その時は
昇降口へ向かった。昇降口の扉を開け外へ出た。すぐ目の前にある短い階段に、誰かが座っている。肩をそっと叩く。
「あ、優汰くん。」
渡辺美紀。
「ごめん、少し遅くなった。」
「ううん、こっちこそ呼び出してごめん。」
「いや、別にいいけど。じゃあ帰るか。」
「うん、ありがとう。」」
すくっと立ち上がり、カバンを背負った。肩に少しかかる髪が、少しの風できれいになびく。
渡辺が、俺を呼び出すのは珍しいことではない。小学校の頃から、何度も相談を受けてきた。多分今日も、何か相談したいことがあるのだろう。
二人は、校門を出てからずっと無言。相談をされる素振りはない。相談されるときはいつも数分、沈黙が続く。
俺からは話しかけず、渡辺から何か話すまで待つのが鉄則。
だが今日は、十分経っても、二十分経っても何も話さない。これでは家についてしまう。鉄則も何もあるか。空気を変えようと、今まで気になっていたことを質問してみた。
「あのさ、渡辺。」
「えっ、なに。」
「お前ってさ、いつも俺に相談するじゃん。」
「うん。」
「どんなことでも。」
「うん。」
「何で。」
「えっ、何でって。」
「だって、相談するなら良樹とかのほういいんじゃない。あいつなら真面目だし、ちゃんと相談に乗ってくれそうだし。」
「確かにりょうちゃんなら、ちゃんと相談乗ってくれそうだね。」
「じゃあなんで。」
「小学校四年生ぐらいのときに、優汰くん、私を保健室に連れて行ってくれたことあるでしょ。」
「うーん。そんなことあったっけ。」
思い出せない。
「ごめん、優汰くんの性格じゃ覚えてないよね。」
悪気は無いようだが、たまに少し腹が立つことを言う。
「それ、今の話と関係ある。」
「うん。長くなるから話さないけど、りょうちゃんに相談すると空回りしてしまいそうなんだ。」
「空回りか。」
確かにそういう部分もあるかもしれない。それより、どんな話しなのかが気になる。
「あとからりょうちゃんに聞いてみて。」
「あ、あぁ。」
そう言われたら、あとから良樹に聞くしかない。
「じゃあ、佳代とか結子さんは。」
「二人に話すのは少し恥ずかしいんだよね。普通は女子同士で恋愛のこととか話すと思うけど。」
「ふーん、そうか。」
何も言うことが無くなった。
「優汰くんだったら仲いいし、誰にも言わないでしょ。」
「誰かに言う必要あるか。」
「フフッ、そうだね。優汰くんに相談するのは、そういうところだよ。」
「えっ、そういうところってどういうところ。」
「フフッ、それを聞くところ。」
渡辺の言っている意味はよく分からないが、空気は良くなった気がした。
「あ、どうしよう。」
「ん、なにが。」
渡辺が前を指差した。指の方向に、顔を向けた。その先には交差点があった。。
渡辺は、横断歩道を渡った先に、俺は、そのまま道なりに進んだところに家がある。だが今日話さないと、渡辺も話しづらいだろう。
「じゃあ、あそこの公園で話すか。時間大丈夫なら。」
交差点のすぐ側にある、公園を指差した。あそこなら、人通りも少ないだろう。
「私は大丈夫だけど。優汰くんは大丈夫なの。」
「どうせ家に居たってすることないし。」
「ごめん、ありがとう。」
「あぁ、別に。」
ごめんとありがとう。渡辺は口癖のように、この二つの言葉を使う。
感謝すること
それは、自分のこころを相手に見せることである
感謝せよ
それが、正直に生きることである
これは誰の言葉だっただろうか。
思い出せそうもない。
「あ、優汰くん。」
渡辺美紀。
「ごめん、少し遅くなった。」
「ううん、こっちこそ呼び出してごめん。」
「いや、別にいいけど。じゃあ帰るか。」
「うん、ありがとう。」」
すくっと立ち上がり、カバンを背負った。肩に少しかかる髪が、少しの風できれいになびく。
渡辺が、俺を呼び出すのは珍しいことではない。小学校の頃から、何度も相談を受けてきた。多分今日も、何か相談したいことがあるのだろう。
二人は、校門を出てからずっと無言。相談をされる素振りはない。相談されるときはいつも数分、沈黙が続く。
俺からは話しかけず、渡辺から何か話すまで待つのが鉄則。
だが今日は、十分経っても、二十分経っても何も話さない。これでは家についてしまう。鉄則も何もあるか。空気を変えようと、今まで気になっていたことを質問してみた。
「あのさ、渡辺。」
「えっ、なに。」
「お前ってさ、いつも俺に相談するじゃん。」
「うん。」
「どんなことでも。」
「うん。」
「何で。」
「えっ、何でって。」
「だって、相談するなら良樹とかのほういいんじゃない。あいつなら真面目だし、ちゃんと相談に乗ってくれそうだし。」
「確かにりょうちゃんなら、ちゃんと相談乗ってくれそうだね。」
「じゃあなんで。」
「小学校四年生ぐらいのときに、優汰くん、私を保健室に連れて行ってくれたことあるでしょ。」
「うーん。そんなことあったっけ。」
思い出せない。
「ごめん、優汰くんの性格じゃ覚えてないよね。」
悪気は無いようだが、たまに少し腹が立つことを言う。
「それ、今の話と関係ある。」
「うん。長くなるから話さないけど、りょうちゃんに相談すると空回りしてしまいそうなんだ。」
「空回りか。」
確かにそういう部分もあるかもしれない。それより、どんな話しなのかが気になる。
「あとからりょうちゃんに聞いてみて。」
「あ、あぁ。」
そう言われたら、あとから良樹に聞くしかない。
「じゃあ、佳代とか結子さんは。」
「二人に話すのは少し恥ずかしいんだよね。普通は女子同士で恋愛のこととか話すと思うけど。」
「ふーん、そうか。」
何も言うことが無くなった。
「優汰くんだったら仲いいし、誰にも言わないでしょ。」
「誰かに言う必要あるか。」
「フフッ、そうだね。優汰くんに相談するのは、そういうところだよ。」
「えっ、そういうところってどういうところ。」
「フフッ、それを聞くところ。」
渡辺の言っている意味はよく分からないが、空気は良くなった気がした。
「あ、どうしよう。」
「ん、なにが。」
渡辺が前を指差した。指の方向に、顔を向けた。その先には交差点があった。。
渡辺は、横断歩道を渡った先に、俺は、そのまま道なりに進んだところに家がある。だが今日話さないと、渡辺も話しづらいだろう。
「じゃあ、あそこの公園で話すか。時間大丈夫なら。」
交差点のすぐ側にある、公園を指差した。あそこなら、人通りも少ないだろう。
「私は大丈夫だけど。優汰くんは大丈夫なの。」
「どうせ家に居たってすることないし。」
「ごめん、ありがとう。」
「あぁ、別に。」
ごめんとありがとう。渡辺は口癖のように、この二つの言葉を使う。
感謝すること
それは、自分のこころを相手に見せることである
感謝せよ
それが、正直に生きることである
これは誰の言葉だっただろうか。
思い出せそうもない。