第二十九話 夕焼け・最後の切り札 | ONCE MAGIMAGI

第二十九話 夕焼け・最後の切り札

出会いは、なんとなくだった。

小さな、小学校にさえ、上がる前。

公園で名前も知らない子供たちと何となく遊んでいた。

その中に一人、女の子がいた。

もう一人、男の子もいた。

何で一人ずつか。

髪の色が違った。

金髪だった。

珍しかった。

話しかけた。

優希の小さな頃は、非常に無口だった、と母も姉も言っている。

そんな優希が話しかけなければいけないほど、二人は奇異だった。

疑問だったからだ。

何で髪の色が違うのか、ということ。

二人は答えた。

男の子。

女の子。

共に、「分からない」、と。

優希は、考えることにした。

二人も、参加した。

毎日一緒に考えた。

いつしか、その疑問は忘れ去られ、絆というものだけが形なく残った。

大きくなった。

そのころには、三人は情で結ばれていることになる。

友情と愛情。

しかし確執はある。

互いが互いに成長していく段階で確かにそれは生まれていた。

優希は嫌だった。

いつか、

なるべく早くにそれに決着をつけたい。

そう思うようになっていた。


優希の初手は光弾だった。

桜は難なく光弾を、上段から斬り捨てる。

一撃を放った後には、必ず隙ができる。

下段の構えになっている桜に、優希は走って近づいた。

光の剣で桜に攻撃する。

「悪くないコンビネーションだ」

しかし桜は揚々と優希の剣をかわし、距離をとる。

「ふむ」

桜は冷静に状況を判断した。

「瞬間移動や時縛り等、重力系の巨大魔法を使う余裕はなしか。走って近づいたのと、光の剣が近距離からの攻撃だったことから判断できる。いや―――」

気付かれた。

優希は思った。

しかし、それが顔に出てしまった。

「お互い、考えることは同じか」

一撃必殺。

優希は、魔力放出。

桜は、太陽砲。

互いに一撃分の魔力しか残されていない。

必ず決めなければならない。

その隙と距離をどうやって作るか。

二人は、光子体という光速の思考で頭を巡らせる。

小手先の技で、隙を作り出す。

それが優希の作戦だった。

あまり魔法は使えない。

最後の切り札である、魔力放出分の力は残しておかねばならない。

肉弾戦を挑むしかなかった。

体力バカの桜にそれで勝てるはずもない。

その考えが、ひらめきを生んだ。

賭けるか。

優希はその作戦に賭けることにする。

優希は突っ込んだ。桜のもとへ。

「肉弾戦か、まあそれしかない」

優希の拳は全て、かわされるか受け止められるかした。

一撃も当たらなかった。

それどころか反撃を食らった。

決して軽いダメージではない。

気がつくと、優希は倒れていた。

「あっさり勝負はつくものだな、行くぞ太陽砲」

ゆっくりと、桜の魔力が収束を始める。

優希はなんとか立ち上がれた。

だが、それが精一杯。

魔力放出のための時間は作れなかった。

「終わりだ」

光が発散した。

桜の強大な魔力が優希に向って、放たれ―――

なかった。

「!?」

桜が混乱する。

何も起こらない。

SSフィールドは張られている。

DDSフィールドのように単体では魔法が使えない力場ではない。

二重にDDSフィールドを張ることによって、本来、二人以上が共鳴してしか使えない魔法の力場を、一人で作り出す技、SSフィールド。

それはちゃんと張られている。

ならば?


優希にしては逆転の発想だった。

肉弾戦では勝てない。

ならば、負けてしまえばいい。

負けて、太陽砲を放たせる。

防ぐ力は優希には残されていない。

しかし、キャンセルは可能だ。

使う魔法も、間違いようがない。

ならばキャンセルは容易だ。

伊達に何か月も魔人と特訓していない。

勝てる。

優希は、魔力を収束させた。

最後の力だ。

しかし…


桜は力を燃やす。

キャンセルされた魔力は蒸発するように消えた。

負けは確定だ。

しかし、このまま終わるわけがない。

残った魔力をかき集める。

せめて最後に、最後に、

一撃を。

その一念は奇跡を起こした。

太陽砲に足りる魔力が集まる。

まだこんなに…

桜自身が驚いていた。

だがそれは命にかかわる魔力の放出になる。

すべてをかけた一撃になる。

すべてを。

迷いがあった。

俺は、なんだ?

俺は、

俺は、

それに答えた。

「俺は太陽神、夏木 桜だ!!!」

魔力が暴走を始めた。


「ならばボクは優希、真田 優希だ!!!」

「世界に改変の力を、すべてに革命の力を―――!!!」

魔力がすべてを貫いた。

強大な魔力が放出される。

そして、それは桜の太陽砲と真正面からぶつかった。

「うおおおおおぉぉぉぉっっ!!!」

「はああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

すべてが、真白に消え去った。


魔力の放出をやめる。

互いが最後の一撃だった。

力が入らない。

優希が倒れていた。

桜は立っていた。

「俺の勝ちだ―――」

「全力を出せたんだ。ボクはそれでよかったんだ―――」

息を切らして、倒れこんだまま優希は言った。

「勝てよ、生徒会長との直接対決」

「―――え?」

日は既に暮れていた。

勝負には桜が勝った。

しかし、これは生徒会長占拠。

コアを日暮れまでに占拠したものが勝つ。

そして、優希は

コアに倒れこんでいた。

優希が生徒会長との直接対決権を勝ち取ったのだ。

「なんかすっきりした、ニアさん見ててくれたかな?」

「見てるよ、きっと…」

そしてそのまま二人は気を失った。


次に目を覚ました時には保健室に担ぎ込まれていた。

「半年は、魔力使えないわよ、おそらく」

カーテンの向こうから聞こえた。

「命まで魔力に還元しちゃうなんてやりすぎよ」

ウェヌスの声だ。

「はは、命あっただけ良かったてことですか」

桜の声だ。

「桜?」

優希は、か細い声で親友の名前を呼ぶ。

「よ、優希。お前の勝ちだ。会長も、もう一つのコアを守り切ったって。来年の一月半ばだそうだ、決選」

「桜」

さらにか細い声。

「なんだ」

優しい桜の声。

ごめん。

と、言いそうになる。

だが、それは間違いだ。

桜は真剣に戦って、負けた。

優希は勝った。

その結果がどんなに悲惨でも。

ここは、こう言わなければならない。

優希は深呼吸した。

そして、

「ありがとう」


わだかまりは、いつか遠くに消えていた。


桜、命燃やして