うーん、彼女がそう言うんなら任してみようか。

「それもそうか、じゃ食べたいのは・・・」

 パン

  おにぎり

  →弁当

うん、弁当にしよう。栄養バランスとかその辺の意味で。

「じゃあ弁当で」

俺がそう言うと彼女は「わかったわ」とだけ言って、単身で腹をすかした野獣の群れに突っ込んでいった。

彼女、TERUの身長は低い。いや、かなり低い。

あくまで推測だが、145cmほどだと思う。

そんな彼女が人ごみの中、しかも男子生徒が圧倒的に多い、に入っていけば姿が見えなくなるのは当たり前のことだろう。

そして彼女が人ごみの中に入って行って2、3分後、彼女はすっと人ごみの隙間から抜け出てきた。

「はい、これ」

彼女の手にはよくみるプラスチックで出来た蓋に、ノリと書かれた薄い弁当だった。

「選択肢、これしかなかったわ、のり弁ね」

別にいいよ、ありがとう、と俺は言って彼女の持つ弁当を受け取った。

「ところで、いくらだった?」

俺は財布をポケットから取り出しながら彼女に聞く。

「400円ね、意外に安いでしょ?」

確かに、学生のことを考えたのだろうか、弁当箱はそのキャパシティ限界までにご飯が詰められていて、おかずの種類もそこそこに豊富。

しかも手作り、と考えると割りと破格の値段なのかも知れない。

はい、と財布の小銭入れから百円玉を4枚取り出し、彼女の小さめな手に落とす。

「どうも」と彼女は手のひらに落ちた400円を自分のスカートのポケットに落とした。

ん、ふと気になることがあった。

「君は昼ご飯どうするの?」

彼女は何のことやら、といった表情をしていた。

「どうするって、食べるに決まってるじゃない。授業中にお腹鳴るの、嫌だし」

いや、そう言う意味だけど、そうじゃなくて。

「あー、何を食べるのって意味」

俺がそう言うと、彼女は「あっ」と言い、しばらくの沈黙。

「なによ、これからまたあの中に入るつもりだったのよ、決してあんたの分を買うのに必死で、自分のご飯を買うのを忘れてたわけじゃないから」

別に聞いてもないことまで彼女は答え、先程よりは縮小された人ごみへと入っていったが、今度は先程より早く人ごみから抜け出てきた。

「どうしたの?」

なんとも言えない表情をした彼女に俺は尋ねる。

「・・・ったの」

え?

「なかったって言ってるの!!」

彼女は顔を赤くしてそう答えた。心なしか涙目である。

「あー・・・、なんかゴメンね」

俺が頼んだせいであることもあり、謝罪はすることにした。

「いいわよ、クラスの友達に分けてもらうから・・・」

少し悲しそうにした声を出しながら彼女は踵を返した。

「あっ・・・!」

思わず声が出た。

何を言うつもりだったのか、何をするつもりだったのかは、明確にはわからないが恐らく・・・。

「・・・何よ」

振り向き、恨めしそうな顔をしている彼女に俺はこう言おうとしたんだろうと、予想して言葉を紡いだ。

「俺の弁当、半分食べる?」

と、彼女が先ほど買ってきてくれたのり弁を指さして言う。

「いいって、それはあんたの弁当だし」

彼女はそう言うも、ぐ~、と彼女のお腹が鳴ったのか、彼女が顔を逸らしたのを俺は見逃さなかった。

「いや、でも買ってきてくれたのは君だし、何か俺が原因でもあるから、それに・・・」

「それに、なによ」

「困ってる女の子を目の前に、見過ごすわけにはいかないかな、なんて」

俺は少し照れくさくなって頭をかいた。

「・・・仕方ないわね」

え?

「あんたがどうしても私に半分食べて欲しいならそうしてあげるわ」

と、彼女は斜め上に顔を逸らしながら俺に言う。

別に食べて欲しいとは言ってないが、いや、うーん、まぁいいか。

「半分食べてください」

俺がそう言うと彼女は目を細め、微笑みながら「じゃあ貰うわ」と言った。

こうして俺と、隣のクラスの学級委員『TERU』は互いに関わるようになったのだ。

―――――――――――――――――――――

昼休みも終わろうとしている時、俺とTERUは屋上で昼ご飯を食べ終わり、互いの教室に帰る途中だった。

「でも本当に良かったの?半分じゃ足りないんじゃない?」

TERUを見上げてそう言う。

「まぁ、正直足りなかったけど、授業中に腹がへる程度のもんじゃないからいいや」

「そう?そうなら私もいいけど・・・」

ちなみに屋上で食べた理由は、彼女が「クラスの人に誤解されたら嫌だから」と言ったからである。

俺も屋上でごはんを食べる事はやってみたかったので文句は言わなかった。

「それじゃ」

彼女の声で気がつけば、B組の前まで来ていたようだ。

「うん、じゃあね」

俺がそう言うと、彼女はB組のドアを開け、クラスの中に入る途中、何故か立ち止まった。

そして小さな声で「・・・ありがとね」とだけ言い、強く、教室のドアを閉めた。

俺自身としては確かにそう言ったのかは自信がなかったので、もう一度聞きたかったが、彼女は多分、答えないだろう。

まぁいいか、と自分のクラスに入っていった。




続くんじゃないんでしょうか

なんか、三日坊主なやろうでごめんなさい

んじゃまた