最寄りの交差点の角にいつも立っている女性がいる。
小柄で長い髪。バッグを抱えて頼りなげに立っている。
何もサインは持っていないが、物乞いをしているのは一目で判る。
パッと見た目、前髪を垂らしていてひどく若く見えるので、
少女なのかと思ったほど。
先日、いつも彼女が立っているそのスポットに、彼女が残して
いったと思われるファストフードのドリンクカップ、コーヒーカップ、
テイクアウト用のスタイロフォームの箱が置き去りにされていて、
カラスが突いて喰い荒らしているのが見えた。
通りが掛かる人があげたものなのだろう。その残りを鳥たちが
食べているわけだ。物乞いする人達は、大抵食べ物など求めて
いない。ほしいのは現金だ。だから、食べ物などをあげても
ほぼ無駄になってしまう。別に食べるものに困ってそこに
立っている訳ではないから。
現金がほしいのは、そのお金でドラッグ、酒、タバコなどを購入
するためだ。主にドラッグだろうと想像はつく。物乞いする人の
多くが不健康に痩せていて、顔つきがおかしいのはそのせい。
今朝、その女性はいつものスポットには立っておらず、娘と、
あれ、今日はいないね、と話していた。娘が、「ああいう人って、
場所を時々変えるの?」と訊くので、多分ね、と答えた。
そしてその後、私はジムに行き、その帰りに回り道をして
普段は行かない店で買い物し、飲み物を買おうと、近くの
コンビニに寄った。車を止めた時、コンビニの前で荷物を抱えた
女性がいた。あれ、見覚えがある人、と思ったら、いつも交差点に
立っている例の女性ではないか。
その交差点(家の近所)からこのコンビニは5マイル以上も離れて
いる。車では10分足らずだが、普通に歩いて移動できる距離では
ない。飲み物を買って車に戻って来ると、その女性も荷物を持って
歩き始めた。どこへ行くのかと車の中から一寸見ていると、
私の隣りの隣りに止まっていた車の助手席にするっと慣れた風に
乗り込んだ。運転しているのは男。車も、普通のアメリカ車の
セダン。ボロボロでもなんでもない。
・・・分かってはいたけどさ。そういうことだろうとは。ホームレス
でもなんでもなくってね、ただお金が欲しくてああやって立ってる
んだってことは。ただ、実際に見てしまうと、やっぱりねぇ。
世の中こんなもんだって思っちゃう。私はお金はあげない主義
なので絶対あげないけれども。彼らがお金が必要なのは事実。
ただ、空腹を満たすために食べ物を買うんじゃなくて、ドラッグ
なんかを買いたいから、というのがその理由。
私の車の前を歩いて行った彼女の顔を初めて間近で見たけれど
やはり、それは若い10代の顔ではなく、顔色も悪く、目の下の皮膚
がどす黒く腫れていて、とても普通の容貌ではではなかった。
酷く痩せていて、黒いレギングを穿いた足が棒のように細い。
だから遠目には、少女のように見えていたのだ。実際には多分、
30代くらいなのだろう。いや、本当は20代で、薬物の乱用で
あんな風に若いのか老けているのか分からない容貌になって
いるのかもしれない。
男に無理矢理物乞いをさせられていて、お金を巻き上げられて
いるのか、それとも二人で合意の上でやっていることなのか。
いずれにしても、人が好意で与えた食べ物も食べず、片付ける
ことすらできないほど常識がなくなり、物乞いをすることになんの
抵抗がない(ように見える)くらい自尊心を失ったこの人が本当に
不幸に思える。
本物のホームレスもたくさんいるけれど、キャリア・ホームレスも
それはそれはたくさんいて、悪びれずにサインを掲げて立っている
のを見ると、プライドなんてないのかなぁ、と思うけれども、
それは恵まれている普通の人の思考であって、彼らには、もう
そんな観念はなく、このカネで次のFixを・・・なんてことで頭は
一杯なんだろう。これもアメリカの現実なんだよな。