今から60年以上前の高度成長期、地方の農村からたくさんの若者が都心へ働きにやってきた。彼らは「金の卵」と称され、若くて質の高い労働力として日本の経済成長に寄与した。

天然資源の乏しい日本には労働資源しかなかった。外国から原材料を輸入し、それを加工して付加価値の高い製品に作りあげる。繊維、鉄鋼、家電、自動車、半導体といった製品は国内外でたくさん売れた。付加価値は富を生み出し、ちっぽけな島国が世界一の債権国(金持ち)になっていった。

大量生産・大量消費を是とした成長期を経て、世界が新しい経済成長モデルへ移行していく中で日本は次第に世界から遅れをとっていた。

信用創造と紙幣の増刷であり余る金融資産を持てあましながら、次の経済成長を支えるイノベーションがなかなか起こらない。

経済政策の中で政府が主導(大きな政府)で、財政出動することが経済成長に必要だと言う人がいる。税金を使って道路や発電所、スーパー堤防に都市開発など、やれる事はいっぱいある。財政出動をやれば経済的な数字も上がり効果はあるだろう。しかし公共事業を進めるにも労働力が足りるのだろうか。そもそも財政出動はあくまでも短期的な経済政策にしかならない。日本が低成長から脱却できないのは「高齢化」が主な原因に他ならない。世界一の債権国は世界一の高齢者の国になった。高齢化が進む他の国でも日本と同じ様な状況に悩まされることになるだろう。高齢化は、低インフレ、貯蓄率の増加、自然利子率の低下につながる。資金があっても旧態依然の硬直した体制で変革していくのは難しい。

 

2024年は世界で政治経済において転換点になる。

大国は自国優先で保護主義を鮮明にしてくるかもしれない。一度進んだグローバル化は今度リージョナル化(地域化)が進み、小さなグループが形成されることになるだろう。リージョナル化された世界は、お互いのバランスを保ちながら関係を保持していく。日本は、中国やアメリカといった大国と付き合っていく為にアセアンの国々と関係を深めていければ良い。アセアンの若い人たちが「日本で働きたい」「日本で暮らしたい」との気持ちを大切にしたい。日本の労働力を増やし、逆に日本は技術提供の形で発展途上国をサポートしていく。お互いが協力し合い必要とされる関係を構築していきたい。

 

日本が得意な分野、例えばパワー半導体、ペロブスカイト(折れ曲がる太陽発電)、水素エネルギー、再生医療など、日本が主導になっていけるイノベーションが近い将来に起こる。

日本に新しい血が入り新陳代謝が促進されていければ活力となり、持続可能な経済成長が実現できると私は考えている。