やっと、文庫本になったので、早速購入して、読んでみました。本屋大賞になっているので、ちょっと気にかけていました。さらに、6月には、映画が公開されるみたいですね。たぶん主人公は、山崎賢人さんなんですね。”一週間フレンズ”の主人公長谷君を演じた時は、ちょっと頼りなく・・・でもこの外村を演じるのは、ぴったりかなとも思う。

 

これは、主人公外村の成長物語だ。高校生の時にひょんなことから、ピアノの調律師を体育館に案内して、その仕事ぶりを見て、自分の目指すものが見つかったのだ。

そこから、調律師としての奮闘が描かれている。

 

それにしても表現力が素晴らしい。目を瞑れば・・・森の香り、ピアノの音色が聞こえてきそうだ。五感に訴えかけてくる・・・。

 

P91~あたりにこんな記述がある。

”なだらかな山が見えてくる。生まれ育った家から見えていた景色だ。普段は意識することもなくそこにあって、特に目を留まることもない山。だけど、嵐の通り過ぎた朝などに、妙に鮮やかに映ることがあった。山だと思っていたものに、いろいろなものが含まれているのだと突然知らされた。土があり、木があり、水が流れ、草が生え、動物がいて、風が吹いて。

 ぼやけていた眺めの一点に、ぴっと焦点が合う。山に生えている一本の木、その木を覆う緑の葉、それがさわさわと揺れるようすまで見えた気がした。”

 

ピアノの音色をこんな風に表現しているのだ。

さらにそこから、深い魂の世界へ入り浸るのだ。

少年期に森の中に入り浸っていたあの頃のことを思い出しながら・・・

 

主人公外村が、P92~あたりに、こう言っているのだ。

”自分が迷子で、神様を求めてさまよっていたのだとわかる。迷子だったことも気づかなかった。神様というか、目印というのか。この音を求めていたのだ、と思う。この音があれば生きていける、とさえ思う。十年も前に森の中で、自由だ、と感じたあのときのことを思い出す。身体から解き放たれることのない不完全さを持ちながら、それでも僕は完全な自由だった。あのとき、僕のいる世界の神様は木であり葉であり実であり土であったはずだ。今は、音だ。この美しい音に導かれて僕は歩く。”

 

このとき、外村が自分の歩く道が完全に見えた時なのかもしれませんね。