1964年の秋、小学校1年生のわたしは右手に赤いバトンを握りしめていた。
運動会での部落(地区)別リレー、男子の部と女子の部、1年生から6年生へとバトンをつなぐ。
その年はわたし1人しか1年生の女子がいなかったので(その後も誰も転校してこなかったから)6年間ずーっとバトンを握っていた。
子どもたちはそれぞれが走ることに一生懸命で、「裸足で走ると軽くていいんだよ」とか「足の裏が痛くなるからサポーター巻くんだ」とか情報を共有していた。
子どもたちはそれぞれが走ることに一生懸命で、「裸足で走ると軽くていいんだよ」とか「足の裏が痛くなるからサポーター巻くんだ」とか情報を共有していた。
当時は小学校の運動会って地元の恒例行事、リレー競技ともなると親はもとより近所のおせっかいおっちゃんがしゃしゃり出て来て運動会前の公園での練習には「ほら!ますみちゃんもっと手を振って!」とか、「バトンもっと早く渡して!」とか、
よけいなお世話じゃこりゃーーー!学年で(田舎だけど)短距離走の記録 1、2位のわたくしに何を言っとんじゃーーー!
当時のわたしはね?大人に口答えするような素直な子どもではなかったから、はーいとか言いながら練習を続けたんだろうな。
このおっちゃんもいつも学校から帰るとランドセル放り出して遊び呆けるわたしに「暗くなるから早く帰れ」とか、おせっかいだけどいいおっちゃんだったな。
部落のリレー、男子も女子も毎年優勝に絡んでいたから周りの大人が一生懸命で、運動会が終わると公民館で反省会を開き、子どもをベタ誉めするやら菓子やらジュースやらの大盤振る舞いするやら。子どももそれが楽しみだったんだろう。
ん?何か声が聞こえるよ
え?おじこちゃん?なに、何?そのバトンじゃない?
あ!こっちねこっち。
自慢話はいいから本題に入りなされ?はい!
では行きますよ!
えー冒頭のバトンリレー自慢話から40年ちょっと経ったある初秋のこと。
ゴルフ場で働くわたし、夏場に食欲が落ちて、一月ほど経ったころにはカロリーメイトを飲み物で流し込むような毎日。
ゴルフ場に勤めていて、マスター室というところで仕事をしているんだけど、たまにキャディもやったりして体力はある方だから、その時も夏バテだろうくらいに思っていた。
それでもあまりに急激に痩せたので、周りからも病院に行った方がいい!と夏バテじゃないのかもと行った病院で胃カメラによるスキルス胃がんが見つかり、9月23日の胃カメラから5日後の9月27日には開腹手術。
その後5ヶ月間、毎月5日間のシスプラチン点滴入院を終え、翌年4月にはゴルフ場に仕事復帰。TS‐1の服薬治療を2年間続ける。
昨年夏、手術からあと2ヶ月で2年という7月に腹膜播種が見つかり、月に2回のサイラムザ&パクリタキセルの点滴治療を受けている。
家族構成はわたし一人。
趣味?昔スキューバダイビングやってたらしい?笑 本読むのとDVDで映画観るのが好き。あ、ゴルフもたまに、誘われたらやるかなあ。
仕事中、今ゴルフ場も暇だから空いてる時間に園芸笑
紫陽花を土に降ろしたり、車を停めた場所が分からなくなった時助けてもらった花屋さんのパンジー植えたり、石垣の中から出てきた水晶含んだ石を眺めたり
職場の片付けもしてる内に、住むアパートのことも気になって今引っ越しを決めた←今ここね?
このバトンを渡してくれたおじこちゃまは、わたしがバブリーたまみの動画に反応したのを見て、きっと同じお笑い仲間だと
気づいたもよう。はい!合ってます。
このアメブロで闘病ジャンルに身を置いて、たいへんな治療をしながら、それでも楽しいことを考え、前向きで、健気で、そんな人たちに巡り会えた。
南の島に住み、明るい太陽と海、美味しそうな料理はみんなを明るい気持ちにさせてくれるMさん。
いつも楽しくて周りを笑顔にするあの人はママに隠れて夜中にそっと涙を拭いたのかもしれない。
この病で車椅子を余儀なくされて、それでも都会の中心にある会社に通うあの方はどうしてるだろうか。
緩和ケアにはいりましょうと言われたあの方は、どんな風に自分の心との折り合いをつけたのだろうか。
障害を持つお子さんに不自由が無いよう東奔西走されたあの方は……。
笑いに変えているけれど、抗がん剤で髪が抜け始める不安。手のひらにからみつくあのゴソッとした感触は忘れられない。
だいぶ前にドラマ「アライブ」で、「キャンサーギフト」と言う言葉が話題になっていた。
ギフトなんていらない。ギフトなんて言って欲しくない。って。
私たちはそれでもギフトを受け取ってしまった。そして強くなった。優しくもなった。前より弱くなったところもある。
もらってしまったからには仕方ない!ただ前を向いて走るだけ。あの日のわたしのように。無心に。
*バトンはここからどなたかに渡っても良いのですが、あえて指名はいたしません。我こそはバトンをつなぐ勇者なるぞ!という方がいらしたらお願いいたします。


