第十五話 予選・一瞬の油断
「さーてさてさて、やってきました!この時期が。OK?」
大歓声の中それにも負けない大きな声のアナウンスが響きわたる。
「オリンポス十二神、空位の座をかけてのトーナメントが始まっりまーす!ゴーゴゴー!」
大音量だ。
耳が壊れそう。
「今年度の十二神は、残念ながら空位はひとつ!たった一つの座をかけて一年ボーズが天地を駆ける!ダッシュダーッシュダシュ!」
「アナウンスは十二神最弱、口だけなら最強!メルクリウスがお送りするゼイ!ハイ、ヨー!!!」
「メリークリスマスと名前が似てるが関係ないよー、ダウッ!」
にぎやかな人だなー、優希のメルクリウスに対する第一印象。
「解説は皆さんご存知、ユピテールこと生徒会長!式臥 武人サマだー!」
「盛り上がれ、ウィーアー!」
「予選の方が倍率高いので皆さんがんばってください」
メルクリウスと並んで話しているせいか、会長の発言がまじめに聞こえる。
「倍率って賭けてるのかい、ヘイユー!」
「いえいえ、合格率の事ですよ」
「そうだねー、本選は8倍だが予選は30倍くらい?アンビリーバボッ!」
「詳しくはいまから解説だっ!ミミノアナカッポジッテキケヨゥ」
静寂というほどではないが、会場が若干静まる。
「まず、一年生の一クラスから一人の本選出場者が選ばれるのだ、イチガオオイヨッ、トクラー!」
「それを選ぶのが予選ってわけか」
桜がつぶやく。
「同じクラスだから桜とは予選であたっちゃうね」
優希も応じる。
「出来れば決勝でと思ってたが、ま、わがままは言ってられん」
「あと3年もあるよ、まずは一回戦てことで」
「ああ、いつか生徒会長占拠決勝で戦おうな」
「うんっ!」
メルクリウスが予選の内容を話し始めたので耳をそちらに集中する。
「ここから一キロ先に、見えるかい?あの岩山、ロックオーン狙い打つ!!」
妙に不自然に盛り上がった岩山が見える。
魔法で盛り上がらせたのあろうか。
地が使っていた魔法を優希は思い出した。
「あの天辺に、ボックスがおいてありまーす。シッダウウン!立つと後ろの人が、出しちゃうーよ?ナニーヲ?」
「せ○しかなぁ」
「会長、オフレコーデ、プリーーーーズ」
「はい」
素直だな。会長って、よくつかみ所が分からない。
「ボックスを魔法で破壊して中のチケットをゲ-ットした人が本選行き決定!デッカ」
「って、SSフィールド張れないとボックス破壊できないの?」
優希の声が聞こえたのか、ただ皆そう思ったのをメルクリウスが感じ取ったのか分からないが、とにかく彼は答えた。
「大丈夫1メートルくらいの小さいDDSフィールドがボックスの周りに貼ってありますから、フィールド張れる人なら誰でも、チャンス、エクゼ!」
「でも正直、光子体になれるかなれないかでほとんど決まっちゃうね」
「ソウ!勝利の秘訣は光子体!フォトン」
優希はまだ光子体には成れなかったが、しかし秘策はあった。
「もちろん運動会とは違って魔法バンバン使ってイーよぅ」
「殺人だけは禁止だけどね」
「社会のルールはもちろーん、ディッフェンス!」
「多少の怪我ならウェヌスが治してくれるから心配はしないでね」
あれ、あの人、運動会で保健室にいた、おねぇさん?
あの時は自分のことに必死で顔見てなかったけど綺麗な人だな。
「ウェヌスはローマ神話で愛と美の女神だ。英語読みするとビーナスだな。ちなみにギリシャ神話ではアフロディテだ」眼鏡ニアの解説。
ついでにニアは史奈子の直感も感じていた。
優希の綺麗だな、という考えに反応したに違いない。
鋭いな。どこで感知してるんだ?
すくなくともこの選手の中にはいないはずなのだが。
「じゃ、オリンポス十二神の一人?」「そうなる」
うあ、すごい人だったんだ。優希びっくり。
「制限時間は一クラス30分だーよ。一日で8クラスもやるからね。時間が大切。プロミス?」
「ではではでーは、まずは一の一、アーユーレディ?」
予選が始まった。
一クラス目は火が通過した。
まあ、今現在SSフィールドが張れる一年は桜と火のみ。
当たり前といえば当たり前の結果だ。
2クラス目は女の子がとった。
知らない子だ。
3クラス目は、次が自分のクラスなので見ていなかったが、なにやら成績、学年一番の人がとったらしい。
そして優希のクラスの番。
「レディ?」
緊張が走る。
クラスメートの参加者28名が息を呑む。
優希はすでに秘策を実行させるための準備を始めていた。
「ゴー」
「DDSフィールド全っ開」
優希の周りに半径1キロ以上のフィールドが張られる。
「まいがっ、でかいでかいでかすぎるー」
「チ○ポ?」
「会長、オフレコオフレコ」
「でかいDDSフィールドだ、何ものだあのボーズ。これは並の魔法使いじゃ張れないぞー」
「ほう、あの話本当だったのか、正直この目で見るまでは半信半疑だったが」
「ホワッァト?」
「アナウンスアナウンス、ほらもうボックスに到着してる人いるよ」
「まさか、まだ開始5秒も、マイがーーーーーーーーーーっ」
会場の人、全員が驚いた。
会長の言ったとおり開始五秒でボックスに到達した人がいた。
もちろん、
優希だ。
瞬間移動魔法を使ったのである。
「桜、一回戦は僕のか―――ち?」
「ゆ―――――――――きぃ――――!!!!!!!」
桜が飛んできた。
文字通り飛んで。
なんか光子体になって、しかも背中が燃えている。
「ジェット噴射の応用で空を飛ぶ馬鹿もいたー、燃えてる燃えてる!スマタポポヒ」
「いやー、それもオフレコだよねー」
「カバの英語読みを逆にしただけです。問題ないです。ノープレブレム」
優希はあせった。
早く魔法でボックスを壊さないと。
「ブリッツ」
「っそい」
見事に桜のジャンプニーをくらう優希。
「たた、くそっ」
「残念だったなボックスは俺が―――」
「くらえブリッツ連打」
光弾が連続して優希の手から放たれる。
しかし桜はそれをすべてかわす。
そして最後の光弾だけをはじいた。
はじかれた光弾はボックスに命中し中から長方形の紙が出る。
チケットだ。
本選の。
まずい、取らないと。
場所的には優希が断然チケットに近かった。
しかし桜は光子体だ。
速度でかなうものじゃない。
桜はチケットをもぎ取った。
「一回戦は俺の勝ちだ。次、楽しみにしている」
「そんな」
「俺に勝ちたかったら、せめて光子体位にはなれ」
「負けた」
崩れ落ちる優希。
優希の、太陽神の称号杯はここで終わるかに見えた。
が。
