第一話 出会い・それって恋!? | ONCE MAGIMAGI

第一話 出会い・それって恋!?

夢。


一は全にして全は一。

白い光が侵食し自分を侵す。

どこが境界線でどこが何かはもう、わからない。

ただ白い光がすべてを包む。


そこでボクは点だった。

黒い点。

体は白くなっているのに、ひとつだけどうしても白い光に侵されない点。


その点に話しかける者がいる。

君は誰?

君?いや、それはそんな軽いものじゃない。

貴女は誰ですか?

女の人だと悟ったのは本能だった。

だからもしかしたらそれは男の人だったかもしれない。

むしろ、一般の人は男の人ととる様な気がする。

ボクには無いが、父というものはそういうイメージだと、何かに書いてあったのを覚えている。

大いなる父。

それはそう呼ばれる存在。

でもボクは女の人だと思った。

だってそれはボクの中では母のイメージ、女の人だったから――――――



「って姉さんっっ!!!」

「ちっ、起きたか」

眼鏡をかけなくてもわかる。

普段は見せない悪い姉さん顔。

「ゆーちゃん、おはよ」

そして、コンマ秒後にはいつもの姉さん。

「おもいおもいっ、おりておりて」

「あら、ゆーちゃん。女の人にその言葉はないんじゃない?」

姉さんは、ベットの上の僕を押さえつけるような形で立っていた。

姉さんの右手はいつの間にかボクの左手をからめ取っている。

その手首をひねれば、たちまちボクをひっくり返せるだろう。

それをしないのは、たぶん右足のせいだ。

姉の右足はさりげにボクの股間をまさぐっている。

ひっくり返したりしたら、ボクの、その、まぁ、アレの感覚を味わえなくなる。

朝は元気なアレの。

「ね、姉さん……」 顔がくずれているよ。

「あ、あぁら。わたくしったら、はしたない。ゆーちゃん、おっきおっきしようね」

なにを

「芙由、優希、遊んでないで早く起きなさい」

「はぁい、お母さん」「おはようございます、お母さん」

「おはよう優希、朝ごはんはできてるよ」「はいっ」

小さく姉さんが落ち込みながら言ったのをちゃんとボク、優希は聞いていた。

「優希の初キス奪っちゃうぞ作戦、今日も失敗」

恐ろっ。



春休み。

中央ならば、満開であろう桜も、こちらではまだつぼみ。

多分、入学式の頃には、ちょうど散る桜がきれいに舞うだろうという位置にこの大央部魔法学園はある。

その高等部に、来月から入学する。

今日は通学路と学園の下見。

姉は、用事で出かけた。部活だと名残惜しそうにしていた。

学園には試験のときに訪れたとはいえ、あの時と今では気持が全然違う。

受かるかどうか、超一流の私立学園。

姉は結構楽に入学できたよと、のたまうが、中等部からエスカレーター式に上っていく者と、高等部に討ち入りを入れる者では立場が全然違う。

なにが、奇跡か、偶然か。

裏で何か悪い行いがあったのでは、と思うぐらいの、レア度合いで1000倍(比喩なし)の入学チケットをもぎ取った時には、何か絶望に近い訳のわからない感情に襲われたのをよく覚えている。

本当に希望していなかった勝利を得た感情とは、ああいうものなのだろう。

最近になって喜びという感情がふつふつと湧き上がりつつある、今の気持ちはそんな感じである。

その喜びを増長させる存在と出会った。

曲がり角。

「ユウちゃん」

「ナデシコ」

金髪の大和撫子。そういうイメージだったから、自分はナデシコと呼んでいたが、本名は夏木 史奈子。

それは母親が日本びいきのフランス人だったから、日本の地名に由来した名前をぜひ、という理由で父親の出身地、古都奈良からつけられた名前だという。

日本人離れした美しさと、日本人らしい大和撫子精神を持ち合わせている、ハーフである。

彼女の存在は、優希の感情を加速させる。

「や、やぁ。散歩?」

「う、うぅん。学校で今日部活の説明会があるって。それに参加しようと、あぅぅ」

彼女も優希の前では、普段と違う表情を見せる。

普段は落ち着いた大和撫子然とした態度をとるが、優希の前だと、どもる。焦る。つまり落ち着きがない。

優希はそれを幼馴染として彼女のことを知りすぎているから、なれなれしい自分にあまりよい感情を抱いていないためだと考えている。

それでも、感情は抑えきれない。

感情が彼女に干渉しろと、強制する。

「え、知らなかった。そんなのあるの?」

「兄さんが、仕入れてきた情報だから信用性はないけど、入りたい部活だったから、ちょっと……あぅぅ」

ちなみに兄さんとは、彼女の本当の兄ではない。従兄の夏木 桜。女の子みたいな名前だがれっきとした、というか行き過ぎた漢(おとこ)である。彼も優希の幼馴染で同級生だ。ちなみにハーフ。

