昔の夢・夏木史奈子
夢。
そう、あの時の夢。
それまでは、ただのお友達。
ちょっと気になる男の子。
このときも彼は決して乗り気じゃなかった。
でも。
「私、世界一の魔法使いのお嫁さんになりたい」
「.…え?」
幼い頃。
砂場で三人でお城を作っている時のこと。
その発言は前日見たテレビのこと。
魔法使いの特集をやっていた。
その姿は光り輝いて―――今ならわかる。それは光子体―――まぶしかった。
空を飛んだ。
山を吹っ飛ばした。…今考えるとやりすぎ。ちなみにこのとき吹っ飛ばした山が大央部学園の裏山。
そう、学園の校長。
式臥 皇至王の特集。
まぎれもない、世界最高の魔法使いの一人。
惚れたというのと違う。
そういう存在に認められたかった。
そういう意味でのお嫁さんだった。
それだけの意味だった。
その時は本当にそれだけの意味。
だから、次の言葉は正直、すぐに意味が分からなかった。
「じゃあ、オレは世界一の魔法使いになる」
桜。
意味が分からなかった。
「優希は?」
また、桜が言う。
「ボクはいいよ」
「っだと?」
桜が切れた。
「桜?」
「オレがなるんだ、お前もなれ!!!」
「でも…」
「でも?」
ためらい。
「桜が一番なんだろ?ボクは二番でいい」
桜が砂を蹴って優希にぶつける。
「男っなら」
「いった」
「二番じゃねえ」
「桜」
「兄さん?」
桜は、
「この城の」
砂の城の頂上を指し、
言う。
「天辺!」
それは至高。
「王を目指すんだ!!!」
「う、うん」
「ユウちゃん?」
その言葉。
「ボク、一番になる。ナデシコと結婚する!」
そういう意味。
そんな意味で言ったんじゃなかった。
でも二人はそうとらえた。
そして答えた。
先に答えたのは桜だった。
でも、史奈子が理解したのは優希の言葉だった。
結果として、史奈子には優希の言葉が刷り込まれた。
「ユウちゃんっ」
史奈子は優希に抱きついた。
桜は不満そうにしながらも、言った。
「いつか………いつか本当の一番を決める勝負をするからな」
「う、うん」
「首洗って待ってろよ!」
「首を洗うの?」
首をさする優希。
「アヤ、っだ!!!」
また桜は砂を蹴った。
そこで夢が終わった。
いつもの朝。
まどろみ。
そうだっけ、兄さんには悪いことしたな。
次第にまどろみから覚め、夢が消えていく。
…なんだっけ?
史奈子は目覚めた。
「うーん」
背伸びをする。
いつもの今日が始まりを告げる。
「おはよう」
