BLです

ご注意ください









朝、
美味しそうな匂いに目が覚めた。



「カズ、起きた?朝ごはん食べよ」



あれ…まーくんだ…
俺、昨日まーくんちに泊まったんだっけ?



まだ寝惚けている頭で違和感を覚える。

キッチンに立っていた家の主は
エプロン姿で下はトレーニング着、
朝早く起きて走りに行ったのが分かった。

見慣れていた朝の光景…
何度となく繰り返して来た日常だ。


「ん…おはょ」
 
「おはよぉ」


用意された朝ごはんを目の前にして
お腹が鳴った。
「クフフ…朝から元気なお腹だね」って柔らかく笑われる。


//////…しょうがないだろ?
おまえのご飯が食べられるんだもん
しかも久々だしさ……

……あれ? 久々?


なんで、久々になったんだっけ?



ずっと食べてなかったのは……



なんで?



「……カズ?どうしたの?
 早く食べなきゃ冷めちゃうよ」



「………相葉、さん」


「ん?どしたの?……まーくんでしょ」


「違う……違うよ…
 俺は…俺たちは……もぅ…」



夢でも見てるんじゃって思った。
けど違う、これはちゃんと現実だ。




それなのに、また俺達は……










「そうだね。お別れしちゃったよね…
でも昨日の夜はまーくんていっぱい呼んでくれたでしょ?」


「……なん、で?」


昨日の夜
また、あの目に……

治ったと言ってたのは…ウソ?


「ごめん…強引にして」


「治ったんじゃなかったのかよ…」


「…治ってた」


「じゃあっ!……どうして、また…」


「……わかんない」


また、再発したってこと?
じゃあもう…ずっと、そのままなのか?


「そんなっ……でもっ、昨日!おまえが
シンメの頃の俺達に戻りたいって言ってたのはっ…」


その言葉にまーくんの顔は悲しそうに歪み
それでもなんとか笑ってみせた。


顔で笑って心で泣いて…

そんな笑顔を見せられたら
無理矢理された事を責める気すら起こらない。


でもそれじゃあ…あの言葉は、
ココに連れてくる為とか、俺を油断させる為だった?


そう思うと、おまえに裏切られたような気になり
胸が抉られるように痛んで……



あの別れを告げられた夜

もう二度と俺に手を伸ばす事は無いという決意だって感じたのに…

何が、おまえを変えさせた?

俺を守るために別れるって言ってたくせに…とか
やっぱり湧いてしまう…責める気持ち。



「うん……こんな身体じゃない頃の自分に戻って、またおまえを好きになって…それでまた、一緒に居たいと思ってたのはホント」



…そう、いうこと?

おまえは…俺を諦めた後もずっと
俺との未来を夢見てくれてた?


なのに、俺は…

おまえと一緒に生きるのを
諦めようと……



「ごめん、カズ…泣かないでょ」


「だってっ……おまえにっ…」



罪悪感、それに後悔からだろうか……

次から次へ溢れてくる涙は
拭われて、そして大きな身体に抱き締められた。


温かい……
まーくんの匂いに包まれて少しだけ落ち着く。
ずっと、此処は変わらない。


でも……



「俺ね…カズが隣に居なくなって
もぅ、なんもないの……空っぽで、苦しいょ…」



身体の奥に響いてくるのは 
悲痛な、哀しい音


おまえの哀しみ全てが俺の身体に流れ込んできて
胸がギュって締まるように傷んだ。




「今、しょうちゃんと付き合ってたとしても
  俺……ずっと、お前の事が好きだよ……」




!!!!


その言葉に驚き過ぎて
逃げるみたいに距離をとってしまう。


合わさる視線の先には
紅い目をした男が、綺麗な微笑を浮かべていた。




「なん、でっ……」