BLです。
ご注意ください。









┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈if、もしもあの時…
















「……はぁ」




………帰りたくねぇ



ガックリ分かりやすく項垂れたって、俺の意思とは反対にマネの運転する車は家路に向かっていた。


いつも通りに仕事は滞る事なく終われたが…
いつもより精神的に疲れた。

今の自分のままで仕事自体には支障は無い。
でもやっぱり違和感だらけの空間だった。

とにかく現状を把握する為に今日はずっと
周りの人達から出る発言や情報を聞き集めた。

その結果、訳の分からない現状は
あまり変わらず…いや、分かれば分かる程に
頭がおっつかないというか……


結論、
ココは俺が今まで生きてきた世界では無い?


なんて非現実的な事を考えてみる。






「今日はこのまま自宅までの送迎で良かったですか?」


「……俺んち、知ってんの?」


「ハハッ なんすか?その冗談(笑)」


「冗談ならいいのにね」


「?…ニノさん今日ちょっとおかしいですよね」


「わかるの?」


「分かりますよそりゃ。あんなね、いつもより殺気立って周り気にして……あ、旦那さんと喧嘩でも?」


ほら、キタ。


今日ずっと感じていた違和感…というか疑問。


なんで俺に旦那さんが居る前提?
てか、なんでみんなそんなに当たり前みたいに旦那さんとか言ってんの?

しかもその旦那さんはあいつを指していて…

あいつ、旦那さんって苗字だったっけ?

いや、それより何よりこの国はいつ同性が結婚出来る事になったんだっけ?


「ハァ…」


疑問だらけの情報が頭の中をひしめいて、頭が痛くなってきた。


「あーもぅ やっぱり喧嘩なんですか?早く帰って仲直りして下さいよ〜 2人は理想の夫夫で、同性結婚の象徴みたいなもんなんですからね。何かあったら色々大変ですわ」


「…色々?」


「だってみんなにあんな祝福されて結婚したのに
それこそ別れたなんてなったらショックで後追いまで出てくるんじゃないすか?(笑)」


「後追いって…アホか」


「それくらいの勢いで支持されてるって事ですよ」


「……あそ」


好きに泳がせていたら次から次へと出てくる真実に
もう何も言えなかった。


やっぱり夢だ。
夢でしかない。早く目を覚ませ!
こんな意味のわからない世界から…早く…

早く、目を覚まさなきゃダメだ


こんな、都合の良い事ばっかりな世界
心臓がいくつあっても足りないよ……















「あ、しょうちゃん?うん、そう…やっと意識が戻ってきて……うん、わかった………ありがとね。じゃあ、また進展あったら連絡する……うん…」



電話の向こうから聴こえてくる楽しそうな反応に
こちらも胸躍る気持ちを抑えられない。



ずっと、待ってた


ひたすら待ち続けて、やっと会えたんだ



これからだ…


これから、取り戻す……



君を。











ピーンポーン…



「ん?…あ、あぁそっか、自分ちだと思ってないか……あれ?カズのマネ?……はい」


「あ、相葉さん居て良かった〜
ニノさん寝ちゃって起きないしどうしようかと…」


「そうなの?わかった、今迎えに行くね」


「よろしくお願いします」



駐車場まで迎えに行くと、車の中で安らかとは言えない難しそうな顔をして寝ているカズがいた。

今日一日、いっぱい張り詰めた状態だったろうから
精神的に疲れちゃったよね…



「では、お疲れ様でした」


「うん、ありがとね」


「いえ、こちらこそ!
  あ、そうだ。早く仲直りしてくださいねっ」


「仲直り?…あー、そっか…クフフ
  うん、そうだね。わかった、ありがとう」


一日中変な様子のカズを見て誤解したかな?
とりあえず話を合わせといてそのまま別れた。


「よぃしょ…」


背中から伝わる体温に愛おしさが募る。

とくん、とくん…
規則正しく聴こえる生きている証。


少しだけ、ほんのちょっとだけ
目頭が熱くなった。




「カズ……」