これほど根っからのネオアコ好きにこそ、ピンとくるブラジル人の作ったアルバムはそうはないだろうという程に、この人の音楽の醸し出すムードというのは、ネオアコの名盤たちが生み出した瑞々しさや儚さとの共通点を感じさせられます。79年作ということなので、まさに時代的にもネオアコ創世記とぴったり一致しているわけですが、ただそれは単なる偶然であり、両者が何らかの相互作用を及ぼしていたわけでは決してないとは思います。
共通点が、唯一あるとすればロー・ボルジェス自身も語っているように、ミナスという土地にミルトン・ナシメントやトニーニョ・オルタなど、その後ミナス系と呼ばれていく音楽家たちが一斉に現れ始め、互いに影響を与えながら、その音楽性を深めていったという事実です。この点はパンクに対するアンチテーゼとして、音楽そのものの美しさに戻ろうと、グラスゴーからたくさんのネオアコバンドたちが、次々と発生し、切磋琢磨した経緯とも共通しているようにも思えるのです。
まあそんな勝手な憶測はともかく、ロー・ボルジェスの生み出す曲の浮遊感と、捻りのある美しいメロディーの数々は、数多のネオアコ好きをも確実に唸らせる魅力があるということは断言できます。後にマイクロディズニーから発展し90年代に花開いたショーン・オヘイガン率いるハイラマズなんかはブラジル音楽からの影響を事あるごとに語っていましたが、その影響が如実に感じとれるアルバムがまさに本作だと思います。
そういう意味で、ミナス系の特有の土臭さみたいなものが、根っこにはしっかりありつつも、かなりそこがオブラートに包まれていて、一聴すると、素朴ではあれども音楽的には都会的にすら感じるアルバムなのですね。いずれにしろ、この透明で洗練された音楽を、生み出せるブラジルという国の音楽性の底深さを痛感させられる一作だと思います。