ドーナツ | BOOKMAN

ドーナツ

ポチャン
平べったい石が水の中に沈んだ。
「はぁ」
深いため息。
噴水の周りをまるいベンチが囲んでいる。
この公園の噴水はきれいだが、彼の心は沈んでいる。
ポツポツポツポツ
ベンチの下の砂利を掴み、噴水に投げ捨てた。
ネクタイを緩め、ワイシャツの腕を捲り、腕を水に浸す。
「冷たい」
彼の目の前に鳩がきた。小石をつついている。
「おいで」
彼が手を差し出すと、鳩が彼に向かってきた。手招きしようと手を動かした瞬間鳩が飛んでいった。
近くで飛行機が飛んだ。
「あーーーーー」
大声で叫んだが、飛行機には勝てない。
「はぁ」
またため息。
「ほら、走ると転ぶぞ」
二人の子どもと男性が一人、噴水に向かってきた。
「わぁー」
勢いよく噴水に飛び込む二人の子ども。
彼の背中に水がかかり、シャツが透けた。
「あっ、すいませんっ。大丈夫ですか」
慌てて走る男性。
「大丈夫ですよ。もう濡れてましたから」
「本当にすいません。。お前らこっちこい」
噴水ではしゃぐ二人を彼の前に連れてきた。
「ほら、謝りなさい」
さっきまではしゃいでた子どもとは思えないほどしょんぼりしている。
「ごめんなさい」
二人の子どもは手を繋いでいる。
「大丈夫だよ。おじさん怒ってないから」
上手く笑顔をつくろうとしている。
「お前らちょっとそこで座ってなさい」
行儀よくベンチに座る子どもたち。
「本当にすいません、弁償しますので」
申し訳なさそうな顔をした。
「いえいえ、安物なんで大丈夫ですよ。子どもはあれぐらい元気じゃなきゃ駄目ですよ。」
さっきまで行儀よくベンチに座っていたはずの二人の子どもは、噴水ではしゃいでいる。
「元気すぎるのも困りもんですよ」
彼の横に男性が座った。
「すいません、私もう行かないと駄目ですので」
「あぁ、そうですか。本当に弁償しなくて大丈夫ですか」
「えぇ、大丈夫です。ではまた縁があったら」
無理に笑顔をつくった。
「はぁ」
深いため息。
彼の目の前に鳩が飛んできた。