業務をこなす人間というのは煙たがられていて、

当時の組織では、業務命令があると、命令した方が理不尽であるかのように部下が上司に口答えして、部下でしかない彼に媚を売る。

そしてそれが正義で通っていた。

まるでヤクザの兄貴と舎弟みたいなものだ。


私は、それは間違っていると思っていたが、ことさらそれを暴こうとか思わなかった。

ただ、与えられた業務を完遂していた。

それが件の人物を追い詰めることになったのだろう。

次々と業務をこなす私を暗がりに引きずり込み、

○○さんの気持ちを考えたことがあるのか!

そう脅す人間が現れたとき、初めてそういう組織風土であることに気づいた。

ありとあらゆる嫌がらせがきており、私は基地外として扱うことになっていたようだ。



ああ、ぐだぐだ書いたが。



私は彼とは離れ、社内的には出世と縁遠い部署にいまではいるし、

かえって行動の自由ができたことを喜んでいる。

業務的には小さく、社内評価されることはまずなかろうが、

彼とのかかわりは、なるべく小さくしていたい。



まあそんな感じで、久方ぶりに、彼を知る人としゃべった。

どうも、彼はまだ、

「凄い技術者」

の仮面をかぶり続けているらしい。




いや、当人以外、誰もそんなこと思っていないのだが。

本当に、彼の苦労がしのばれる。






彼の消息を話したのは、

私は、電話一本で呼び出されて、インクジェットプリンタを直していた時のことだ。

それを話した人間は、私が、なんだか知らないが凄い資格の保持者であることを知っていて、

なんでパパスさんは、そんな仕事までするんですか。

などと聞いていた。



なんでだろう。

私の場合、それは反射的なものだ。

私の下に配属された新人も、最近、ときどき、パパスさんはしなくて良い仕事をしていると言い出す。

与えたプログラミング作業の完了報告は、ついに発しない口が。(苦笑)

しかし彼は無邪気に言っているだけであって、私の与えた仕事が、仕事であると認識できないのだろう。




どうだろう?

私は彼に、それは違う。

などと、この組織の風土と異なる意識を植え付けるつもりはない。

それは彼を幸せにはせんだろうから。


この組織風土にどっぷりつかった人には、

件の威張る先輩技術者のほうが、よほど理解できるのかもしれない。



威張る人は偉いか?

威張って仕事を蹴る技術者は、本当に偉くて、能力があるのだろうか。

なーどと、駄文を書いてみた。

オチはない。