その時は
「優太っ、優太っ」
母の声が聞こえる。
「う、うーん」
光が眩しい。
「珍しいわね。いつもは目覚まし時計が無くても、勝手に起きるのに。もうそろそろ起きないと遅刻するんじゃないの」
と言いながら、床に落ちていた教科書を机の上に置いた。
「えっ」
壁に掛かっている時計を見た。間に合う時間だが、ゆっくりしていると遅れるかもしれない。
「何かあったの」
と言いながら、部屋の窓をあけた。
「別に」
「ふーん。じゃあ朝ご飯出来てるからね」
「あぁ」
着替えをし、部屋を出てリビングに向かった。イスに座り、背伸びをした。
食卓には豪華でもなく、質素でもない食事が並べてある。
「親父はもう行ったの」
食卓の向かいの茶碗や皿には、誰かが食事をした跡がある。
「うん。お父さん出掛けてから、優汰呼びにいったから。」
少しほっとした。
歯を磨いていると、食卓に置いていた携帯電話が鳴った。五秒ぐらい、着信音1が鳴り響き、止まると携帯電話の一部が緑色に点滅した。歯を磨き終え、携帯電話を見ると渡辺のようだ。靴を履きながら、渡辺に電話をした。
「もしもし、優汰くん。」
透き通るような声は、電話越しでもほとんど変わりはないが、透き通るような声は、いつもより弾んでいる。
「うん、電話したよね」
片方の靴を履き、踵を直した。
「うん、今どこにいるの」
なぜか、ドキッとした。
「い、家にいる」
なぜか、悪いことをしているように思えた。
「良かった。優汰くんならもう学校に着いてると思ったんだけど」
「どうしてまだ家にいるの」と聞かれそうな気がして、慌てて言葉を飛ばした。
「たまにはゆっくりしようと思って。それで、何で電話してきたの」
なぜか、正直には言いたくなかった。
「一緒に学校行かない。いろいろ話したいし」
一緒に学校に行くと、また学校の奴らに何か言われるのではないかと思ったが、今の渡辺には断わりづらかった。
「あぁ、分かった。じゃあ昨日の公園で待ってて」
喋り終えると同時に携帯電話を左手から右手に変え、もう片方の靴を履いた。
「うん、待ってる」
確かに端から見れば、付き合ってると疑われても仕方がないなと思った。
いつもと同じ道を歩いて行く。この道を何百回も通って来た。あと何回通るのだろう。当たり前な風景だったけれど、飽きることは無かった。
飯を食べるように歯を磨くように風呂に入るように寝るように、この道を歩くことは、日常の一部にあったから。
母の声が聞こえる。
「う、うーん」
光が眩しい。
「珍しいわね。いつもは目覚まし時計が無くても、勝手に起きるのに。もうそろそろ起きないと遅刻するんじゃないの」
と言いながら、床に落ちていた教科書を机の上に置いた。
「えっ」
壁に掛かっている時計を見た。間に合う時間だが、ゆっくりしていると遅れるかもしれない。
「何かあったの」
と言いながら、部屋の窓をあけた。
「別に」
「ふーん。じゃあ朝ご飯出来てるからね」
「あぁ」
着替えをし、部屋を出てリビングに向かった。イスに座り、背伸びをした。
食卓には豪華でもなく、質素でもない食事が並べてある。
「親父はもう行ったの」
食卓の向かいの茶碗や皿には、誰かが食事をした跡がある。
「うん。お父さん出掛けてから、優汰呼びにいったから。」
少しほっとした。
歯を磨いていると、食卓に置いていた携帯電話が鳴った。五秒ぐらい、着信音1が鳴り響き、止まると携帯電話の一部が緑色に点滅した。歯を磨き終え、携帯電話を見ると渡辺のようだ。靴を履きながら、渡辺に電話をした。
「もしもし、優汰くん。」
透き通るような声は、電話越しでもほとんど変わりはないが、透き通るような声は、いつもより弾んでいる。
「うん、電話したよね」
片方の靴を履き、踵を直した。
「うん、今どこにいるの」
なぜか、ドキッとした。
「い、家にいる」
なぜか、悪いことをしているように思えた。
「良かった。優汰くんならもう学校に着いてると思ったんだけど」
「どうしてまだ家にいるの」と聞かれそうな気がして、慌てて言葉を飛ばした。
「たまにはゆっくりしようと思って。それで、何で電話してきたの」
なぜか、正直には言いたくなかった。
「一緒に学校行かない。いろいろ話したいし」
一緒に学校に行くと、また学校の奴らに何か言われるのではないかと思ったが、今の渡辺には断わりづらかった。
「あぁ、分かった。じゃあ昨日の公園で待ってて」
喋り終えると同時に携帯電話を左手から右手に変え、もう片方の靴を履いた。
「うん、待ってる」
確かに端から見れば、付き合ってると疑われても仕方がないなと思った。
いつもと同じ道を歩いて行く。この道を何百回も通って来た。あと何回通るのだろう。当たり前な風景だったけれど、飽きることは無かった。
飯を食べるように歯を磨くように風呂に入るように寝るように、この道を歩くことは、日常の一部にあったから。