桜は、中等部からの進学で史奈子や自分とは違う。それでも中学時代はよく遊んだりもした。

「桜情報はなぁ……、ん、でもボクも学校行こうと思ってたんだ。一緒に良い?」

「あぅぅ、ももももももももももっもももももももも、もちろんっっっっっっ」

そこまでどもらなくても、



そんな理由で行き道は、感情高鳴る、しかし記憶にはあまり残らない、あっという間の一瞬だった。


その学校は広かった。

山だった。

湖にも面していた。

たしか、学校説明で山4つ分ぐらいの広さがあると聞いた。

湖は校長が何かとてつもない敵と戦ったときにできた跡だと聞いた。

信じてはいなかったが、魔法が存在するこの世界にできないことなどない。

それは、魔法が発生して500年。たった500年での人類の英知、科学の崩壊、そして魔法の台頭、が強く物語っていた。

そしてその本当の意味を少年と少女は数分後、痛感することになる。


道案内の看板が立っていたので、2人は広い学園をさほど迷うことなく、歩けた。

体育館らしき建物の角をまがったとき、少年と少女はたくさんの人と出会った。

魔法第一研究部はこちら。

看板にはそう書いてあった。

「人がいっぱいだね」「迷子になりそう」

そこまでだった。

「手、つなぐ?」

とは言えなかった。お互い。手はちらちらとぶつかりそうになる。意識はする。しかし、いえないつなげない。

「気をつけて」

その言葉は史奈子には伝わらなかった。

爆音。

歓声。

風が二人の間を吹き抜けていく。

続いて砂嵐。

「ナデシコ!!!」

「ユウっ……」

感じたのは波動。

紡ぎ出されるシンフォニー。

波動が2つ共鳴している。

そう、優希には感じられた。

その元凶の姿を確認する。

男と女。向かい合って何かキラキラ光っている。

「すげー」「会長素敵ーっ」

歓声は高らかに光り輝く男女にささげられる。

舞台は空中にあった。

そのため、優希にも2人の姿ははっきりと確認できた。

「さすが第一魔研部、最強の生徒会長、式臥 武人と生徒会副会長、真田 芙由。演武とはいえすごい迫力だぜ」

隣で解説くれる親切な生徒をよそに優希は金縛りにあっていた。

これが、魔法の戦い。何て威圧感。何て美しい。

女が動いた。速い。目で追い切れない。光り輝いているせいで、残像か実体かの区別がつかない。

半身ほどの開きもない距離まで女が接近する。連続して光の矢のようなものがその右手から放たれる。

人間が反応できる速度と距離ではない。

しかし男は、何の動作もなく、その光をはじく。動作がないので、はじくというのは正確には違うかもしれない。しかし優希にはそう見えた。光が放射線上に空中で光り輝く。

歓声。

美しい。

そこで男が観客に話しかけた

「ありがとう皆さん、それではこ最後に、オリンポスの頂点二人による最大造形魔法の実演を行う。実戦では決してみることのできない一瞬の幻獣をお楽しみあれ」

そして男女は深く瞑想に入った。

時間の流れが急に遅くなる。

女の方は何かつぶやき始めた。

男は静かに微動だにしない。

「それぞれの最大集中力の出し方だ。呪文を唱える者もいれば、何もしないものもいる。まさに対照。静と動の天王神ユピテルとその妻ユノ」

次第に辺りが暗くなる。そういう時間ではないことを考えるとこれも魔法だろう。そういえば、よく見えないが空中の二人を囲んで地上に何人か魔法を使っている者がいるようだ。

「行くぞ、神王ドラゴユピテルサンダーガ」

「ネーミングセンスもさすが天王神」 隣の人の解説。

しかして、その雷をまとったドラゴンは神の存在を確実に教えるものであった。

魔法という名の神を。

帯電した山より大きい竜が暗い空高くに舞う。

その輝きは星のようで、さらに星よりも輝く。

千の銀の宝石を惜しげもなく、天に捨てた。そんな感じのする、一瞬のきらめき。

天は空高く……


そんな折だった。

彼女と出会ったのは。

大きな雷竜を背後に彼女はこう優希に投げかけた。



「魔法を必要としますか?」



その人は天使だった。

言葉通り、天使。

美しい翼は空気と一体化した陽炎の羽根の如く――――――
出会い