第八話 その頃・会長の実力
「そうか……あぁ、分かった」
連絡があった。
妹をさらったのは冥府―――番長グループの名前だ―――の連中の仕業らしい。
可愛い妹に手ぇ出したらただじゃおかねぇ。
そう誓い、会長、式臥武人は雨の中、学園に向かっていた。
とりあえずは学園だ。
あそこは、冥府の根城がある。
しかも冥府の王、番長にはあまり学園の外に出られないという、知っている人だけ知る弱点がある。
となると十中八九、愛子は学園にいる。
確信というには多少弱いが、情報の少ない今はしらみつぶしに確かめていくしかない。
ただ、それ以外にも不安はあった。
番長は、強い。
しかも、通常攻撃はすべて無効化される。
どうやって倒せばいいか、それともうまく番長との戦いを避けるすべはないか、武人は考えていた。
前に一度戦ったときは、うやむやのうちに番長が逃げた。
生徒会長占拠のある一戦のことである。
武人も強い。
いま考えれば、番長が手の内を見せたくなくて、戦いを避けたように思う。
しかし、今度もそううまくいくか。
冥府の目的を推測すると、そう簡単にいくとも思えなかった。
考えをぐるぐる回しながら、武人は歩みを進めていた。
「来たな、ピンク」
「……」
学園の校門前で待ち構える、男がいた。
痩せてひょろ長い体をした男である。
「ピンク!我が名は火、冥府四天王だ」
「……私は生徒会長、式臥武人だ」
答えて、武人は少し考えた。
なぜ自分のことをピンクと呼ぶ?
「あー、私としてはクールなブラックとか、リーダーのレッドがいいのだが…」
「うるさい、ピンクチ○ポ」
それか。
「あー、私は昔堅気な考え方でな、操は男でも結婚するまでとっておきたい―――」
しかし火は話を聞かない。
「DDSフィールド展開」
「話を聞け、……ま、いいDDSフィールド展開」
使い手だけが分かる魔法の気配が辺りにたちこめる。
「お前、火と名乗ったな、こんな雨の中じゃまともに火なんて出せないぞ」
セオリー通りならこんな雨の日は火の使い手は、屋内を選ぶ。
しかしこいつは、校門前で待っていた。
何か策があるに違いない。
「お前の名前、実は水だろ」
「っ!!!?」
図星だ。
「お、おれは火だ。三千度の炎の使い手だぞ」
確かに、冥府最強の四天王、火は三千度の火を扱うと聴いている。
しかし、決定的な情報を武人は思い出していた。
「確か火って女だったろ」
「っ!!!?」
馬鹿だ。
「俺は―俺はー、水だー」あ、泣いた。雨でもわかる、マンガ泣きだ。
「いくぞ、コールレイン」
雨の一粒一粒が針となり、武人を襲う。
「DDSフィールドは良い」
武人が語る。
「SSフィールドよりも効果範囲は大きいし、魔法の威力が強くなる」
雨が千の針となり、武人を取り囲んだ。
「しかしいかんせん、一人で張っても効果がないという弱点もある」
「くらえー!!!」
「つまり魔法を食らう前にDDSフィールドを解除すれば―――」
針が雨に戻る。
「!?」
「魔法は意味をなさない」
雨は武人を貫かず、体を濡らすだけにとどまる。
「馬鹿な、DDSフィールドの展開解除には達人でも数秒かかるのに、一瞬で!?」
「ヒントをやろう、そういう魔法なのだよ」
そこで武人は、気付いた。
「あぁ、答えを言ってしまったな」
「まだやるか?見たところSSフィールドは張れないようだが?」
よほど人員に、苦労をしているのだろうと、武人は考えた。
SSフィールドも張れない奴に四天王の位を与えるとは。
もしかしたら、部下が四人しかいないのでは?
あながち間違いに聞こえない推測に武人は苦笑した。
「ピンクはピンクなりに考えているのだよ、童貞をね―――道なりに先ほどの続き聞くかい?」
武人は考えた。
兄弟の、四人兄弟の長兄として、妹は必ず助け出さなければならないと、今は留守にしている弟に殺されるな、と―――。
雨はまだ止む気配を見せない。
「それでも明日は晴れると信じて、さ、案内しな」
