BLです。


ご注意ください。









┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈にのあい学パロ








いつだったか、男子校に通ってる時だけの魔妖みたいなもんだと誰かが言っていたのを思い出した。

女子が居ないから。だから代わりに同性でも可愛い子とならノリで疑似恋愛を経験する。でも卒業と同時に一気に目が覚めるもんなんだ…と。
 
あー、確か部活の先輩だったT君だ。
そんな事言って色んな相手を取っかえ引っ変えで付き合って……卒業した後は確かに普通に彼女を作っていた。 


じゃあ、俺たちの関係もそうなのかな?


違う。そんな軽い気持ちで始めたものじゃない。
そこは確かで自信もあった。
先輩の言ってた付き合うは所詮本物じゃなかったんだ。

だからもしこの学校が共学校だったとしても
きっと、俺は潤を好きになる。


きっと……いや、絶対に。







日曜日、馴染みのある場所に足を運んだ。


すぐに会わなきゃいけないと思った相手との予定がなかなか合わず、あれから数日経ってしまっていた。


目的の人物は良く通った公園にある小高い丘の上に立つ木の下で見つけた。
そこは彼等の定位置と言っても過言ではなかった場所だ。

遠くからでも見えた彼の横顔を見た瞬間、俺はちょっとだけ怯んでしまった。

それでも1歩ずつ、芝生を踏みしめて近付いていく。


視界に入ってきた俺を見つけた彼は察したのだろう、困った顔で笑っていた。



「よっ」 
って、どんな声のかけ方だと自分に突っ込む。


「クフフ。なにー?心配して来てくれた?」

やはり全てお見通しだったようだ。


「まぁハッキリ言うと、そうだね」


「そっか……フフッ。ありがとう、しょうちゃん
  ……でもね、俺、大丈夫だよ。結構平気」


「雅紀……」


やはり潤の言う通り、雅紀は何も無かった素振りで
大丈夫だと言う。大丈夫なわけなんてないのに…
その様子を見た俺の方がグッと出てくるモノをやっと堪える程、無理をしているようにしか見えなかった。



「……翔ちゃん、あいつ……待たないでって」


「うん…」


「でも、それってさ…待ってて欲しいんだよ」


「ん…?ちょっと難しい話だな?」


ニノの気持ちは複雑で俺には難しい。
それが分かるのは幼馴染でずっと隣に居た雅紀だからこそ分かる事だ。


「そう?あいつね、昔っから自分の本当の気持ちが言えない時程、反対の言葉を言うんだ」


「うーん…なんか、ニノらしいかもなぁ」


「でしょ?……自分の気持ちが迷惑になるんじゃって思えば余計に相手を優先すんだよね…特に俺に対しては強く出るから余計厄介っつーか…」


「そっか。まぁ、あいつはおまえを嫌いになって居なくなったわけじゃないって明らかだもんな」


「…ほんっと…面倒な奴だよ………バカカズ」


「だなぁ……でも、そんな面倒なとこも引っ括めて好きなんだろ?」


「っ!!………」
 

お互いがお互いをこんなに想いあってるのに
どうして離れなきゃいけないんだろうか?

自分達の事も含め、何度も考えたことが脳裏をよぎった。



「ぅん……っ……………ダイスキダヨ」



抑えていた気持ちが溢れ出るように
瞳から零れ出した大粒の涙…

やっと、少しだけ泣いてくれた。

それを見守るしか俺には出来ないけど…
それでも我慢されるよりも素直に出してくれる方が安心した。



「しょうちゃん…俺さぁ、情けなくて……」


「うん?」


「こんなに大事な事全部ひとりで決めちゃって…
いつまでも頼られないのが、結構…うん……
ショック、でさ……でもそれは俺が頼りないせいで
だからいつもあいつ1人で決めちゃうんだよね」


もう泣くまいと口をギュッと強く結び、涙を堪える横顔は見ていて胸が苦しくなった。
悔しくて情けない自分を叱責するように握った拳は震えていて…
それを見て思わずその手を解くように握っていた。


何も言わずに消えるなんて
やっぱりニノのした事は間違ってると思った。
でも、そんなのあいつ自身が1番分かってるんだろう

それでもそうしてしまったのは……


「そんな事ねぇよ、十分おまえを頼ってたろ?
ニノはさ、怖がりなんだよ…だから好きな相手を傷付けるのは人一倍怖ぇはずで…でもそれ以上に守りたい何かがあったんじゃねぇかな…きっと」


あいつの気持ちなんて俺には分からない。
でも自分の気持ちと照らし合わせて答えを探す。

俺も、潤が傷ついてしまうのが1番怖いから…

だから傷がもっと深くなる前にお互いから離れた方が良いと思った。


きっと、ニノも……


「うん…怖がりで…なのに変なとこ男らしくて無理して……俺、あいつに全部背負わせたくないのに………だからもっと強くならなきゃいけないって…思ったんだけど………」


「……雅紀?」


「しょうちゃん、俺…ちょっと……今は、しんどいや……」




"どうしたらいいか、分からないんだ…"




消えそうな声で呟いた雅紀に
捜し出して話しを聞いてやれとも
ましてや帰って来るのを待っててやれなんて…

簡単に言えるわけねぇじゃん

居なくなったあいつを探すったって
手掛かりも何も無いのに途方もないことだし
待つといっても、どれくらい?

少しだけ、ほんの少しだけ…

おまえらの気持ちが先輩の言っていた魔妖なら良かったのに…なんて
そんな残酷な事まで過ぎってしまった。