BLです
ご注意ください
それは、まるでおとぎ話のような話だった。
言い伝えって……
実際にあった事が伝わってきた話だよな?
…当たり前の事言ったけど
伝えられていくうちに脚色されたんだろうか…
本当にそんな話があったとしても現実味がない。
でもそれは自分の中にある常識から逸脱してるだけで…この世の中何があってもおかしくないか
雅紀の目が赤くなるのがいい証拠だ。
そして、マリウスの話を最後まで黙って聞いていた雅紀の瞳に再び光が灯っていくのを見て
胸が躍るような気持ちになる自分に内心驚いていた。
俺……もしも あいつらが元に戻ったら
きっとすごく嬉しいんだ
2人が前みたいに幸せそうに笑ってくれるなら
あいつの瞳に映るのは自分じゃなくてもいいって
心はしっかり分かってるんだな……
あの話を聞いた日から数日
雅紀は何かを待つようにソワソワしていた。
ニノは相変わらず全て諦めたような顔でいるくせに
何も変わってないみたいなフリをしていた。
俺らだけが知っている
周りは誰も、知ることさえない
あいつらの切れてしまった見えない赤い糸は
再び繋がる事が出来るのだろうか…
「翔君はさ、よかったの?」
「ん…良かったも何も、だろ?」
「そりゃあ、さ…そうなんだけど
でも…道が2つあった事は言わなくて良かったの?」
そう…
あの物語には続きがあって
道は2つだった。
大切な人から離れた彼女と出会い、魅了され
そして彼女を支え続けた男と
後に2人は一緒になる未来もあった。
でも、彼女はその道を選ばなかった。
最後の最後まで
好きな人への想いを貫き続けた彼女は
ずっと、幸せだったんだろうか……
彼の元へ帰るという選択肢すら選ばずに
死ぬまで1人で想い続けた健気な人。
そして、彼女を探し彷徨い続けた彼は
どんな思いで最後を迎えたんだろう……
それに…結局、あの話に治し方が書いていたわけじゃないし、全て分かったわけでもない。
でも雅紀は光を取り戻した瞳をキラキラさせて
マリウスにありがとうと頭を下げて
俺達にもう大丈夫だと言って帰っていった。
それを見て、きっと大丈夫な気がした。
まぁ……難攻不落?
そう簡単な話ではないだろうけど…
「俺の中じゃあ、一択よ?」
「翔君がそう思ってんなら俺はもう何も言わないよ」
「さんきゅ」
はじめっから
これでいいに決まってんだよ
だってさ
どう考えても運命的じゃないか
あいつらは、ずっと一緒に
2人でひとつの気持ちを大切にして欲しい
これが1番のハッピーエンド
そして、俺の望みでもあるから…
「なぁ、飲みに行こっか?」
「お、いいねぇ…潤の奢り?」
「あぁ、いいよ。失恋記念だ」
「ちょw!やめろよっ(笑)
あ…じゃあ誕生日祝いにしよ」
「だね(笑)…まぁ、本人は居ないけど、ニノに乾杯しに行こっか?リーダーにも連絡しようよ」
「いいねぇ」
辛い思いを沢山したんだから
その分を取り戻すくらい幸せにしてやれよ?
それでも少しだけ切なくなるおセンチな俺が顔を出して、鼻の奥がツンとなってきた。
誤魔化すように見上げた夜空には
まーるい満月が綺麗に輝いていた
「え……何しにきたの?」
「クフフ、そんな顔しないで入れてよ」
「あのさっ…」
「おねがい!
………友達として、入れて?」
「……どうぞ」
「ありがとう!お邪魔しまーす!」
続