オマールの壁

【原題】OMAR／パレスチナ（2013年）

【監督・製作・脚本】ハニ・アブ・アサド

【出演】アダム・バクリ，ワリード・ズエイター，リーム・リューバニ，サメール・ビシャラット，エヤド・ホーラーニ，他

【あらすじ】ひたむきに仕事をこなすパン職人でありながら、仲間たちと一緒に反イスラエルの闘士として活動するパレスチナ人青年オマール（アダム・バクリ）。彼は監視塔から撃ち込まれる銃弾を回避しつつ分離壁を乗り越え、恋人ナディア（リーム・リューバニ）のもとに通う日々を送っていた。そんな中、彼はイスラエル兵士を殺害したとして拘束されてしまう。イスラエル軍から壮絶な拷問を受けたオマールは、解放を条件にスパイになるように迫られる。幼なじみでもある仲間との絆を壊され、ナディアとの仲も引き裂かれたオマールは……。

（シネマトゥデイより引用）

イスラエル占領下のパレスチナ自治区が舞台… 正直あまりこの国々の状況を把握せずに観てしまいました。パレスチナ人によるイスラエルでの自爆テロ防止という名目で、8mという高い分離壁が今も建設中とのこと…

戦争が描かれた映画はたくさんあります。目を背けたくなる作品から、人々の日常を描きつつその過酷さを想像させるものまで…。忘れてはならないことだけど、それはほとんどが“今”ではありません。

危険を冒さなければ、幼なじみとも恋人とも会えない状況下で、イスラエルの秘密警察に囚われてしまう青年オマール。彼らの日常には人権も自由もない。

無駄な抵抗と思えることでも、誰かがやらなければと立ち上がる人が出てくるわけですが、少人数では何をしてもやはり立ち向かえないんだろうと…　

青年の心を弄ぶかのような、イスラエルの無情なやり方に、怒りが込み上げつつ、オマールのあらゆる葛藤に心が震えました。誰かがスパイかもしれない…一体誰を信じていいのか。

ただ普通に生活し、普通の恋愛をしたいだけ、それも叶わず、ずっと見張られているなんて、平和ボケした自分もですが、誰でも我慢できることではないだろうと。

「世界平和」なんて言うと、笑う人もいるけれど、何も悪いことしていないのに自由を奪われるようなことがない世の中になればと思いました。

社会派ドラマですが、オマールとナディアの恋は切なすぎて、終盤はそこで胸が苦しかったです。はっきり言って後味が良いとは言えないけれど、観て良かったと思える映画です。

（画像はすべてお借りしました）

若き俳優さんたちは皆、これが初めての映画出演とのこと。そうは思えない演技でした。スタッフ・撮影・製作資金、すべてパレスチナ。アカデミー賞作品賞にノミネートされたことで、少しでも変化があればと思いたいけれど、長年にわたる宗教絡みということもあり、根が深い分解決が難しいのかもしれないですね。

Ｐ．Ｓ．『ロング・トレイル！』の後に続けて鑑賞したので、余計に重く感じました。