第十四話 占術・始まりは不吉
一学期の期末テストも終わって夏休みを待つだけの日々、優希の周りには一つの変化があった。
史奈子が占いに凝り始めたのである。
占いは預言のように重いものではないし、予知能力のように確実さもない。ましてや未来感知のような魔法でもない。
あくまで趣味でやるものだ。
きっかけはたわいもないことだった。
たまたま、本に載っていた占いを史奈子が試した。
「ユウちゃんが明日遅刻するって」
ちなみにトランプ占い。
次の日、優希はとても朝早く目覚め登校した。
姉がいつものように起こしてくれた(ちょっと迷惑)のだが、本人が朝練だとかでいつもより早かった。優希には朝練なんてなかったのだが。
たまたま登校中、桜と出会い、なぜかニアについて印象で盛り上がった。
そこで優希は桜がニアに惚れていることを知る。
ニアは無視してた。
遅刻の予定はなかった。
しかし、学校まであと数百メートルのところで道に迷ったおばあさんに出会い、家に帰るのと同じような距離を親切な優希が案内した。桜は裏切った。
遅刻である。
初めてが当たり、史奈子の癖になってしまった。占うこと。
次の占いは外れた。
「ユウちゃん、兄さん、宝くじ当たるよ」
連番で買って、とりあえずお金の関係上9枚しか買えなかった。
一円も当たらなかった。
桜も買っていたが、これまた見事に外れた。
一等当ててニアに豪邸をプレゼント出来ると喜んでいたのだが、無駄だった。
次は桜が焼きそばパンを食い損ねる、とでた。
焼きそばパンは、学校のパンでも一番人気だ。
昼休み開始五分で売れ切れる。
しかしその日、奇跡的にも桜は二つ焼きそばパンを買った。
ひとつはニアに捧げると言って、桜はニアを学校中探した。
桜は、ニアをこの学校の生徒だと思っているようだった。
その理由として、ニアがよく出没する地域がこの学校だということ。
もう一つは、初めて桜がニアを見たとき、彼女はこう語ったらしい。
「魔法が必要だ」
この学校の生徒なら誰でも思っていることである。
この二つの理由から、桜はニアがこの学校の生徒だと思っていた。
半分くらいはあっているかもしれない。
だから焼きそばパンを持って桜は学校中を疾走した。
ニアをグラウンドで探している時、
桜がこけた。
焼きそばパンが落ちた。
パンを踏まれた。
ラップも破れた。
中身が飛び散った。
桜は半泣きで、パンを食べようとしたが皆が止めた。
占いは当たったのだった。
桜が帰り道、うんこを踏むっていう占いも当たった。
授業で優希が一日中あてられないという占いは外れた。
最悪的に一日で24回あてられた。手も上げなかったのに、しかも優希の分からない問題ばかり。
以上の占いの結果から、一つの結論が成立することにみんなが気付いた。
悪いふうに当たる。
良い占いなら悪い方に当たる。
悪い占いならそのまま当たると。
みんなが気付いた。
次第に史奈子の占いは、恐怖の大王扱いされるようになった。
本人は一向にあずかり知らぬことではあったが。
裏で、これより酷いことを言われることもあったが、桜や優希がそれを許さなかった。
特に桜は魔法の腕だけなら学年一だったので、その恐怖からか史奈子に直接悪口を言う者もなかった。
桜は魔法の腕だけなら、
だけなら!
だけ!!
学年一だった。
くどいが魔法”だけ”である。
夏休みの前々日、また史奈子は占った。
「明日は平和な日だよー」
もちろん外れた。
しかしそれは、ある意味最高の外れ方だった。
翌日、夏休みの前半を掛けてオリンポス十二神の空位、太陽神の称号をかけたトーナメントが開かれることが判明した。
しかも、その称号は一年生から選ばれるという。
みな、狂喜乱舞した。
「優希、いつかの約束覚えてるよな」
「うん、世界一を決めるって」
「決めるぞ」
優希は快く、そして力強く頷いた。
張り切っている中、史奈子が駆け付ける。
「だめ、ユウちゃん!参加しちゃだめ!!」
「ナデシコ?」
「どうした?落ち着け」
息を切らしている史奈子。
真っ青な史奈子に桜と優希は戸惑いを隠せない。
ゆっくりと史奈子が口を開く。
「占いで出たの」
「不吉な」
桜の一言に史奈子がうなづく。
「このトーナメントでユウちゃん勝てるか占ったの」
「うん、それで?」
「ユウちゃんが…ユウちゃんが……!」
次の一言は確かに不吉だった。
「死ぬって」
波瀾のトーナメントが始まろうとしていた。
